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12. 仕事を覚えてもらうために大切なこと

■「教える=説明する」ではなく「一人で仕事が出来るようになる」ことが目的

私は、「出来ないこと」を「出来るようになってもらう」ことを生業にしています。研修も、店舗改善指導もココは外せません。
でも、会社の方たちを見ていると、「教える=説明する」と思っている人が非常に多いのです。説明してもその人が仕事が出来るようになるわけではありません。説明がわかりやすければまだ良いとして、わかりにくい説明をしているのに、相手が出来ないことにイライラしているなんて残念!
相手を責めるんじゃなく、自分の指導の在り方をなんとかしろ!とツッコミを入れたくなります。早朝アルバイトの現場もそんな状態でした。

アルバイトを通して、こうした方がいいなと思ったことをまとめてみました。

(1)習得計画を立てて、習得度を把握する

研修などで、管理職の方がよく「ちゃんと説明したのにやってくれない」とおっしゃっているのを耳にします。でも、それは教えているのではなく、単なる説明に過ぎません。「教えること」と「説明すること」が一緒だと思っているうちは、仕事をきちんと教えることは出来ません。「教えることが出来た」というのは、「教えたことが、いちいち質問しなくても一人で正確に出来るようになる」ことを意味しています。

そのためには、まず、その人の出来具合をチェック出来るように、仕事を覚えてもらうための計画(=スケジュール)を立てることが大切だと思いました。私はこのアルバイトを始めるにあたり、自分なりに習得計画を立てました。しかし、全く仕事がはじめての方や経験が浅い方は、自分で習得計画など立てられません。この計画は、教えられる人が仕事を覚えて意欲的に取り組むためにも、教える人が習得状況をチェックするためにも必要だと思いました。その計画は4段階に分かれています。

第1段階 個々の仕事のポイントを押えて覚える(仕分けのルールを覚える)
第2段階 間違えずに仕分けが正確に1人で出来るようになる
第3段階 全体のスケジュールを把握しながら効率よく作業が出来る
第4段階 自分と周りの人の作業状況を把握し、協力しながら作業を行うことが出来る(作業だけでなくコミュニケーションも含む)

仕事を発展させるために、一番大切なのは第1段階です。
仕分け作業は、全てがルール通りに行えるわけではありませんでした。判断に困ると周りの方に確認してイレギュラーなケースも含めて覚えていく必要がありました。

教える人は、教えられる人が第1段階から第2段階に移行するまで、自分の作業をしながら小まめにチェック(観察)し、確実に引き上げる責任があります。このチェックを怠って、「説明したからわかっているだろう」「わからないときは説明書を見ながらやってくれるだろう」「聞いてこないからわかっているんだろう」と思いこんでいたために、大学生アルバイトの仕分けミスが全然減らなかったのではないかと思います。第1段階から第2段階への移行は、本人の努力だけでは限界があることを認識すべきです。

もし、自分自身が作業で手いっぱいだったり、他の場所で作業をしていてチェックが難しい場合は、他のスタッフにチェックのタイミングやポイントを伝えてお願いするのも良いと思いました。

(2)声をかけられた時のリアクションに気を配る

自分自身も担当する作業をしながら人に教えていると、その人に付きっきりで手とり足とり教えることは難しいです。特に、繁忙期に人員を増やしているのなら尚更です。最初に出来るだけ具体的に丁寧に、仕事のルールやポイントを教えるための時間は取りますが、その後は質問したい時、判断に困った時に声をかけてもらい、その都度教えていくと次第に教える負担は軽くなります。ただ、声をかけられた時には、リアクションに気を配らなければいけません。

①声をかけられた時に〝忙しいのに何?”という表情や返事をする。
②「(今忙しいから)後にしてくれる?」と言う。
③「~を見ればわかるよ」と答える。

このようなリアクションをしてしまうと、何も聞けなくなりますし、次に聞く時も〝また同じようなリアクションを取られてしまうんじゃないかな?”と不安になり、伝えたいこと(質問したいこと)が上手く伝えられなくなってしまいます。質問された側も、〝忙しいのに何が聞きたいの?”とさらに苛立って、相手をますます聞きにくい状態にしてしまいます。自分自身が忙しくて余裕がない時のリアクションには、細心の注意が必要です。

