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#00 戦中戦後青春のおぼえがき「草笛の記」 / はしがき


草笛の記

戦中 戦後 青春おぼえがき


はしがき

 本書は戦中の軍国主義教育と、戦後の荒廃した社会、教育の混乱の中をさ迷った名もなき一少年の、生きざまを伝える覚えがきである。

 主人公は、私自身であるが、ややもすると陥りがちな誇張を避けるため、わざと他人称「花山 三吉」とし、その思考、行動のすべてを客観的に捉え、かつ表現するようにつとめた。そのためもあって、覚えがきふうに書いてみた。

 しかし何といっても、五十年以上も前のことがらである。

 いま、手元に当時のことを記録したものがなく、私の記憶違いが、多々あろう事と思われる。その正否を質そうにも、異郷の地に暮らしている現状では、その術もない。

 私の思い違いから、ご迷惑をおかけすることがあれば、恐縮のほかなく、ご寛恕を乞うのみである。

 夏目漱石の詩の一節に「当時の活漢、いま何処にぞある」とあるが、本書を書いていて、絶えずこの語句に悩まされた。この語句のせいではないが、たいへんお世話になりながら、つい疎遠になってしまった大切な方々がある。

 顧みて心から恥じ入る次第である。

平成四年 夏 坂田世志高



舞台

(福岡県)久留米

人物

主人公 :花山 三吉
家族構成:父、母、七人兄弟(五男二女)
     三吉は四男坊

はしがき

第一章 幼少時代

 大家族に育つ、父母のこと、雄大な筑後の山河

第二章 小学生時代

 支那事変勃発す、国民学校の発足、太平洋戦争へ突入

第三章 兄三人出征す

 長兄、次兄、三兄

第四章 久商へ入学

 「校門 即 営門」、戦時下の教育、工業学校へ転換、長兄戦死す、銃後の守り

第五章 勤労動員令下る

 学業捨て工場へ、空襲警報と工場

第六章 戦局最終段階へ

 沖縄戦に敗る、広島長崎に原爆、久留米炎上す、ついに敗戦

第七章 復学

 荒廃の中の生徒、ストライキ決行

第八章 明暗

 次兄復員、三兄比島で戦死、家業順調

第九章 商業校へ復帰

 混乱と民主化、開花した弁論大会、読書三昧 議論百出

第十章 樟南新報 発行

 生徒による週刊紙、運動会で号外発行

第十一章 新たなる目覚め

 新憲法施行さる、生徒自治会が発足、自作詩集を刊行、月刊文芸誌発行

第十二章 試練への挑戦

 全九州雄弁大会出場、「電気を寄越せ」、東京へ!

あとがき


 


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