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ワインは教養抜きだからこそ楽しめる!【はじめに全文公開】

大和書房は、『ワインの嘘 誰も教えてくれなかった自由な楽しみ方』を8月18日に発売いたします。

【オビあり】ワインの嘘

コロナ禍で、おうちでワインを飲む方も増えたのではないでしょうか?
一方で、地名や種類、味など、覚えることがいっぱいで、ワインに対して難しいイメージを持っている方も多いのでは?
教養がないとなんとなく好きだと言いにくいワインの世界。
でも、ワインを楽しむのに教養なんていらないんです!

●食事に合わせたワインじゃなくても、好きなワインを飲めばいい!
●赤ワインをキンキンに冷やしてもいい!
●知識がなくても大丈夫。ビビっときたワインを飲めばいい!

ワインはもっと自由にワガママに、楽しむことができるのです。
本書はベテランワインジャーナリストである著者が、「ワインは難しい」の呪縛を解くアウトローなワイン論を教えます。

本書のはじめにを公開します。

はじめに― 「ワインの嘘」に惑わされず、本質を楽しもう

 「ワインは好きだけど、よくわからない」という話を耳にする。「ワインについて何も知らないので」と恥じ入る人もいる。
 考えてみれば不思議な話だ。ワインはアルコール飲料の一つであり、嗜好品。楽しむのに知識など必要ない。番茶やビールを飲むのに「番茶がよくわからない」とか「ビールの知識がないので」と卑下する人がいるだろうか。
 なのに、なぜかワインでは「わかる必要がある」とか「楽しむには知識がいる」といった奇妙な誤解が幅を利かせている。
 おそらく西欧から導入されたワイン文化をあたかも高尚なものであるかのように崇め奉り、衒(げん)学的な蘊蓄(うんちく)を振りまく輩が幅を利かせたために、一般の消費者が委縮してしまい、自由にワインを楽しめない雰囲気が生まれてしまったのだろう。残念なことだ。
 ワインは本来、日常に根付いた飲み物だ。毎日の食卓にあり、食事を引き立て、団欒(らん)の時間を彩る。寛ぎ、憩い、明日への活力を与えてくれる庶民的な飲み物である。ビール、焼酎、日本酒と同じだ。何も特別な飲み物ではないのだ。
 それを高価な宝石であるかのように喧伝し、取ってつけたような空虚な知識で飾り、珍しい「舶来品」として「箔をつける」というのは、全く浅薄なアプローチで、鹿鳴館時代ならともかく、現代では滑稽極まりない。
 ワインは日本の伝統的飲み物ではなく、異文化なので、それが紹介されるなかで、ある程度の齟齬が生じるのは避けられないかもしれない。ワインに限らず、外国の音楽、美術、料理などを導入する過程でも、そのようなことは起こってきたのだろう。
 そのような齟齬=誤解=「ワインの嘘」が自由にワインを楽しむことを阻害している気がする。

 私は日本とイタリアで40年近くにわたって、ワインと食について執筆をしてきた。仕事柄、様々な場所で、多くの人とワインを飲んできたが、仕事を離れたら、その日に飲みたいワインを、好きなように楽しませてもらう。温度も、グラスも、一緒に食べる料理もその日の気分次第である。「やりたいようにする」以外のルールは一切ない。
 やたらと煩わしいルールを押し付けたがる人がいる。「このワインにはこのグラスがいいですよ」「このワインは17度で楽しんでください」「2時間前に抜栓してください」「口に入れる前にまず香りを楽しんであげてください」など、余計なお世話だ。
 寛ぐために、楽しむためにワインを飲むのだから、安物のマナー教室のような規則には縛られず、好きなように飲ませてほしい。
 好みは人それぞれだし、その人に合った飲み方が一番だ。熱々の料理が美味しいからといって、猫舌の人に熱い料理を無理強いするのはハラスメント以外何ものでもない。どんな高価な料理でもその人の口に合わなければ何の価値もないのである。
 10万円のワインだからといっても、誰もが美味しいと思うとは限らない。「高価なワインはやはり格別の美味しさで、品格がありますね」と皆が思うわけではないのだ。2000円のワインの方が美味しいと思う人がいても何の不思議もない。3つ星レストランの高級料理より、場末の居酒屋やトラットリアの料理の方が美味しいと思うことだってあるのだ。

 ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーでもそうだが、ワインにも他のアルコール飲料とは異なる独自の特徴がある。それを知っておくことは、ワインを楽しむ上で役に立つかもしれない。だが、ワインについて細かい知識を集めて、ひけらかすことに喜びを見出す「トリビアの泉」的アプローチは、まさに「木を見て森を見ず」で、かえって本質を見逃してしまう。
 肝となる部分だけを大きくざっくりと捉えておけばいい。あとはそれぞれが好きなように楽しむだけだ。本書では、その肝となる部分だけを紹介している。
 とかく、蘊蓄、格付け、マナーなどは、人生を楽しむことを妨げることが多い。ワインの飲み方についての上から目線のお寒い説教を無視して、自由にワインを楽しみたい。ワインは人生を楽しくし、人を幸せにするためにあるのだから。
 この書がそんな思いを抱かれる方のお役に立てば幸いである。
宮 嶋  勲


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