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2023年、今年の夏は暑かった。勉強に明け暮れていたがそんな夏も終わりを迎えた。

大学の卒業が近い。この住み慣れたアパートの一室も、綺麗とは言い切れない出来事の全ても、顔馴染みのバイト先も居酒屋も喫茶店も、この街全部を静かに当たり前のように忘れていってしまうのだ。

卒業したら地元に戻ると親に約束して行ったが、正直確証はなかった。大学で出会った人と結婚することが多いと聞いていた私は、もしそうなったらどうしようと不安がっていた。まあ、そんな心配はご無用だったが。
そして地元に帰ることが決まった今、そして卒業が着々と近づいている今、この街で過ごした全てが愛おしくてしょうがない。

好きだった先輩が住んでいたアパートも、友達と飽きるほど散歩した道も、元彼と別れ話をした公園も、あたたかい常連さんがたくさんのバイト先も、私の家に居候していたあいつの顔も、全て時間をかけて思い出せなくなっていくのだ。

絶対にその時が来るとわかっていても、毎日一分一秒を覚えて生きていくことなどできない。このアパートに踏み入れることも一生涯なくなる。楽しかった全ての時間が砂になって風に吹かれてもう戻ってこないのだ。

生きるということは、そういうことの繰り返しなのだ。でもそれが当たり前になっていって何に価値があるのか、何を大切にすべきなのか分からなくなっていく。一般的に「幸せ」と呼ばれるものに惑わされずに、私は私の大切だと思うことを大事に大事に心に持っておきたい。
道端なんかで動画を撮っている高校生を見て迷惑そうな顔をするけれど、きっと彼女らはその動画を通して思い出を大切にとっておけるのだ。2度と来ない今を残しておけるのだ。

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