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練馬区シングルマザー殺害事件公判傍聴記・2024年2月19日(被告人:高橋剣)

2024年2月19日

東京地裁第10刑事部ABD係

715号法廷

事件番号:令和4年合(わ)第154号

罪名:殺人

被告人:高橋剣

裁判長:浅香竜太

裁判官:世森ユキコ

裁判官:友近仁洸

書記官:向田聖樹

 

この事件は、既婚者の会社員である高橋剣被告人が、独身と偽り交際していたシングルマザーの被害者を妊娠させた。そして、2022年3月、邪魔になった被害者を、首つり自殺に見せかけて殺害したとされる。被告人側は被害者の依頼による嘱託殺人を主張していた。

傍聴人は多く来ていたが、法廷にはところどころ空席があった。傍聴席は、2月16日には8席ほど座れないようにされていたが、今日はそのような措置はとられていなかった。

主任弁護人は、丸顔で小柄、眉が太めの中年男性。もう一人の弁護人は、髪を束ねた30代ぐらいの女性。

被告人は、髪を短く刈った、痩せた、背の高めの中年男性。写真よりはずいぶん痩せていたが、地味な印象を与える。黒縁眼鏡と白いマスクをつけている。青いネクタイの、黒いスーツ姿。革靴のスリッパをはいている。前を向いて入廷した。

検察官は、中年男性の前田佳行検察官と、髪を後ろで束ねた若い女性である水谷恵千検察官。その後ろに座る被害者参加代理人は、眼鏡をかけた浅黒い、痩せた中年男性。机の上には、青い分厚いファイルが12並べられている。

裁判長は、白髪交じりの髪を七三分けにした、紳士的な印象の初老の男性。裁判官は眼鏡をかけたショートカットの中年女性と、髪の短い青年。

裁判員は、眼鏡をかけた中年男性、がっしりとした体格の太った青年、痩せた若い女性、眼鏡をかけたスーツ姿の中年男性、口ひげを生やしたラフな格好の中年男性、茶髪の痩せた男性。

高橋剣被告人の公判は、10時より開廷した。

 

裁判長『高橋さん、座って』

被告人は、証言台の椅子に座る。

裁判長『今日は、検察官10分、弁護人がさらに話を聞き、裁判所からも聞きます』

中年男性の、前田佳行検察官が、被告人質問に立つ。

被告人は、小さな声で質問に答えていたが、時折、努めて声を大きくしていた。

 

<前田検察官の被告人質問>

検察官『検察官の前田から、先週に続き聞いていきます』

被告人『はい』

検察官『令和4年3月11日』

被告人『はい』

検察官『聞きます。池袋のホテルで仕事していた』

被告人『はい』

検察官『自殺の事考える』

被告人『はい』

検察官『具体的には、自分が死ぬこと』

被告人『そうです』

検察官『その時点で奥さんに、遺書や身辺整理はしてないですね』

被告人『はい』

検察官『三月の仕事』

被告人『はい』

検察官『翌週の仕事の人とやりとりしたことあった』

被告人『はい』

検察官『どういうことを』

被告人『確か、えーと、待ち合わせの時間とか決めてたかもしれないです』

検察官『3月11日午後2時前ぐらいの時点で、相手の会社の方に、「3月14日は川崎駅に9時でいいですか」とメールしている』

被告人『はい』

検察官『特に翌週の予定とか、自殺、外に出していない。仕事キャンセルとか』

被告人『そうですね、あの、えっと・・・、Aさんが許してくれる可能性もあったので、えっと、死ぬことだけ考えていたわけではないです』

検察官『3月11日、ネットカフェに行く』

被告人『はい』

検察官『そこでは、ビニールひもをぐるぐる巻きにしたものも用意しましたね』

被告人『はい』

検察官『それは何のためですか』

被告人『えっと、首を吊るためです』

検察官『貴方の話だと、自分が死ぬという話ですけど、条件付きで死ぬ』

被告人『はい』

検察官『ただ、紐だけ先に用意したんですか』

被告人『あの、私そのホテルで、あの、ま、何とか許してもらえる方法がないかなとか、いろいろ考えていたんですけど、そういう小細工なしにもう、喋ってダメだったらもう死んでしまおうっていう風に思ったら、その、自殺したいという気持ちを後押しするために、首つり用のロープを作りたくなりました』

