3泊4日京都旅行

 私は9月3日から4日間、京都へ進学した高校の友人の家へ泊りに行った。私も友人も寺や神社といったものにあまり興味がないので、清水寺や金閣寺などには一切行っていないという、京都の醍醐味を無視した旅だった。

 1日目。
 京都へ行く前にワールドシップオーケストラという無償で世界に音楽を届けている楽団の演奏を聴きに行った。正直アマチュアも混ざっているのであまり期待していなかったのだが、現役プロや音楽の教師の方も多く完成度の高い演奏だった。オーケストラという箱の中では肩身の狭いはずのサクソフォンがこの楽団の中では輝いて見えたので、痛く感動してしまった。ビビってこの演奏会の出演に応募しなかったのが悔やまれる。次回があればきっと参加したい。
 そののち高速バスに乗り大阪まで移動した。意識のないうちに死ぬのは嫌だという理由でぎりぎり夜行便ではない22:15大阪着のバスを選んだ私は爆睡して飲みかけのコーヒー牛乳を座席に盛大にこぼした。甘ったるいにおいが臭かった。矛盾した高速バスへの偏見からそのまま京都まで行けるバスをわざわざ大阪で降りたのがよくなかった。九条という地名が大阪と京都それぞれにあるとは露知らず、1時間ほど金と時間を浪費し、結局友達宅へ到着したのは深夜1時過ぎだった。
 しかしこの1時間、捨てたものではなかった。私は電車の中で素敵な出会いを果たしたのだ。と言っても、彼の連絡先もわからないのでたった5分ちょっとの付き合いだったのだが、彼はネックバンド型のイヤホンをして私の横に立っていた。腹だしの服装を決め込んでいたので彼の視線に対し嫌悪を抱き睨み返したのがファーストコンタクト。彼は何か言いたげに私の横に立ちキャッキャと騒ぐ4人組の酔っ払い女性達に視線を移す。理解。両耳にイヤホンをねじ込んでいたので気づかなかったが言われてみれば確かにうるさい。外国人らしい欧米なジェスチャーと共に曲がよく聞こえないじゃないかとこちらに伝えてくる。
「I can't listen well.」
そんな感じのことを言ってきたので、
「Agree. But you can use this.」
と肩にかかった彼の片耳のイヤホンを指す。
「I know, but ******.」
なんて言っているのか分からなかった。電車の中だったこともあるけど、まず別に英語をすごく話せるわけではないのだ。
「Yeah.」
とりあえず適当に返事。
「But music is always our side.」
「Sure.」

「What’s kind of music do you like?」
「I like crazy one. Maybe you don’t know.」
クレイジーなのってなに?ヘビメタとか?ひげ長いし好きそう。
「Wow. You like crazy one? lol
 What's the title?」
「Hmm.」
おすすめが多くて選べないのかものすごい量のプレイリストをスクロールする彼の回答を残念ながら待つ時間がない。もうすぐ降車駅に着く。
電車の速度が落ちる。
「My favorite one is LUCKY CHOPS. It is an instrument band. Check it later.」
ドアが開く。
「Thank you for the wonderful meeting.」
「Thank you, too. My favorite one is *******.」

あの時は思いっきりうなずいてバイバーイって言ったけど結局なんて言ってたんだろう。
片耳同士の会話。
(私は音楽止めてたけど彼はどうだったんだろう。何しに日本へ?握手くらいすればよかったなあ。)
なんて思いながらもう一度その線に乗って引き返す。


2日目
 起きたのは9:30。理由は友人のスプラトゥーン一番くじに付き合うため。購入した計6枚のうち私が選んだ1枚も含めてすべてE賞かF賞かG賞。コップが3つとキーホルダー2つ、水を吸いそうにないハンカチを持って帰宅し、もう1人の友人が京都駅に着く時間までだらだらして河原町の方まで行った。目当ての肉ひつまぶしと韓国ワッフル屋さんのお休みに傷心しながらも適当に回って、夕方6時くらいに私の今回の旅の大きな目的であるBlue Bottle Coffeeへ到着。モデルのRolaさんが好きな私はずっと彼女がYouTubeで紹介していたこのお店に来たかったのだ。ちなみにこの六角カフェに来たわけではなく彼女が紹介したのはロサンゼルスのBlue Bottle Coffee。仕方ないよね。日本にあまりない支店に来られただけでオッケー。
彼女が注文していたオーツミルクカフェラテと彼女が持っていたBlue Bottle Coffeeのタンブラーを購入し大満足。
 いつかロサンゼルスも制覇したい。その時は彼女がしていたようにこのタンブラーに淹れてもらって彼女が座った同じ席で同じカフェラテを飲む。


3日目
 この日の起床はお昼。夜ご飯を買いに行くだけなのに化粧をして近くのイオンで肉とポテチと日用品、コンビニでお酒とつまみを購入して帰宅。ホットプレートで焼肉しながらぽつぽつと会話をして携帯をいじり倒し夜10時に夜ご飯を終了。
 満足していない。1日に満足できていないこの不完全燃焼感。
最近のアニメに「よふかしのうた」というのがある。ヴァンパイアになるためにヴァンパイアに恋しなくてはならない引きこもり少年のお話なのだが、その恋されるヴァンパイアの言葉にこんなのがある。

「人はなぜ夜ふかしをすると思う?
(省略)
それらはすべて1つの原因に収束する。
今日という日に満足していないからだ。」
「今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ。
そういう生き方も悪くないぜ。」

 共感。これこそ充実。ものすごい満足感。
深夜のカラオケも夜中3時の誰もいない京都駅も最高にエモくて最高に楽しかった。


4日目
 特になにもない。友人がテストを取りに学校へ行っている間、荷造りをして簡単に部屋を掃除し、欲しがっていたキャップを1か月先の誕プレも兼ねて感謝の印に贈りピザと餃子を適当に家で食べて帰路につく。なんといってもめんどくさがりで人に興味のない彼女は私のショッピング欲も京都駅でなんか一緒に食べて帰ろうかなという思惑も無視し玄関先で見送り寝た。クールというかなんというかたまに少しだけ嚙み合わないこともあったけど、大切にするべき良い友人。


 帰りのバスで5時間ほど爆睡したのちこれを書いている。楽しい旅だった。しかもあまりお金を使っていないエコな旅だった。タンブラーが1番高い買い物だった。

また彼に会えたら今度こそおすすめの曲を聞きたい。

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