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2022年10月の日記~公募案件1勝1敗。京都で勝ち、小田原で敗れるの巻~

10月*日
「ねこから目線」で応募していた京都市の公募に通った。
ねこから目線は猫の殺処分を0(ゼロ)にするための会社。京都市は、猫に限ったわけではないのだが、高齢者とペットの共生に向けた事業を展開してくれる会社を探していた。公募はコレ
詳細は見てもらうしかないのだが、そもそも与件をクリアできる事業者がいくつあるのかと思うくらい、ニッチである。もしかしたら、エントリーはうちだけだったのかもしれない。
何はともあれ、京都に拠点を出すことが決まった。さて、物件をどうしようかと悩む。ビジョンに共鳴くださる方が「いいわよ、うちの物件(一軒家)を使いなさい」と声をかけてくださるのが理想だけれど、そんな人徳も幸運も持ち合わせてはいない。ただ、何はともあれ、「選ばれた」のは気分がいい。
この勢いで、結果待ちの小田原市の案件も通りますように。

10月*日
三井不動産さんに誘われて、1週間、salviaで移動販売をした(「産さん」はややこしいが呼び捨てにするほど仲良くもないので「産さん」とする)。
天候に恵まれない日が多く(こればかりはどうしようもない)、思ったような売上やお客さんとのコミュニケーションは生み出せなかったけれど、ドライバー&売り子として各地を回った結果、今後の「お買い物」をどうデザインしていくべきかについてのヒントにはたくさん出会えた。
三井不動産さんの仮説はこうである。「ECが益々便利になる中で、百貨店やSCのような場所に出向く需要は減っていく。一方で買い物は単にモノの受け渡しだけを指すのではない。特に生活必需品ではないものは、コミュニケーションが重要な要素である。わざわざ行くのは面倒、でもECばかりでは物足りない。その中間にあるのが移動販売だ」。
「ワタシたちはそこに賭ける!」と言ったかどうかは知らないけれど、戦略子会社を作り「MIKKE」というブランドで移動販売車を60台以上も保有し(さすがの資本力)、場の開発をされている。その方向性は、間違っていないようにぼくは思う。
金太郎的な駅前風景が変わるきっかけにもなるといいなあ。

10月*日
20年間の経営で考えてきたことや見えてきたアレコレを綴った書籍「アソブロックとは何だったのか」(ホンブロック刊)に、わずかながら反響がある。
その中のひとつ、ミチナルラジオでは、同書をネタにMCの菊池さんが色々と話をしてくれている。自分たちが時間をかけて積み重ねてきたものなので「言われてハッとなる」ようなことは少ないが、「外からはそんな風に見えるのか」という声を聴けるのは楽しい。
ラジオの中で、菊池さんが「アソブロックって、成長支援と言いながら全然積極的に介入しないし、放ったらかしなんですよ」と言っていて、「そうそう」と思った。
先日、パーソル総研という人材系のシンクタンクが発行する調査レポートで「同調圧力が会社を潰す」というデータを見た。それは「社員が互いを扶助し一致団結する会社は、迷惑を掛けたくないという相互の配慮・思いやりから変化への抑制意識が働きやすく、結果的にイノベーションが起こりにくい組織になる」というもの。「遠くに行きたいならみんなで」信者には、ショッキングなデータである。
ちなみにアソブロックの社是は「一致団結しない」であった。

10月*日
8月と9月の日記で応募に至る経緯を書き連ねてきた小田原市の公募案件、「豊島邸(歴史文化財)」利活用のプロポーザル結果が出た。結果は、

見ての通り

ちなみに勝ち抜いたのは鰻屋さんだった。結果はコレ
ぼくたちはこの場所を「おとなの学び舎」にしたいと思い、企画を練り、提案の手応えも十分だったのでちょっとショックだ。次点も飲食店だった結果を見ると、審査員の中で飲食業態に気持ちが傾いたのかもしれない。100点満点の採点基準は示されるが、採点結果は公表されないので、敗因は推測するしかない。
甘くはないなあ。

10月*日
出版社ホンブロックでは「家族の練習問題」という漫画エッセーをシリーズで刊行している(現在8巻まで)。そして、漫画エッセーには多くの展示用パネルや掛け軸作品もある。これらの作品を、無料で貸し出して全国で展覧会ができないかと考えている。
展覧会と言っても、美術館で開催するようなものではない。街中や公共施設内での展示。イメージはストリートピアノだ。
遡ること11年前、東日本大震災への支援を目的に、立命館大学が中心となり「東日本家族応援プロジェクト」が立ち上がった。プロジェクトは10年間続き、その支援メニューのひとつとして、毎年東北各地で展覧会が開催された。はじめた当初は「漫画展が支援になるのか」という声もあったが、10年継続する中で、新聞やニュース番組などでも度々取り上げられた。毎年来場し、漫画展を見ながら自分の現在地を確認する被災者の方にもたくさん出会った。
一旦役目を終えた作品たちは、今、大津の実家にある。しかし、これでお役御免とするのは勿体ない。そもそも家族支援の漫画展なのだ。そこで、長くプロジェクトに関わってこられたHさんを仲間に、新たな取り組み方を模索することにした。狙うは私立学校のアトリウム空間。子どもたちと、保護者に見てほしい。
ホントにいい時間が流れるんですよ。

