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晴明 第十三候 玄鳥至

 4月4日、二十四節気は、晴れ明らかな晴明に入ったものの、チェンマイは少し遅れてやっと嵐の気配、水の気配が濃厚になってきたところ。

 そして、十三候のツバメは、タイへもインドから日本への旅の途中に通り過ぎるものの、これは暦よりももう少し早い時期に通り過ぎていきます。変わりにこの時期に南からやってくるのは、煙害で赤みがかって霞む空気の中でもエメラルドグリーンの胴体に頭のオレンジの色どりが鮮やかで可愛らしいインドハチクイや、物狂おしい鳴き声があたりにこだますものの、警戒心が強くなかなか姿が見られないオニカッコウ、そして水田をゆったりと歩くスキハシコウたちです。

 それにしてもこの頃の熱波の警報まで出る暑さ。チェンマイで暮らし始めた頃には、最高気温が36度を超えるのは稀なことでしたが今ではごく普通のこと。そして、本当に暑い午後3時ごろには賑やかな鳥たちも声をひそめ、虫たちも姿を隠してしまうようになりました。

 そんな奇妙に静かな午後、なにか重低音を響かしているような気配とともに辺りを席巻するような暴力的な熱気は、生き物たちの本来の生活サイクルを変えてしまうようであり、また空気の透明度や風の強さといった、空の力も弱めてしまうよう。

 静かな庭を歩きながらそんな不安に思いをめぐらせていると、嬉しいことに空も曇りだし、吹き始めた強い風に乗って雁皮紙のような繊細なソリザヤの種が、不思議な鳥たちのように飛んできた。。と思うと、それを皮切りに週末にかけて方々に嵐が訪れる数日が続き、風と雨に地面と空気の熱は洗い流され、四月最初の週末はまるで雨季の始めのよう、そして更に祝日の火曜日はそれまでの暑さが信じられないほどの、まるで日本の花冷えのようなお天気になってしまいました。

ソリザヤ

 そして、その曇天が明けた水曜日は、それは透明で晴れやかな美しい朝がやってきました。
 強風で枯葉がすべて吹き飛んでしまった菩提樹の大樹は、もう若葉をしげらせて、その明るいライムグリーンと青空は発光して目を染めてしまいそうなほど。なにか全てが新しくなったようです。

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 暑さの疲れを雨の静けさと仄暗さの中で癒し、そろそろ光と夏の力強さが恋しくなったのか、あたりの不思議に真新しい気配のためなのか、水曜日に友人たちとかわす挨拶は、「なんて綺麗で明るい空と光の朝なんだろうね!」でした。
 日曜日、四月四日は晴明でしたが、その名のとおり、美しい天気を連れてくるための準備が為された数日間のようでした。



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