【tinderの片隅にある不倫】「夏の間だけ遊ぼうよ!」
「じゃあさ!夏の間だけ遊ぼうよ!」
やたら押しの強い彼が楽しそうに言った。
私は恋愛が上手じゃないと思っている。
好きになると苦しくて、自分から手放してしまうようなことばかりする。
男を落とすのは得意なのに、恋愛が得意じゃないって、私はきっとそういう病気なんだ。
だから、楽な新しい男と恋愛を始める。
ただ、始める際にはすごく迷う。
この子でいいのかな?
もしかしたら長く付き合えるかも?
私の苦手なこと克服できるかな?
でも期待することにも疲れているんだ。
だから「夏の間だけ」そう言われて嬉しかった。
それなら私にもできるかも!
先生にテストを特別に簡単にしてもらった気分だった。
夏の間、1泊で旅行に行ったり、かき氷を食べたり、いっぱいセックスした。
9月も終わろうかという時、ベッドの中で彼が
「夏っていつまで?」
と聞いた
「9月でしょ」
当たり前みたいに私が答える。
「10月だよ!最近は暑いし!半袖だし!」
と必死に言い張る彼に、そーかもね半袖でもいられるし。
と答えて10月までずるずるきてしまった。
最近は上着を着ないと寒くなるけど彼はいつも半袖で上着は持っていなかった。
10月も終わりそうなある日、彼が必死に言った。
「地球の反対は夏だよ、ねえ、まだ良くない?なんで?」
「ダメだよ10月で終わりだから」
「まだ、海でキスもやってないし、花火大会に行けてない!」
やることリストの叶わなかった項目を彼があげつらう。
なんで続けたらだめなんだ?
最初に決めたから?
終わりが決まっていたからか、驚くほど楽しかった。
終わりが決まっていたから、やりたいことをリストアップして、片っ端からやって行った。
普段相手の出方を伺ったりしてしまう私も、終わりが決まっているなら伺う必要がない。
あれやろ、これやろ、この日は会えるよ!っていつもの自分じゃないみたいだった。
なのに、なんで終わらなきゃいけないんだろ?
本当は夏が終わるから終わるんじゃないんだよ。
本当は迷ってたけど違うんだよ。
君の携帯にtinderを見つけちゃったからだよ。
もう私がいなくなること考えてるじゃん。
ちゃんと準備してるじゃん。
続けたとして、君はもっといい人が現れたらどうするの?いなくなるんじゃない?
私だってそうかもしれないけど。
もっといい人が現れたら誰だって乗り換えようって思ってるよね。
それで普通だと思う。
ずるいこと考えるなら、綺麗におわろ。
でもさ、素敵な相手に乗り換えているなら、どんどん相手は素敵になっていって、わらしべ長者みたいになるはすなのに、私達は欲張って、今度こそはって思いながら、次から次に乗り換えて、同じところをぐるぐるまわっている。
もう回らないでおこう、二人でここにいよう、って言ってほしいけど、自分から言う勇気はないんだ。
それに既婚の私には何の責任も負えない。
あー、今年の夏は特別に長かったな。