10月*日
合羽坂テラスという、都営新宿線曙橋駅から歩いて3分ほどの場所でシェアオフィスを主宰している。
10社近くが入居してくれていて、毎日楽しくやっているのだが、ある時からオーナー都合で建物の管理会社が変わり、建物価値の下落が止まらなくなった。特に酷いのが前庭と共用部で、庭は荒れ放題。共用部は、建築的価値を理解できない人が対応するため、修理を重ねながら長年使われ続けてきた味のある照明が突然ニトリの最新製品に付け替えられる、みたいなことが起こっていた。悪気はないと思うのだが、それを目にした時のガッカリ感は半端ない。
そこで、自ら手を挙げ、庭の管理人になることにした。できれば建物全体を管理したいのだが、そう簡単には行かなさそうだ。
せっかくなら入居者のみんなと庭をワークショップ形式で管理していこうと考えた。伸び放題の下草(いわゆる雑草)を刈るところいから始めるのだが、選択除草というやり方を採用。何でもかんでも抜くのではなく、例えば「どくだみは残そう」とか、境界付近のシダは残そうなど、プランを決めて抜いていく。こうすることで、参加者は植物に詳しくなるし、1,000円カット的な「すっきり!」とはまた違う、意志のある庭に仕上がっていく。
選択除草についてはコチラの記事が詳しいが「草刈りを作業にしない」という言葉に深く共鳴した。
なんでもそうだよな、と思う。

10月*日
人間ドックに行ったら血中コレステロールの値が爆上がりしていた。
もともと「B」判定だったので、「気を付けた方がいいですね」期間が5~6年あったのだが、今回は「C」を超え一気に「D2」に。保険適用で経過観察してもらえるらしいが、嬉しくはない。
「何か大きく生活を変えたでしょう!」と看護師さんの事情聴取が始まった。「業務量が増えたとか」「運動を止めたとか」「生活リズムが変わったとか」など次々指摘されるが、まったく身に覚えがない。強いて言えば「ストレスフリーで幸せ」です。
しかし、「いやそんなはずはない!」と断言し、追及の手を緩めない看護師さんとの問答で可能性のひとつとして浮上したのが「ごはん(米)を減らしたこと」。確かに、糖質を減らした方がいいのかと思い、米の量は減らしてきた。食べない夜もある。そのことを報告すると、「誰に言われたのか」「医者の指導なのか?」と手厳しい。
「なんとなく、その方がいいと思ったからです」と返すと、「これだからネット民は困る」的なお叱りを受け、「今日から毎晩、最低お茶碗1杯は食べなさい」「あなたは背が大きいんだから、エネルギーもたくさんいるの!」と厳しく言い渡され帰された。
この歳(48)で「ちゃんとご飯食べなさい」なんて、小学生に逆戻りした気分だ。

10月*日
出版社ホンブロックの人気シリーズ本「家族の練習問題」9巻が発刊間際だ。
今号は牟田都子さん(校正者)に「編集者デビュー」をしてもらった。デザインは全巻を手掛ける辻祥江さん。データが揃い、いよいよ入稿という日に、事件が起きた。印刷屋さんが「製本加工屋が潰れて、指示通りの造本ができなくなりました」と言ってきたのだ。
問題になったのは、本を覆うビニールカバー。1冊ごとに手作業で包んでもらっている。その委託先が潰れ「都内にほかに依頼できる先はない」のだという。機械作業では再現が難しく、どうしても背の部分にぷっくりと丸みが出来てしまう(空気が入る)。それを防ぐため、1枚1枚に筋を入れ、綺麗に背に沿わせてくれていたのが、職人さんたちだった。
最近は、こういった特殊加工に対応できる製本所や加工場が、需要減と高齢化のダブルパンチで次々と閉鎖していると聞く。本はコンテンツとしての価値とともに、モノとしての価値がある。けれど、モノとしての価値を支える背景は、これからも先細っていくのかもしれない。
「家族の練習問題」については、8巻まで同じ仕様で来たのだからここで変えるわけにはいかない。依頼先を全国に広げて、印刷屋を探してみようと思う。
地方の職人は案外元気かもしれないし。

10月*日
原宿に2024年にできる商業施設に、salviaでテナント出店しようか悩んでいた。
誘われたのは1か月ほど前のこと。出店概要書を見て、かかる費用を計算したら頭がクラクラしたした。さらに、商業施設の怖さもよく知っている。けれど、詳しくは書けないが、コンセプトがいいのだ。
「これこれしかじかで」とメンバーに伝えて声を聞くと、反応は真っ二つ。これがどっちかに寄っていれば「そうか」と思えるが、真っ二つを目の当たりにすると「やっぱり自分で決めなきゃ」となる。
こんな時に立ち返るのは、自分なりの原理原則。「人の命にかかわることについては迷ったら行かない」「そうでないものは、行く」。
そして今日、申込最終日にゆうパックで必要書類を送った。固定家賃も、売上歩合家賃も、公募条件を下回る額で希望申請したので、箸にも棒にも掛からないかもしれないけれど、悩んだ1か月には意味があった。
出店できることになったら嬉しい気もするが、怖い気もする。