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低ナトリウム血症治療で用いる、高張食塩水(3%)はどう使うのか?

今回は、臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、

重症低Na血症で用いる、高張食塩水(3%)はどう使うのか?

についてまとめました。

残念ながら日本の病院には治療で用いる3%生理食塩水がありません。

しかも、低Naの補正速度は気をつけないと合併症のODSを引き起こしてしまいます…!

何かと注意+暗記することの多い治療についてしっかり学びましょう。

1.ポイント

●重症の低Na血症(意識障害・けいれん)の初期治療は3%NSで急速に5mEq/L補正が推奨1)
●日本には3%NSは存在しない…自分で作り方を覚えておこう!
●血清Naの値は予測できないので、頻回に検査
●血清Naを1mEq/L上げるには3%NSを(体重)ml投与すると覚える

2. 3%NSの作り方

①10%NSと5%ブドウ糖液を3:7の比率で混合する。
・10%NS 150ml+5%ブドウ糖 350ml
②10%NaCl液と生理食塩水を混合する。
0.9%NS400ml+10%NS120ml(20ml×6A)
=3%NS520ml
※ちなみに3%NSのNaは513mEq

3. 3%NSの投与量

●Na低値の補正の際によく使う補正式(Adrogue-Madias式)はあまり参考にならない2)

●計算だけでなく、必ず頻回に検査してNa濃度の変化をフォロー
【血清Naを1mEq/L上げるのに必要な3%NS☆mlの計算】
※体内水分が体重の50%と仮定
※3%NS量は体内の水分量と比較すると微小なのでザックリ換算
1mEq/L上げるために必要な体内のNaは
0.5×体重×1mEq
3%NSを☆ml投与で上昇するNaは
513×☆/1000
合わせて計算すると
0.5×体重×1mEq=513×☆/1000
☆=500/513×体重≒体重
血清Naを1mEq/L上げるには3%NSを(体重)ml投与すると覚える

●ボーラス投与で5mEq上昇させる量を計算し、その半量を入れてNa再検するのが安全か。想定するより上がりすぎることが多い3)

4.引用文献

1)Intensive Care Med. 2014 Mar;40(3):320-31. doi: 10.1007/s00134-014-3210-2. Epub 2014 Feb 22.
Clinical practice guideline on diagnosis and treatment of hyponatraemia.
Spasovski G
2)N Engl J Med. 2000 May 25;342(21):1581-9.
Hyponatremia.
Adrogué HJ
3)Clin J Am Soc Nephrol. 2007 Nov;2(6):1110-7. Epub 2007 Oct 3.
Hypertonic saline for hyponatremia: risk of inadvertent overcorrection.
Mohmand HK
田中竜馬:Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 内分泌・消化器編
ドクターH(Homeless doctor)の覚え書き
3%高張食塩水(510mEq/l)の作り方
https://ameblo.jp/ob-nephro-er/entry-11307035810.html


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