日記:忍耐力測定
パン屋に入るとガーリックとバターの匂いが充満していた。コロネのクリームみたいに、ぼくの鼻孔にその匂いが詰められる。3段ある棚の一番上、ガーリックフランスが並べられている。小ぶりなフランスパンが真ん中から開かれ、バターが十分にしみ込んだ黄色い面に、細かく刻まれた緑色のパセリが見える。
コーヒーと共に食べる甘いパンを1個買いにきたんだろ、と自分に言い聞かせるも、その自己説得も空しく、左手に持った白いトレーの上にはガーリックフランス。ガーリックフランス買ったから、甘いパンは我慢しよう、と自分を納得させようとするも、白いトレーの上のガーリックフランスの横にチョコがコーティングされたパン。
会計をすませてガーリックフランスのビニール袋を手に取ると温かい。出来立てだ。だから匂いがこんなに充満していたんだ。家に帰って食べたガーリックフランスは中にしみ込んだバターが噛むたびにじゅわーとにじみ出てきて口の中に広がった。