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24. アルベロベッロ

朝起きて支度をしたら、電車の時間を再確認するためロビーに小走り。朝食のホールから朗らかなウェイターが出てきた。あれっ、食事は?後で行きます。そう、待ってるよ!美味しそうな香りが漂っていた。結局、急いで食べたら大丈夫だけれど、本数が少ないため、そのまま出掛けることにした。

往復切符1名分、220円ほど
左に必須の刻印、右に車掌チェックのパンチ穴

窓からはオリーブの林が、次いでロコロトンドの旧市街が見えてきた。丘陵部に丸い形で建物が並ぶ。もうすぐ目的地、美しい木という意味の街アルベロベッロ。

木々の間に徐々に変わった形の建物が見えるように。トゥルッリ(単trullo/複trulli)という、この辺りの伝統的な石造りの家で、サイズも形も可愛らしい。白い漆喰の壁にとんがり帽子の屋根で、おとぎ話に出てきそうだが、ほんわかしない歴史がある。

Locorotondo旧市街

トゥルッリという建築物の起源については、諸説あるようで。この地域の農民の住まいや物置に使われていたトゥルッリは、屋根の石積みが接着されていない。この地を治める貴族による税金対策で、住宅ではないと主張するため、役人が来るとすぐに壊せるようにしていたそうだ。もし屋根が固定されたとしても、特徴的な建物であることは変わらない。複数の部屋がある構造の場合、内部の部屋は区切られておらず、洞窟を掘り進めたような感じだった。とんがり部分は屋根裏部屋になっているそう。

トゥルッロ断面図

トゥルッリの密集したアイア・ピッコラとモンティ地区は、1996年に世界遺産に登録。その影響で、以前に比べると認知され、観光で潤うようになったとか。昔トゥルッリの修復職人が石を割って巧みに積み上げている映像をテレビで見たことがある。石は一方向にスパッと割れて力は不要な感じだが、とんがりの形に隙間なく、きれいに積み上げるのは難しそう。後継の心配があるとのことだったが、どうなっただろう。

駅に着いて、ポポロ広場(Piazza del Popolo)まで進むと、地元の人が集まっているバールが目に入った。そうだ、朝食を食べていない。朝の飲み物カプチーノとペストリーやクロワッサンを頼む。カプチーノ1杯1500リラ(75円)、パン2つ1800リラ(@45円)。店の人と常連さんの話すのを、音楽のように聴きながら食べた。

この後、小さなトゥルッリが並ぶ景色を見ながら歩いていると、とても正確な日本語の案内板が目につき、「いらっしゃい」と声をかけられるように。日本人ターゲットに鼻息荒いのかと心配になったが、客引き熱心ではない。何件か店に入ってもシャイな感じで慣れている雰囲気ではない。聞くと日本人の方がお住まいで、教えてもらったのだという。それならよかった、素朴な感じの街に似合う話で。個人的な願望だけれども。

先に進むと、今度はある店から日本語が賑やかに聞こえてきた。8人ほどの日本人のツアーだった。何を買ったんですか?唐辛子です、ここは唐辛子協会の会長さんのお店なんですよ!と。せわしなく添乗員さんに引率されて去って行った。まさかこんな地方で団体に会うとは。しかし、唐辛子協会なんて初耳だ。

Dynamiteという細かく刻まれた唐辛子と野菜のオイル漬を買った。これは買わないの?おいしいのよ!と店員さんおすすめは唐辛子ジャム。ここでしか買えなさそうと思うと欲しくなるが、移動距離を考えて思い止まる。

別の店で若い男子の控えめな客引きに応じ、中に入った。見渡していると、気になる木製の道具があった。のし棒にマス目が彫ってある。ラビオリのようなパスタを作るときに、伸ばした生地の上を転がして、カットするように使うそうだ。日本に持ち帰るには大きさがネックだ。絵葉書だけ買うと、登ってみる?上からの眺めもいいよ!と言われ、乗った。コンパクトにつけられた階段を登ると、あの石灰石のとんがり屋根が向こうまで続いているのが見える。いい眺めでしょう?と振り返った笑顔にほっとする。こうして街が守られていくのかな。

屋根のマークは魔除けなど諸説あり、細い四角の柱は台所の煙突

その先を歩いていくと、壁一面に広告が貼られた不動産屋があった。トゥルッリがいくつも売り出されており、なかなかいい値段だった。さすが世界遺産。住んでいるのを想像してみる。ここもムルジェ高原に位置するため、冬は寒そうと思ったが、トゥルッリの壁は空気が含まれるような構造で、とても厚くなっており、内部では暖かく過ごせるらしい。引っ越す?

この写真のように普通は平家だが、2階建てのトゥルッロが1軒だけある。「トゥルッロの王様」という名前のトゥルッロ・ソヴラーノ(Trullo Sovrano)。18世紀にできたものだそう。下の写真だけフリー画像から。一階建と変わらないように見えるが、後ろの高くなっている辺りが2階の部屋。とても狭い階段を登る。部屋数も多く、調度品も刺繍されたカーテンや寄木細工のような飾りのベッドがあった。

(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ファイル:Trullo_sovrano.jpg)
この地域にしては豪華
テラコッタ(素焼き)の壺で豆を煮るなど、暖炉兼台所

今は観光で少し潤っているかもしれないが、実際とても貧しい時代が長かったと聞く。旧市街を出ればオリーブの林や畑がある、こういった地域の農業が人々を支えている。もちろんイタリアだけでなく。イタリアは華やかな教会や美術館などが名所になっているが、こういう生活を感じる場所もいい。

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アルベロベッロの世界遺産登録
最初のセクションだけ、Japaneseで日本語表記になります。

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🌶️唐辛子のジャム
Crema Dolce di Peperoncini が通じるようです。ジャムと書かれている製品も見つかります。上は訪れたプーリア州の、下はお隣のカラブリア州のもの。今は日本でも買えるのですね!カラブリアの唐辛子は沢山の種類があるとのこと。食べたことがあるのは、中にアンチョビや野菜が詰められたオイル漬けで、すごく辛くても甘味があって、やみつきになる味でした。

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お読みくださっている方へ
どうもありがとうございます。なかなか書き進められませんが、終わりまで書きたい欲はあります。気長にお付き合いくださると嬉しいです。
毎日暑いので、ご自愛ください。

一緒に旅をしているような気持ちになっていただけたら、うれしいです。 または、次の旅の計画のご参考になれば。