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漫画「言ノ葉ノ花」 *20/09/14

読書記録:
漫画「言ノ葉ノ花(上)(下)」

BL作品のなかで一番好きな小説のコミカライズが発売されました。
原作小説は2007年刊行。まさか10年以上の時を経て、シリーズの挿画を担当されたイラストレーターさんが漫画化してくださるとは思っていませんでした。


正直なところ、10年以上、この作品より刺さる作品には出会えていません。いまのところ一番読み返している小説です。

あらすじ:
三年前から突然人の心の声が聞こえ始め、以来人間不信気味の余村。ある日彼は、自分に好意を持っているらしい同僚の長谷部の心の声を聞いてしまう。罪悪感を覚えつつも、言葉で、“声”で、一途に注がれる愛情が心地よく、余村も長谷部を好ましく思うようになる。そしてついに長谷部の告白を受け入れるが、余村が心の声を聞けると知った長谷部の反応は意外なものだった……。切なさ200%!! 胸に迫るスイートラブ。


シリーズの挿画を担当されたイラストレーター三池さんでの突然の漫画化、連載開始。これは本当に嬉しい企画でした。もともと私が「言ノ葉ノ花」を手に取ったのは、三池さんの「魔法使いの恋」の表題作が大好きだったからだったので、不思議です。戻ってきたような感覚。
おかげさまで時を経たコミカライズでも全く違和感なく、「言ノ葉ノ花」の世界観が読みやすくなって、そのまま広がっていました。

現実世界で「心の声」が聞こえたら

以前、赤い糸シリーズの時にも書きましたが、現代のちょっとしたファンタジー(SF?)設定がとても好きです。この設定の魅力に私がどっぷりハマったきっかけの小説でもあります。

当時小説を愛読していた時は高校生でしたが、13年近く経ち、まさかの主人公の余村さんの年齢を越してしまいました。だからこそわかるようになった、この余村さんの絶望感。30歳手前で3年間の引きこもり、現在家電量販店の契約社員。大企業のエリート正社員時代の貯金は3年間の引きこもり生活で使い切ってしまっている。現実的に考えると非常にシビアな設定ですよね。
順風満帆で当時付き合っていた彼女にプロポーズをした3年前から、急に人の「心の声」が聞こえるようになってしまって人間不信に陥って、引きこもりになってしまったのです。
幸せの絶頂から急降下で転がり落ちていくこの物語の始まりは当時もショックでしたが、余村さんの年齢を越してしまうとさらに切ないです。私だったらもう人生諦めてしまうかもしれない、もう自殺しちゃってるかも、と思ってしまいます…。

でも、この余村さんは、逃げながらも自ら社会復帰をして仕事して、本当にえらい。社会に出てきて、長谷部と出会えたからこそ、この作品の最後の余村の独白に繋がっていきます。
辛いことがあった時にも、いつも諦めないで努力を続けようと自分の背中を押してきてくれた物語です。人に勧めたくてもなかなか、濡場の数もそれなりにあるので、勧めにくいのですが…。

高評価のドラマCD

実は「言ノ葉ノ花」は、10年以上前からドラマCD好きの腐女子に聞くと、大抵みんな知っているタイトルでもあります。
「心の声が聞こえる」という設定がドラマCD向きでもあり、原作ファンを唸らせるほどの音響監督・阿部信行さんの演出が素晴らしく、かつ、主演二人の声優さんがラジオも長年一緒にやっている大人気の二人(神谷浩史さんと小野大輔さん)だったこともあり、ドラマCD業界でもかなり名盤になっています。2008年リリースでしたが、まだ売っているんですね。Atis colection(このBLCDレーベル)、すごい…。


10年以上を経たリメイク

ひとつ、大きく変わっていたのは、メールの発達でしょうか。
当時はパカパカのガラケーで、二人はメールをしていました。今回のコミカライズではLINEにもショートメッセージにも見えるやりとりにさせていて、中間の落としどころで特に違和感がありませんでした。
ドラマCDだと、10年前のメールの着信音が効果音で入っていて、非常に時代を感じます…。違うホームで向き合いながらも、線路越しにメールで会話する二人のシーンのドラマCDの演出、とても良かったのです。

でもそれ以外、全然古い感じもせず、いまでも変わらず胸に響く名作だなと思いました。この作品こそ、いま流行りの映画化しないかな。このお話であれば、アニメ映画でも実写でも再現可能だと思うのですが。アニメ映画の場合には、CDの声優続投を熱望しますが…。(それなら興行収入もある程度見込めると思うのですが。売れっ子すぎてやってくれないか。。)


「言ノ葉」シリーズは全5巻ありますが、シリーズ2巻以降は「心の声が聞こえる」人がいるという設定だけで、この余村と長谷部の話は別に単行本が1冊出ています。


また、シリーズ2作目の「言ノ葉ノ世界」では、余村と長谷部の世界のパラレルワールドになっていて、二人によく似た人物が出てきます。
当時、雑誌で「言ノ葉ノ世界」を読んでいた私は、非常に肝が冷えたのですが……単行本化にあたって、砂原さんからあとがきで説明があり、非常に安堵した覚えがあります。気になる方はぜひ、「言ノ葉ノ世界」もおすすめしです。


続編の「言ノ葉ノ星」(もともと、小説1巻目に「花」と「星」の2作品が入っていたのです)も、今月から雑誌Dear+での漫画化連載が決定しているということで本当に楽しみです。ここからが小説「言ノ葉ノ花」の一番面白いところでもあるので…。。
この勢いで、言ノ葉シリーズでCD化してないお話も制作してほしいです。Atisレーベル、未だに大好きなので…お願いします。

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