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【本の感想】『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』
今回、紹介する本は五十嵐大さんが書いた『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』です。
あらすじ
「誰もが生きやすい世界は、いろんな境界線が混ざり合った世界だと思う」
耳の聴こえない両親から生まれた子供=「CODA」の著者が書く
感涙の実録ノンフィクション!
本の感想
コーダ。
私はこの言葉を「デフ・ヴォイス」を読んでから知った。
これはコーダ視点のエッセイ。
コーダ視点で描かれているこの本では、コーダだからこそ感じる苦しみや葛藤が読んでいて伝わってくる。
両親ともにろう者である作者の五十嵐さん。
「聴こえない」世界で育った彼にとって、手話で会話するのは普通で当たり前の世界だ。
いざ外の世界の人と交流するようになって、自分の家が当たり前ではないことを知る。
他人からの冷たい対応に私でもとまどってしまうだろう。
母親のことを好きなのに、大切に思いたいのに思えないもどかしさ。
楽しく毎日を過ごしているのにその境遇を憐れんで、周囲から理解されない。
一緒にいたいのに一緒にいるのがつらい。
そんな苦しい叫びが読んでいて、強く伝わってきた。
私の両親がもしろう者だったら・・・。
助けてあげないといけないと思い、自分で勝手に好きにいることを諦めてしまうだろう。
もしかしたら飛び出せずにいるかもしれない。
コーダ側のエッセイを読み、その立場の人ではないと分からないことが多い。
自分の周りにいないだけで、実はたくさんいるのかもしれないと思った。
この本をきっかけにコーダという存在を知ってもらえたらいいと思う。
印象に残った言葉
母を傷つけたいわけではないのに、うまく距離がとれない。胸が潰れそうになりながら、常に母と向き合ってきた。あの日々を形容するならば、まさに”格闘の毎日”だ。
ふつうではないということは、まだ狭い世界で生きる子どもにとって恥ずかしいこととイコールだ。
聴こえない母のことを、誰も知られたくない。成長するにつれてその気持ちは少しずつ膨らんでいった。けれど、彼女のことが嫌いだったわけではない。むしろ、好きだからこそ、母が傷つけられる瞬間を見たくない。まるで籠のなかに鳥を押し込めるように、母を外の世界の悪意から守りたいと思うようになっていた。
自分に偏見の眼差しを向けてきた他者を許す。それは決して容易なことではない。それなのに、母はどうしてそんなことができるのだろう。そのときのぼくはうまく理解できなかった。
褒められなくたっていいから、”ふつう”でいたい。”おかしい”とカテゴライズされたくない。ただ、みんなと一緒がいい。それだけだった。
電車のなかで、大勢の人たちが見ている前で、手話を使って話してくれて、本当にうれしかった。今日はとても楽しかったの。だから、ありがとうね。
ずっとおばあちゃんに迷惑をかけてきたから、最後に過ごせた時間は宝物だよ。でも、叶うなら、もっと側にいたかった。だって、たったひとりの”お母さん”なんだもん。
でもね・・・・・・、わたしたちから”できること”を取り上げないでほしいの。
コーダは揺れるものなんです。親を否定する気持ちと、それでも支えたいと肯定する気持ち。どっちもあっていいんですよ
幼い頃から、母はずっとぼくを肯定し続けてくれた。なにをしても褒め、応援し、大丈夫だからと背中を押してくれた。でも、それがこんなにもありがたいことだなんて知らなかった。
もしも生まれ変わることがあるのならば、また同じ両親の子どもになりたい。耳が聴こえない母と父の元に生まれ、手話を使って、ふたりとたくさんお喋りがしたい。
「聴こえる世界」と同じくらい、「聴こえない世界」も大切だから。
最後に
この本を知ったきっかけは、高校生ビブリオバトル大会。
紹介されている内容を聞き、興味を持った。
また、2024年に映画化されるという話も聞きどのように描かれるのだろうかと楽しみでもある。
この作品がどのように映像化されるのか、どのように表現されるのかが気になるところだ。
2023年の12月に「デフ・ヴォイス」がドラマ化され、おそらくコーダという存在をそこで知った人もいるかもしれない。
それを踏まえて、本作を読むか映画を見ることで、コーダの抱える想いを知ることができると思う。
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