検察官『貴方はでも、Aさんの家で死ぬ気ない』

被告人『そうです』

検察官『どっか行って死ぬ』

被告人『はい』

検察官『Aさんの家でどうなるか解らないのに、先に紐用意したのは』

被告人『先ほど言ったように、あの、死にたいっていう気持ちを、あの、後押しするためであり、そういう覚悟もって行った方が、あの、ちゃんとAさんと話せるかなと思ったからです』

検察官『貴方としては、貴方かAさん、誰かが死ぬことを望んでいた?』

被告人『ちょっと意味が解らないです』

検察官『まあその、条件付きで死ぬという話でしたね』

被告人『はい』

検察官『それを積極的に望んでないですね』

被告人『もちろん、Aさんが許してくれれば、それが一番良かったです』

検察官『Aさんの携帯のパスワードを変更してますね』

被告人『はい』

検察官『パスワード知らないと変更できない。パスワードはいつ知ったんですか』

被告人『3月6日です』

検察官『どうやって知ったんですか』

被告人『えーと、Bさんの水泳記録会に行く電車の中で、盗み見しました』

検察官『なぜ』

被告人『えーと、その週に、えー、ま、他の男性と会うと聞いて大喧嘩したので、疑ったのきっかけです』

検察官『どこかで見るつもりだったんですか』

被告人『そうです』

検察官『3月14日のAさん方でのやり取りは』

被告人『はい』

検察官『貴方の話だと、最後の場面、Aさん貴方に背を向けて、殺して、といった場面ある』

被告人『はい、椅子はちょっと自信ないんですけど』

検察官『どこ座っていたか』

被告人『思い出せないです・・・多分椅子だとは思うんですけど、自信がないです』

検察官『椅子、とにかく、背中にいた』

被告人『そうです、あの、Aさんは脱衣所で、私は廊下です』

検察官『Aさん、その時、お腹の子、気にかけては』

被告人『なかったです』

検察官『なかった』

被告人『はい』

検察官『貴方もしてない』

被告人『してないです』

検察官『Aさんの椅子か、その背に、貴方はいる』

被告人『はい』

検察官『貴方の体勢は』

被告人『私は立っていました』

検察官『後ろに立ってる』

被告人『はい』

検察官『それから、その、Aさんの首に巻かれたひも引っ張る』

被告人『そうです、最後に』

検察官『Aさんの首の紐、まいたのは』

被告人『えっと、Aさんが、あの、首に巻きました』

検察官『Aさんが自分で首に巻いた』

被告人『はい』

検察官『どうやって』

被告人『こうやって・・・(首にひもを巻くゼスチャー)』

検察官『薬缶がついているままですか』

被告人『はい』

検察官『巻く』

被告人『そうです』

裁判長『自分の手で首に巻く』

被告人『はい』

検察官『貴方は、じゃあ、続けると、首に巻かれた紐を、後ろから引っ張る』

被告人『はい』

検察官『後ろから引っ張るから、上に持ち上げる形ですか?』

被告人『上から持ち上げる感じ・・・』

検察官『あの、ちょっとすみません、表現しずらいけど、Aさんは椅子か床に座り、貴方後ろに立っていたんでしょ』

被告人『はい』

検察官『紐引っ張ると、上に持ち上げる形になるのでは』

被告人『ちょっとそこも記憶があいまいなんですけど、やっぱりあの、その時は、同じ高さになった可能性がありますね。(聞き取れず)』

検察官『貴方立ってる体勢から、体勢低くして』

被告人『だったかもしれないです』

検察官『どっちに引っ張る』

被告人『どっちの方向・・・、左右じゃなくて』

検察官『真後ろか、上の方か、下の方か』

被告人『そのまま・・・』

検察官『真横にひっぱる』

