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冬至 第六十四候 乃東生


二十四節気は、いよいよ冬至に。七十二候は、冬至の初候、六十四候「乃東生 (なつかれくさしょうず)」となりました。期間は 12月21日から25日。冬至と夏至が太陽のあるピークの一対であるように、七十二候においても、夏至の初候は「乃東枯」と、六十四候「乃東生」は相補関係になっています。

そして、今日22日は日本では冬至です。ただ、21日を冬至とする地域もあるようです。タイでもそうです。調べてみると、21日も22日も夜の長さは同じなのです。日の出は、6時52分。日没は、 17時52分。昼の長さは 11時間00分08秒です。

ともあれ、この2日間を境に、少しずつ昼の時間が伸びていきますが、寒さはこれからが本番ですし、日の出の時間は1月27日の6時59分をピークにまだ遅くなっていくので、冬籠りの感覚の時間は続きそうです。
そんな冬が本格的になる時期に、六十四候の言葉は、なぜだかそれに反するような、薬草の乃東(うつぼくさ)が芽を出し始める頃。植物の発芽です。もうしばらくは昏さ、寒さを深く感じる時が続くけれど、六十三候では鮭が産卵をしたように、生命は密かに次の明るい季節にそなえ、闇の中で生命を殖(ふゆ)らせる、みなぎらせはじめるのだよ。ということでしょうか。

このような闇から光への転換という印象が強い冬至の儀式といえば、イランやその周辺の冬至のお祭り「ヤルダー」でしょうか。
もとは善悪二元論を光と闇になぞらえたゾロアスター教の影響だそうで、悪しきものが集まる闇が極まる冬至の夜に、敢えて美しく幸せに過ごすことで、その闇を清らかで豊かな光の時間へ変えるという意味があるのだとか。夕食の後に家族や親しい人が集まり、太陽や光を象徴するザクロやスイカ(夏の果物を敢えて食べることも冬や闇への対抗であり、一年中風邪をひかずにすむのだとか)などの赤い果物や、ナッツ、ドライフルーツやお菓子を食べ、神秘主義的なハーフェズの詩を読んで楽しむのだそうです。闇を生き生きとしたものや明るいものに転じるのは、これからいよいよ寒くなる季節に新しい芽を生じる乃東のありようにも通じる気がします。

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一度、トルコでこの赤い果物やお菓子を楽しむ冬至の夜を過ごしたことがありますが、ささやかでいて優雅で暖かく華やかさもあるこの、静かで美しいヤルダーがなんとも好きになってしまいました。

チェンマイでは柚子が手に入らないこともありますが、なんとなくこの時期の仄暗さに、感覚がぼんやりとしてくるのには、闇を光に転換するという方法は、静かでいて鮮やかなメリハリがあり、目が覚めていくような心地がするので、トルコでの冬至以来、冬至はヤルダー式に過ごすことにしています。
SNSで、トルコの友人たちが、赤いザクロが蝋燭の灯りに輝いていたりする冬至の夜の写真をアップするので、離れていても親しい人たちと共に冬至の夜を楽しんでいるような気がするせいかもしれませんが。

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