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ホモサケル第二章第三章

第二章 ホモ・サケル

[オピニオン]呪われた人間、聖なる人間 : 東亜日報

古代ローマ法には「ホモ・サケル」という特異な人間が存在した。ラテン語で「聖なる人間」という意味だが、実は正反対だ。人々が犯罪者と判定したので彼を殺しても殺人罪で処罰されない「呪われた人間」だからだ。古代ローマの思想家をはじめ、多くの西欧学者にとって大きな謎だった。どうして呪われた人間が聖なる人間と呼ばれるのか?

ホモ・サケルは、中世の「オオカミ人間」や国際法の秩序の外に位置する海賊の姿で常に存在した。問題は近代になってこのようなホモ・サケルが大量化、一般化しているという点だ。ナチスドイツ治下のユダヤ人、日帝の生体実験の対象になった植民地の国民、先進国の不法滞在者…。そのような事例がまさに私たちの目の前で繰り広げられている。中朝の国境をさ迷う脱北者は、北朝鮮でも中国でも「生」(ゾーエー)すら保証されない「呪われた人間」だ。そして、北朝鮮の最高権力者、金正恩(キム・ジョンウン)氏の登場と相まって、北朝鮮の政治現実(ビオス)を維持、あるいは転覆させる可能性のある雷管という点で「聖なる人間」でもある。

sacerという語の本源的な意味

生権力と死の思想

生権力と死の思想

第三章 近代的なものの生政治的範例としての収容所
生の政治化
フーコーは『知の意思』の末尾で、「人間は数千年のあいだ、アリストテレスにとっての人間のままだった。つまり、生ける動物に政治的な実存の能力を加えたもの、である。近代の人間はというと、政治において、生ける存在としての自分の生が問いただされる動物なのである」。

P168:フーコーは政治的衝突の主題として性が引き受けた重要性を説明するために、次のように書いている。
「生への権利、身体、健康、幸福、欲求充足への権利、あらゆる弾圧や「疎外」の向こう側にありのままの自分やありうべき自分を見いだす「権利」、この「権利」は、古典的な法体系にとってはこのように理解不可能なものであったが、これが、新たな権力手続きに対する政治的な応答なのだ」

つまり、剥き出しの生を要求することは、ブルジョワ民主主義においては、公的なものに対する私的なものの優位、集団的義務に対する個人の自由の優位へと人びとを導くが、これが全体主義国家においてはその反対に、決定的な政治的判断基準となり、主権的決定の場そのものになるということである。

P169:実のところ、生政治が自己肯定するのと平行して、我々は次のような状況に立ち会っている。すなわち、それまでは主権の成立要件であった剥き出しの生に関する決定が、例外状態という限界を超えて移動し、徐々に拡大しているという状況である。すべての近代国家に、生に関する決定が死に関する決定になり、生政治が死の政治へと転倒しうる点をしるしづける線があるが、今日ではその線はもはや、はっきり区別された二つの地帯を分ける固定された境界という姿を呈してはいない。それはむしろ、徐々に広がっていく社会的な生の地帯の中で位置を買えていく、動きをもった線であり、そこでは主権者は法律家とだけでなく、意志、科学者、専門家、司祭とも親密に共生するようになっている。

P177:アーレントは人権と国民国家のあいだの結びつきについて展開していない。
しかしいまや、人権宣言の数々を、立法者に永遠の倫理的原則の尊重を課すことを目的とする(実のところあまり成功を収めていない)法を超える永遠の価値を無償で布告するものとして読むことをやめるときである。その反対にこれを、近代の国民国家の形成における現実の歴史的機能に即して考慮しなければならない。人権宣言は、国民国家の法的 - 政治的次元に自然的な生を記入することの原初的形象を表している。その自然的な剥き出しの生は、アンシャンレジームにおいては政治とは無関係なものであり、被造物の生として神に属するものであったし、古典世界においてはゾーエーとして政治的な生(ビオス)から少なくとも外見上ははっきりと区別されるものであったが、これがいまや国家の構造の前景に登場し、さらには国家の正当性と主権を基礎づけるものとなる。


P233:彼らが変容させられた当の剥き出しの生は、法権利によって認証され認知されるにとどまるべき政治外の自然的事実なのではない。それはむしろ、すでに見たとおりの意味で、法権利がそのつど事実へと移行し、事実がそのつど法権利へと移行する境界線、この二つの平面が互いに不分明になろうとする境界線なのだ。新たな基礎的な政治的主体である生政治的身体は、事実上の問題でも権利上の問題でもなく、事実法権利がまったく区別されないところで働く主権的な政治的決定のなされる場である。このことを忘れてしまうと、国民社会主義の人種概念の特性も理解することができなくなる。
※事実上の問題 = たとえばしかじかの生物学的身体の同定
権利上の問題 = 適用すべきしかじかの規範の同定

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