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蜂蜜

平凡な日常、と周りから見れば思われるが、私にとっては毎日が命がけの戦争であることは誰も知らない。

家では、家族に「いい子」と思われるように行動し、学校では常に「カースト」を意識して行動する。いつ蹴落とされるか分からない恐怖に襲われながら、今日も顔の筋肉に変な力を入れた笑顔で登校する。

朝7時頃

門の前にいる先生に挨拶するかしないか、たったこれだけのことですら、気が病むほど悩まされるのだ。挨拶をすれば、まじめぶってと批判され、しなければ、先生からの評価が落ち、成績に響いてくる。いくら頭が良くても、愛想がいい、可愛い子には敵わない。

本当に生き辛い世の中だ、と学生ながら思う。

結局結論が出ないまま、私は周りを気にしながら小さくお辞儀をしてこの関門を通過する。

12時45分

私が一番嫌いな時間。昔は一番好きだった時間が一気に最下位になってしまうとは、夢にも思わなかった。

残酷だ。

つい最近までみんなで外で鬼ごっこや縄跳びをして無邪気にはしゃいでいた。何も考えずにただひたすら必死なって鬼から逃げていた。それがたった数ヶ月で、一変する。

外で、走り回る無邪気な子どもは減り、廊下、教室で戯れる子こどもと大人の境目の曖昧な人間が、増えていく。外から見ればたわいない会話をしているように見えるが、「たわいない」という可愛らしい形容詞はこの「会話」には似合わない。

この年頃の子は甘い蜜のような、他人の悪口が好みである。そして、その甘い蜜にならないように、みな働き蜂のように花の花粉をせっせとあつめてくる。女王蜂がその蜜の量を見せびらかし、働き蜂たちを脅すのだ。






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