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10. チェックイン@アグリジェント

到着したホテルは、神殿の谷の中にある。住所Via Passeggiata Archeologica 33だ。ガイドブックでは「考古学の遊歩道」と訳されている。アグリジェントの遺跡地域として世界遺産に登録されたエリアで、コンコルディア神殿まで200mほど。

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アグリジェント駅が上の赤丸、下の赤丸と矢印がホテル。登録エリアは不明

これまで遺跡には全く興味がなかったが、写真を見たら、何故だかこの神殿の谷に強烈に行きたくなってしまった。そして、ここに泊まると決めた。お値段がよろしいけれど、近くのホテルは当時あまりいい評判がなかったことで、踏ん切りはついた。

フロントで名前を言い、パスポートを出そうとしたら、君は予約されていない、と即答。そんなはずはない。FAXで返事をもらったのに。ん?リストを確認しないのはなぜ?FAXの予約票を出し、予約の日付と名前を指差したら、やっとパソコンで確認し始めた。

ああ、予約してあるね。部屋番号を言いながら、鍵を出した。しぶしぶと。この状況はどういうことなのか理解に苦しむ。すると、重い視線をこちらに向けて話し始めた。君はFAXを別のホテルに送っていたんだ。

え?私はガイドブックに載っていた番号に送って、FAXの返信が無事に届いていたのに?と言うと、横に首を振る。見せられた番号と照合すると違う。本当だ!まさかガイドブックの記載が間違っているなんて。

ならば、なぜFAXの返信が届いていたの?それは、受信した別のホテルがFAXをここに送り、私達が君に返信した。でも、君はまたそのホテルに送って、と繰り返したんだ。

でも、そのことが何も書かれていなければ、気付くわけがない。FAX番号が間違ってますと誰かが伝えないと、わからないですよ?と言うと、君が間違っていた、と。

なぬ。だからといって予約されていないとまで言うのは、どういうこと?すると、年配のアメリカ人男性がやってきて挨拶し、どこからきたの?私はアメリカから、イタリアは初めて?はい。いい旅をね!と。彼とスタッフの2人にお礼を言ってフロントを離れた。

少しまだくすぶっていたけれど、部屋は予約できていたし、もういいか。あのアメリカ人男性がスマートに終わらせてくれたのだから。歩いていると、背後から、あのアメリカ人男性がフロントの男性と話している声が聞こえてくる。君は頑張っているが、英語の勉強をもっとしたほうがいいね、と。おそらく高級なホテルで多々旅行してこられたであろう男性には、先程の対応以外に感じていたことがあるらしい。

想像しなかった出来事。間違われたホテルの人が親切にも?送り直してくれるなんて。なぜこちらに連絡しないのかが不思議だけれど。仕事ならFAX送りましたと電話していたのに、うっかり。次は気をつけよう。珍しいこととはいえ、ガイドブックを過信してはいけない。間違いは誰にでもある。良かれと思ってやったことが仇になることもある。アクシデント続きの一日はいずれいい思い出になるかもしれない。

こんなことを思った当時の私は、12年後も宿泊するとは予想していなかった。

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もう20年前で、今はすっかり状況が変わっています。予約に関する一連のことはそのまま書きました。過去そんなこともあったのだと読んでいただければと思います。FAXが誤送されていた方のホテルは、当時とは経営形態と名前が変わって存続しています。

泊まったホテルは当時四つ星のヴィッラアテナ(Villa Athena)。2012年の再訪時は改装され、五つ星ホテルになっていました。この上ないロケーションで、美しいホテルです。



一緒に旅をしているような気持ちになっていただけたら、うれしいです。 または、次の旅の計画のご参考になれば。