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練馬区シングルマザー殺害事件公判傍聴記・2024年2月20日(被告人:高橋剣)

2024年2月20日

東京地裁刑事10部ABD係

715号法廷

事件番号:令和4年合(わ)第154号

罪名:殺人

被告人:高橋剣

裁判長:浅香竜太

裁判官:世森ユキコ

裁判官:友近仁洸

書記官:向井聖樹

 

9時20分から、法廷前に二人並んでいた。9時50分には、三十数人が並ぶ。傍聴席は満席になる。

検察官は、髪の後退した中年男性の前田佳行と、髪を後ろで束ねた若い女性の水谷恵千。検察官の後ろに、被害者参加代理人の弁護士が座っている。

傍聴人は10時に入廷が許されたが、被告人はその時すでに入廷して被告席に座っていた。髪を短く刈って、痩せた色白の、眼鏡をかけた中年男性である。背は高めであり、黒いスーツに身を包み、青いネクタイをしている。顔は白いマスクが殆ど覆っている。膝に手を置いて座っている。

弁護人は、丸顔で小柄、太い眉の主任弁護人。もう一人は、髪を後ろで束ねた30代ぐらいの地味な女性の、前田弁護人。

裁判長は、白髪交じりの髪を七三分けにした、紳士的な印象の初老の男性。裁判官は、眼鏡をかけたショートカットの中年女性と、髪の短い青年。

10時より、高橋剣被告人の第七回公判は開始された。

 

 

裁判長『最初に、昨日お願いしていた証拠を。ありがとう。立証趣旨は』

検察官『Aさんの首に巻かれていたビニール紐関係』

その趣旨で、採用する。

甲93号証、職権4番。統合捜査報告書にAさんのイラストがあるが、それを補足している。13本で一束にまとめられた紐、首に回り、薬缶に結束されている。

そして、遺族の意見陳述がまず行われる。書面によるものであり、被害者参加代理人が代読する。

この時、傍聴人が入廷し、裁判長が「その辺に空きがあります」と案内していた。こうした心配りが、浅香裁判長の特徴である。

 

<Aの父の意見陳述>

娘はちょっとお転婆で、動物が大好きで、とてもやさしい子でした。犬をどうしても飼いたい、と真剣に言っていた。学校では、音楽の指揮をしたり、責任感必要なことを、一生懸命、こなしていました。

調書につけたそれらの写真、裁判官、裁判員は見られないとのことです。誕生ケーキを前にしている写真、幼い孫に話しかけている写真。孫は、優しい娘の笑顔を見ることができなくなった。飼っていた犬の話を聞くこともできない。孫は頑張っていた水泳、オリンピックに行くと言っていたが、やめてしまった。孫の話をすると、また高橋は泣くのでしょうか。娘はもう泣くこともできない。

私の事怖かったと言ったが、私まで言い訳に使われるとは。高橋と接していると、脱力する。虚しくなる。娘は、そうした高橋に、心を許してしまったのでしょう。自殺すると言っている人間に、大事な我が子を託すはずがない。孫や私たちは、泣くことにも耐え、夜明けを待っています。いつになったら終わりにできるのでしょうか。

 

<Aの母の意見陳述>

娘は昭和59年、3332gで生まれました。小さい頃から、片づけ、整理整頓を自分でやってくれた。普段から勉強しており、成績良かった。英語の弁論大会に出て、英語が得意。国立大学に進学しました。運動も得意。

中学の頃始めたテニス、高校まで続けた。平成27年、孫を出産し、幸せそうだった。平成27年に離婚し、一人で仕事と育児を両立させた。孫が保育園で褒められた、と知らせてきた。孫の名前呼び、四六時中、一緒に過ごす。何よりも孫のことを第一に考えていた。娘、孫、私と夫は、いろんな所に出かけた。おいしい食べ物屋さんへ行き、いつも一緒に笑っていた。誰に恨まれることもなく、懸命に生きてきた。どうしたらこんなことにならずに済んだか、考える。

正直に説明してほしかったが、娘に頼まれて殺した、と言っている。ありえない。よい父になれる人求めていた。娘は、自分の子の近くで、死を選んだことになる。一生の傷をつけること、選ばない。Aさんを責められないので、と喧嘩の原因が娘にあるように言う。夫が怖かったと言っている。既婚者のいうのを隠していたことが、原因。会わなくても、メールだけで浮気だと、高橋は責めていた。

娘はどれほど苦しかったか、想像できません。事件当時、孫は8歳でした。事件直後、私のことを探し、ことあるごとについてきた。いつもママのそばにいたいから、と、リビングのそばの出窓を指した。胸締め付けられる思いだった。娘の写真に、「あ、ママ」と声をかけ、「ママ、これ食べて」と、娘の写真の前にお菓子を置く。最近はストレスに耐え切れず、カウンセリングに通う。「お母さん生き返らないかな、やっぱり生き返らないよね」と言っていた。2022年3月11日に戻りたいと言っていた。高橋と娘の生活、幸せだったのだろう。嘘とでたらめで娘と孫をだました高橋は、許せない。

娘本人が一番苦しい。あんなにも心清らかな子を。

 

被告人は、下を向いて、意見陳述を聞いていた。10時15分より論告が始まる。すると、被告人は前を向く。論告要旨が、裁判員と裁判官、弁護人に配られる。前田検察官は、時間が押しているのか、やや早口で論告を行った。かなり聞き取りにくかった。

 

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