もし、リアクションに気を配れないのなら、自分からタイミングを見計らって「ここまでの作業で、わからいことや確認したいことはある?」「判断に迷ったのはどんな時だった?」と声をかけた方が、大らかに接することができます。
「今のところありません」と言われたとしても、教えられる側にとっては、これほど心の支えになる言葉はありません。きっと「わからないことがあったら、この人に聞こう!」と思ってもらえるはずです。教える人が、教えられる人の疑問や不明な点を探すより、そう思っている人に直接伝えてもらった方が教えやすいのです。教える人の小まめな声かけは、教えられる人との関係を構築するきっかけになるのです。

また、「後にしてほしい」というときは、「後というのはいつなのか?」を明確に伝えます。「この作業が終わったら声をかけるよ」「この作業が終わるまで、そこで待っていてくれる?」「少し待ってもらっても大丈夫な内容?」など、具体的に伝えるようにします。自分が忙しいからと言って、聞きたいことが聞けなければ、その人の作業も止まったままになって作業全体に遅れが生じます。仕事に慣れない人は、そこまで考える余裕はありません。教える側は、自分が答えることが出来ないと、その人や全体がどうなってしまうのか?を常に考えながら仕事をする立場にあります。


(3)質問を受ける時、答える時の留意点

仕事に慣れていないときは、何をどう尋ねていいのかわかりません。言葉で上手く説明できないので、聞いている方はイライラします。その様子を見て質問している方は焦ってまたさらに上手く話せなくなります。スムーズに作業をしなければいけない中でこれでは、さらに支障が出てしまいます。

現場の作業では「現物」が必ずあります。ですから、現物を一緒に確認しながら質問を受け、答えるとコミュニケーションの手間が省ける場合が多いです。

声をかけられたら、現物のある場所に行き、一緒にそれを見ながら受け答えをする。

たとえ現物が遠くにあっても、何も見ずに説明に時間をかけるより、移動してさっと説明をした方が効率的です。教えられる側も、耳と目で確認ができますので、確実に理解することができます。

質問を受けていると、この際だから、ついでに「あれも」「「これも」説明しておこう。と考えるようになりますがケースバイケースです。人によっては、今困っていることを解消するのに精いっぱいで、他の内容を受け止める余裕がない場合があります。せっかく伝えたことも伝わっていなければ、また同じ説明をすることになってしまいます。
今、質問されていることを正確に把握し、その人が正しく行動に移せるように、わかりやすく伝えること。1つの質問には1つの答えが原則ではないかと思いました。教えられる人は、教える側のペースに合わせて、仕事を覚えてくれないのです。

ただ、「わかりました。だったら~のときは、~すればいいってことですよね?」のように質問した人が仕事を応用・発展させるような反応を示した時はチャンスです!+αの回答とともに、「がんばるね!」「頼もしいね!」など、励みになる言葉を添えると、ますますその気になれます!

教えるというのは、単に、その仕事が出来るようになるだけでなく、モチベーションを維持・向上させながら、ルールを守り、正確を心がけ、自分なりの工夫を加えて発展させていける人を育てることが目的だと思っています

教える人も一緒に現場で同じ仕事をしているのなら、つきっきりで教えたり、ミスの度にフォローしたり、指示を出さないと仕事をしなかったり、と言う人ばかりだと、自分の作業の手かせ足かせになってしまい生産性も上がりません。何のために人員を増やしたのか?となってしまいます。
内容はそれほど難しいものでなく、しっかり理解すれば誰でも出来る仕事だからこそ、慣れない人が1日でも早く、確実に正確に仕事が出来るようになり、戦力にしていくために、教える人が、作業内容だけでなく、コミュニケーションの取り方と教えるコツを身につけておくことが必要だと実感した1カ月でした。

そして教え方は、相手が学生であろうが年配であろうが、基本は同じだということも、再確認できました

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