被告人『真横です』

検察官『最初、軽く絞めたという話』

被告人『はい』

検察官『どういうことですか』

被告人『その、殺してって言われたんですけど、その、首にロープが巻かれてる時点で、怖かったので、あの、いきなり強く引っ張れなかったです、怖くて』

検察官『最初軽く首を絞めた』

被告人『そうですね』

検察官『それで』

被告人『で、Aさんは抵抗も何もしないで、もう一度、殺してって言われたので、引っ張りました』

検察官『強く引っ張った』

被告人『はい』

検察官『Aさん亡くなる』

被告人『はい』

検察官『事件後、令和4年3月の時点で、警察署呼ばれる』

被告人『はい』

検察官『その時、自殺Aさんしたと話をしていた』

被告人『はい』

検察官『嘘を言った』

被告人『はい』

検察官『令和4年7月には、逮捕されますね』

被告人『はい』

検察官『逮捕後、警察に話は』

被告人『えっと、Aさんに、Aさんを殺したのは私ってことを言いました』

検察官『首絞めたの、令和4年にした』

被告人『はい』

検察官『経緯はどんな話したか覚えてます?』

女性弁護人『もう10分を過ぎていて、このままではスケジュールままならない。このまま続けるのは、あまりに不公平です』

裁判長『後どのくらい』

検察官『今重要です』

被告人『ちょっとその時は混乱をしてたので、どんな感じに話したか、ちょっと覚えてないです』

検察官『貴方が自分で書いた令和4年7月7日の上申書ですと、二人で死ぬこと選んだと、Aさんがロープを首に巻いて脱衣所に入った。物音し、シーンとなった時、脱衣所のドア開けたら、Aさんが倒れていた。その時のAさんの顔は変色していて、口から泡を吹いていた。Aさんの上半身を持ち上げ、ロープを上に引っ張りました、と。記憶は』

主任弁護人『請求していない!開示はされてますけど!それを根拠に質問するのは、少なくとも不相当です!』

裁判長『構わないと思いますが、簡潔に聞いてください』

検察官『記憶はないですか』

被告人『ちょっとその時は、あの、逮捕されたってことで動揺もしてたので、正直、なんかこう、なんか言わないといけないなと思って焦って言った所もあって、正直ちょっと覚えてないです』

検察官『同じ日、上申書、もう一通作っている。その内容も覚えていないですか』

被告人『覚えてないです』

検察官『簡潔に中身だけ言うと「はじめは、Aさんはロープに薬缶を括り付けて、脱衣所のドアに薬缶をひっかけて首を吊ろうとしましたがうまくできず、自分で首に二重にロープを巻いた状態で、私に背を向けて正座した状態で、絞めてと言ってきました。Aさんは泣いていましたが、私はAさんを救えず、ロープを左右に引っ張りました。力いっぱい引っ張りました。怖くなったため脱衣所のドアを閉めました。その時、Aさんは、脱衣所の奥を見る状態で右の壁にもたれかかっていました。その後、どたばた音と椅子のような音、シーンとなる状態が、しばらく聞こえました」とあります。どうか』

被告人『・・・話したかもしれませんけど、ちょっと本当、動揺してたので、それが正しいかどうかも、とりあえず何か言わなきゃいけないなと思って、しゃべったので、あの・・・』

検察官『いずれにせよね』

被告人『はい』

検察官『最初に、軽く首を絞めた話してないね』

被告人『・・・』

裁判長『覚えてない』

被告人『覚えてないです』

検察官『していない』

女性弁護人『覚えてないと』

検察官『終わります』

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