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ラーフの引っ越し

ラーフはインドの神話に登場するアスラ族の魔神で、日本では羅睺と呼ばれて古い天文学では悪しき星となっていますが、仏教到来以前にバラモン教の影響を受けていたタイではプラ・ラーフと呼ばれ、なぜかお寺の装飾には必ず入っていますし、悪神ながら、なんと水曜日生まれの守護神でもあり、捧げ物をして祈れば厄災を払い幸運ももたらしてくれるとされています。

災いをもたらされるのはもちろん嫌ですが、結構現世利益も大事にするちゃっかり精神も持ち合わせたタイの人たちのことです。真っ黒な肌の上半身を雲からあらわし(アムリタを盗み飲んでヴィシヌ神の怒りを買い、体を真っ二つに切られて、上半身はラーフ、下半身はケートゥという神になっている)月や太陽を飲み込むラーフの像には、その体と同じように黒いものを8つ捧げると喜ばれるということで、仙草ゼリー、コーヒーやコーラ、スイカの種、チョコレートやオレオクッキー、黒く染めたお香、黒豆、黒いロウソク、烏骨鶏のスープ、 ピータンなどをお供えします。

お寺などでよく見かけるタイプのラーフ。なんだか愛嬌があります。

そして先週10月17日。

新聞やテレビでなぜか「今日はラーフが今までいた星座を離れ、次の星座へと移ります」とニュースがあちらこちらで流れるではありませんか。

日本のお盆や冬至の行事を報道するように、淡々と、そういう日なのでご利益のあるラーフ像があるお寺に沢山の人がお供えを持って集まりました。と伝えるところもあれば、爪や髪を切ったり、家の取り壊し、悪口や噂話を言ったり、借金の契約をしてはいけない。そしてお財布をお金でいっぱいにしておけば、これからの1年は悪運を避けてお金を貯めることができますよ、と、ちょっと迷信めいた事を伝えるところ、なんとラーフの遷座する日だから手術はしたくないと、急を要する手術を拒んだ患者さんに困ってしまったドクターの話を伝えながら、ラーフは存在しない天体であるし、そもそも星の運行は自然現象なので人間の運命とは関係ないのですよと啓蒙っぽい記事、などなど、どのように考えるかは別として、タイの人はそれぞれにずいぶんラーフを身近に感じているのだなあ。そういえば同じくインド出身のガネーシャも商売をやっているお家には必ずあるなあ。。などと思いつつ、それぞれのニュースを結構楽しみつつみたり読んだりしました。

私は信じてないけれどね。。と言いつつ、でも自分の星座にラーフが居た年に事故にあったり、ちょっと悩ましいことが続いてしまった。でも、どれもすんでのところで最悪は逃れられたんだけれど、お母さんが気にして行きなさいって言うから、ラーフが座に入った時にお参りをしたからかな?という人もいたりして、ラーフの遷座はもしかすると日本の厄年のような感じなのかもしれません。

ちなみに、月食(ラーフが月を食べる!)や流星(ケートゥ!)もタイではかつては縁起の悪いものとされていたそうですが、こちらは今は、山など暗い場所へ出かけてロマンティックな天文現象を楽しみましょう!という風に変わってきているようです。我が家の近所では今も月食のある日には、おばあちゃんが鍋を叩いて月を食べようとするラーフを威嚇していますが。

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