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鍛錬の場、楽しみな研修

先月の終わりから、シルバー人材センターの会員さん向けに、マナー研修を担当させていただいています。
受講してくださっているのは、市営駐輪場の管理に従事されている方です。
平均年齢は70代以上で全員男性。規定により年1回のマナー研修受講が義務付けられていて、1時間の研修を8回実施することになっています。

若い方に関して、よく、

コミュニケーション力が低下している
反応が乏しい
応用が利かない

などの課題が挙げられますが、70代以上の男性の方の状態は、若い方以上かなと思います。

口数が少なく、表情から反応が読み取れないのは同じでも、
これまでにいろんな経験をしてこられているので、一般論は通用しません。

駆け出しのころから、なぜか、ご年配の方の研修を数多く担当してきましたが、最初の頃は、
「そんなことは知っている」「そんなことを聞きに来たんじゃない」とよく言われました。

そして研修を行うたびに、
「こういう仕事しかできない」
「この仕事を、好きでやっているわけじゃない」という言葉がいくつも聞こえてきていました。

私は、仕事に「優れている」とか「劣っている」はないと思っています。
どのような仕事でも、必要だから存在しています。
決して楽でも、楽しいものではありません。
でも、どんな仕事であっても、仕事を通して何かに気づき、あれこれ工夫し、そして明日も頑張ろう!と思ってもらいたい!と願っています。
配送センターの早朝アルバイトをするようになって、その思いは以前より強くなりました。

シルバー人材センターさんの研修を担当し始めたのは6年前。
毎月10件以上のクレームが発生していて
「このままでは、来年の委託先から契約を切られてしまうので何とかしたい」と相談を受けたことがきっかけでした。

研修を実施する前に、クレーム報告書をすべて見せていただいて、発生の経緯、対応の現状、会員さんたちがどのような思いで仕事をされているか?などを把握し、クレーム対応研修を実施しました。そして、皆さんの取り組みのおかげで、翌月から半年間、発生したクレームは0件になり、翌年からの研修テーマは、「年に1度のマナーの再確認」に変わりました。

6年担当し続けていますが、今でも研修中は、相変わらず皆さんの表情は硬く、口数も少ないまま。
それでも、顔なじみの方が増えてきて、研修の前には

「もう1年経ったんじゃね。元気でしたか?」
「今日もよろしくお願いします」

と声をかけてくださる会員さんや、帽子を脱いでにっこり笑いながら笑顔で会釈をしてくださる方が増えました。
受講中も、うなづいたり、メモを取ったりされる様子があちこちで見られ、寡黙で無表情でも皆さん真剣に聞いてくださっています。
そして、最後のあいさつをし終わると大きな拍手をいただけるようになりました。

今年はとても嬉しかったことがありました。
ある会場で、いつも一番前で受講してくださっているカープが大好きなおじさまが、5年分のテキストをファイルに入れて持ってきてくださっていたのです。
そして、「このテキスト、字も大きくてスペースもしっかり取ってあるから読みやすいんよ。役に立ってるよ!」とコメントをくださったのです。

笑いを取るとか、ウケているとかなんてどうでもいいこと。
私自身が皆さんにとことん寄り添っているかが大事。
短い時間の、誰もが「知っているよそんなこと」という内容だからこそ、
私の本気度が問われているのです。

夢中で続けていると、受け入れてもらっている安心感を感じるようになりました。現場の改善や工夫につながる具体的な内容をお届けしたい!と意欲に燃えて担当させていただくようになりました。

私にとってこの研修は、自分の本気度を問われる鍛錬の場であり、担当させていただくことがとても楽しみな一つになっています。

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