甘辛いタレのジュワっと染みた手羽先のうまさについて
「はい、お待ちどうさまー」
長方形の皿に「く」の字に曲がった手羽先が六本。
カラリと揚げたあと、甘辛い濃いめのタレにドボンとつける。
上から振られた白ごまがなんとも色っぽい。
この世には2種類の人間がいる。
すなわち、手羽先を箸でつかむ人間と、手羽先を手でつかむ人間だ。
私は後者の派閥に属するので、ガシッと掴むと愛しの手羽先にかぶりついた。
ジュワっとあふれた肉汁とタレが飛び出しそうになり、慌てて首を横にしてすする。
ここのお店の手羽先は初めてだが、白レバーの串が絶妙な火加減だったので期待値は高かった。
熱を通しすぎればジューシーさが失われ、足りなければ残念な生焼けになる。
そういった、絶妙な熱の通し方を知っている店主は焼き物だけでなく、揚げ物にも信頼がおける。
店主は見事に私の期待にこたえてくれた。
ここでハイボールをゴクリと流し込む。
脂をリセットしたら、2本の骨をこじって分解し、丁寧に身をかじり取る。
軟骨のコリっとした感触がまたたまらない。
綺麗になった骨を皿の上において、一度おしぼりで手を拭く。
気の利いた店主が、新しいおしぼりを手渡してくれる。
ここでハイボールをもう一口。強めの炭酸が、さわやかにのどを刺激する。
次は持ち手の部分。角度を変えながら、無駄にしないように食べる。
手羽先の取っ手の部分を食べていない人を見るとなんとももったいない気分になる。
この部分は、カリッとした手羽先の先端にタレがしみ込んで最高にジャンキーでうまい。
たれがうまい店の手羽先は、必ず先まで食べるべきだ。
手を拭いて、またハイボールをぐいっとあおる。
今日もいい日だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?