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25.惨憺たる結果

長い休みが終わるたびに、学生たちは変わっていきます。
まず、最初の変化はゴールデンウィーク明けです。それまで静かだったクラスは、連休疲れと気の緩みで騒がしくなります。そして、クラスのあちこちにグループが出来てきます。

次は夏休み明け。前期に休みがちだった学生の中には、退学して来なくなる者が出はじめます。
一人一人の個性が際立ってきて、ちょっとした気持ちのズレから別のグループに移る者、孤立する者が出はじめます。
気の合う子とは、講義中でもお構いなしにおしゃべりをし、気の合わない子とは絶対に話そうとはしません。教室には、和やかな雰囲気と緊迫した雰囲気があって、見えない境界線が引かれているようにも見えました。

“資格をとることだけじゃなく、もっと実践的なことを伝えたい。社会に出て困らない、人と関わるために大切な技術を伝えたい。”
と思って指名したり実習を促すのですが、そういう雰囲気の中で、自分の意見を言ったり、発表してくれる学生はいませんでした。

思うように講義を進めることも、学生たちの気持ちを十分理解することも出来ないままに、秋の検定試験の時期を迎えました。
検定科目を担当している以上は、検定に合格させなければ担当者としては失格です。やむを得ず、検定試験のために、過去問題を解いてもらい、解説をするという講義に切り替えました。

そのほうが、学生たちも、静かに講義を受けてくれました。
しかし、内容を理解していたのではなく、ただ、問題を解いていただけでした。
秘書検定の3級、2級試験は、ほとんどが五者択一のマークシート問題です。理解していなくても、どれかを選んでいたらマグレでも正解します。

前回は合格ラインに達していても、次に実施した試験では不合格という学生がほとんどでした。
その都度解説をしますが、ほとんど理解していませんでした。そして、時間だけがどんどん過ぎていき、試験日を迎えました。

そして結果は、一番初歩の初歩である3級に、ほとんどが不合格。すっかり自信を失ってしまった彼女たちに、私はどう声をかけていいかわかりませんでした。彼女たちのせいではなく、私の指導の仕方に問題があったのですから…。

期待されて、意欲満々で引き受けた仕事。目指す理想や不満や疑問が大きくても、結果を出せないダメ講師。翌年、秘書検定の担当から外されたのは言うまでもありません。

悔しかった。情けなかった。
でも、少し気が楽になりました。担当を外されただけで、学校との契約は継続のままになっていました。検定試験に直接関係ない科目を担当することになって、勤務3年目を迎えました。 

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