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23.ちゃんと見てくれてるよ!

1週間に2日の講義。
たった90分の講義のために、その3倍以上の準備を要しました。1日は15:00~16:30で、帰宅と同時に食事の支度。もう1日は9:20~11:00で、7時過ぎには出かけないと間に合いません。どちらも、通勤ラッシュに巻き込まれ、慣れるのに苦労しましたが、2日だけでも固定の仕事があり、固定の収入が入ってくることはやはり嬉しかったです。

“今日は、ちゃんと聴いてくれるのかなぁ?”
最初のうちは、そんな憂鬱な気持ちでいっぱいだったけれど、あのことがきっかけになって、彼女たちに会うのが楽しみになってきました。

相変わらず おしゃべりはうるさいし、全然勉強してくれないけど、廊下やロビーで会って声をかけると、「おはよ~~」「さよなら!」と、笑顔とあいさつが返ってくるようになりました。
みんな、素直で明るくて、いい子たちばかりなのです。

仕事を始めて2ヶ月ほどたった頃、帰りの電車の中で、一人の学生と一緒になりました。Oさんという学生で、AYAちゃんの友達です。いつも彼女たちと一緒に座っていますが、私の講義を一生懸命聴いてくれる学生さんでした。

わたし「おつかれさま。Oさんだったよね」

Oさん 「あ・・・。名前、覚えてくださってたんですか?ありがとうございます」

わたし「下の名前、私と同じでしょ?それですぐ覚えたんですよ。講義、わかりにくくないかなぁ~?実は、専門学校で初めて教えるもんだから、勝手がわからなくて・・・。要領悪いし、なんか,行き当たりばったりみたいな感じになっちゃって・・」

少しずつ、彼女たちとの心の距離が近づいてきてるんじゃないかなとは思い始めていましたが、講義の中で、騒ぐか、なんとなく聞いているだけの彼女たちを見ていると、講義をやめて帰りたい気持ちになることもありました。だから、聞きにくいことでもありましたが、思い切って彼女に聞いてみたのです。

Oさん「そんなことないですよ。いつもプリントの添削とか、ありがとうございます。ちゃんと、一人一人に目を向けてもらってるのがわかります。気軽に話しかけてもらって、嬉しいです。あやたちが、賑やかにしてると思うんですけど、みんな先生のこと、慕ってると思うので・・・私からこんなこと言うのも変なんですが、これからもよろしくお願いします」

一足先に電車を下りて歩き始めたとき、胸が熱くなって涙が溢れてきました。彼女の言葉が、どれだけ嬉しかったことか_。どれだけ励みになったことか_。
たとえ伝わらなくても、私自身が手を抜いたり、やる気のない態度で接しないようにしよう!私自身は、彼女たちに一生懸命接していこう!と、また、意欲が湧いてきました。

長いなぁ~~と思っていた4ヶ月は、あっという間に終わりました。後半は、就職活動や実習で、講義に出る学生も少なくなり、全員にきちんとしたあいさつができないまま、講義が打ち切りになってしまった感じでした。

始めた当初は、“4ヶ月たったら、やっぱり辞めよう”と、思うこともありました。
1日1日をこなすのが精一杯で、ろくな講義が出来なくて、反省だらけの4ヶ月でした。
しかし、こんな中途半端な形で終わってしまったら、何にもならないと思い、4月からも、引き続き契約を更新することを願い出ました。

「あやのことを、一番わかってくれたよね。ありがとう」

初対面で、私に衝撃を与えた彼女は、卒業のとき笑顔で私にそう話してくれました。やっぱり、彼女と打ち解けて話せるようになったことが、この4カ月で、一番嬉しいことでした。

短い期間でしたが、今でも25人のことは よく覚えています。それだけ意義深い4ヶ月だったのかもしれません。彼女たちから貰った暖かいメッセージ。そして、彼女たちに考えさせられた、「教えることの意味」それらを胸に、わたしはまた、次の一歩踏み出しました。

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