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全米30万部突破のベストセラーがついに日本上陸。「思春期女子特有の行動」に動揺しないための最新研究

8/7発売『10代の女の子の親が知っておくべき7つのこと』(リサ・ダムール著 宮﨑 真紀訳)はじめにを全文公開します。

米CBSニュースのコメンテーター、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストなど、メディアでも活躍する著者、リサ・ダムール氏のベストセラーの日本語版が満を持して発売される。

本書は10代の娘2人を育てる心理学博士で母であり、大学でティーンエイジャーたちを指導し、長年女子校のカウンセラーも勤めている立場から、思春期の女子に起こりうるあらゆる可能性について最新の研究をもとに、親が知っておくべき点を7つにまとめ解説しています。

イライラしたかと思えば、急に泣き出したり、親に秘密を持ったり…。10代になると思春期女子特有の行動がみられ、子どもの言動に手を焼く親は少なくない。著者曰く、ティーンエイジャーの発達には特定のパターンがあり、設計図がある。思春期の発達を解説する地図を持つことで親の不安は軽減される。娘の行動が奇妙で反抗的だったとしても、立派に成長している証なのだと理解してもらえる1冊となっている。

************** ************* ******     思春期の子供は不安定で、予想のつかない行動をとるものであり、本人もそれで苦しむかもしれないが、治療をする必要はないとわたしは思うし、彼女が自分で解決策を見いだす時間や機会を与えるべきだろう。むしろ親のほうが、そんな娘に対処するためのガイダンスや手引きが必要なのではないか。
飛び立とうともがく思春期の子供と向き合うのはとても大変なことで、人生でもこれほど難しい局面は、ほかにそうない。

アンナ・フロイト「思春期」(一九五八年)*
*一九五八年当時は、人称代名詞には男性形を使うのが一般的だった。しかしここや、そのほかの場面でも、勝手ながら、フロイト博士が「彼は」「彼の」と記しているところを「彼女は」や「彼女の」に置き換えている。
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はじめに 女の子の発達には設計図がある

  ティーンエイジャーの女の子について、今までとは別の角度から話をする必要がある、と思うのです。現在一般に言われていることは、思春期の女の子への偏見が強かったり、親にとってまるで役に立たなかったりします。十代の女の子が自分にも他人にもきつく当たることは確かですし、たとえ調子がいいときでも、何をするか予測できず、感情を極端に高ぶらせるもの。
 それでも、思春期は本人にとっても親にとっても、荒れ狂う嵐のような悲惨な時期だと言われすぎです。
 わたしがここで言いたいのは、思春期の女の子の毎日を、こんがらがってしまった糸か何かみたいに考える必要はない、ということです。ティーンエイジャーの発達には特定のパターンがあり、設計図があります。わが子がイライラする原因を理解すれば、その行動の謎がふいに解けるはずです。思春期の発達を解説してくれる地図を持つことで、芯のしっかりした望ましい女性になれるよう、もっと楽に子供を導くことができるでしょう。
 十代の女の子について、従来とはひと味違う、もっとわかりやすい説明をするために、この本では思春期を通してながめ、全体を七つの分野に分けて、それぞれに一章ずつ割きました。発達分野を順に見ていくことで、女の子がすてきな女性に変身するまでにどんなことを達成していくのか、一つひとつはっきりわかり、娘の行動がどんなに奇妙で反抗的に見えたとしても、じつはごく普通のことで、むしろ立派に成長している証なのだと理解してもらえるでしょう。
 本書の前半では、ミドルスクール〔日本の小学校高学年から中学二年生ぐらい〕に顕著な傾向を扱い、後半では、高校入学前から高校時代〔日本の中学三年生~高校三年生。アメリカの高校は四年制が多い〕にかけての女子に目立つ発達分野を取り上げます。

■ 思春期を理解すれば娘へのイライラが減る

 わたしは十代の女の子をケアする役目を担っており、彼女たちと関わりながらキャリアを築いてきました。毎週自分のクリニックで女の子たちやその親御さんと会い、ケース・ウェスタン・リザーヴ大学の心理科学学部でティーンエイジャーの心理を学ぶ学生たちを指導し、ローレル・スクールの相談室で生徒たちにアドバイスをしています。このローレル・スクールは幼児から高校四年生までの子供たちが学ぶ私立の女子校で、わたしはここでカウンセラーを務めながら、女子研究センターの所長をしているのです。じつは愛する二人の娘を持つ母親でもあり、そうして個人としても、人生の中で女の子とじかに関われることは本当に幸運だと思っています。 

 女の子たちをそんなさまざまなレンズを通して見るうちに、大人になるまでの過程は複数のカテゴリーに分かれること、そしてそのカテゴリーあるいは分野は、女の子の成長度合いを測定するのに使えそうだということに気づきました。

 発達分野という考え方は目新しいものではありません。一九六五年に初めてそれを提唱したのは、ジークムント・フロイトの娘で、みずからもすぐれた精神分析家だったアンナ・フロイト。つねに混沌としている子供の発達過程を整理することが目的でした。ほかにも、たとえば一九五〇年、エリク・エリクソンは、発達の各段階での課題の克服度をもとに、幼年期から老年期に至るまでの成長モデルを提唱しました。心理学者たちは、これらに沿って発達研究をする伝統を今も続けています。

 現代の心理学では、「年を取る」ことについて、肉体的側面、心理的側面、認知的側面、社会的側面から考えていくのが普通です。言い換えると、段階に分けて人間の成長を測るという研究アプローチは、今では豊富な理論としっかりした研究の蓄積に支えられているということです。ですからわたしも、こうした先達たちの大きな肩にのる形で、十代を歩む女の子たちが
すこやかに成長するには具体的にどんなゴールを目指せばいいのか、包括的でわかりやすいモデルを提示したいと思います。

 このモデルを頭の中で組み立て、それを使えばわたしがこれまでに経験してきたことの大部分がはっきりするとわかったところで、教え子の大学院生たちにこのモデルを紹介しました。彼らが取り組む複雑怪奇な思春期の子供のさまざまなケースを読み解くうえで、役立てばと思ったからです。一般に、成長過程にあるティーンエイジャーは衝動的であまのじゃくで、大人
の標準からすると「どうかしてる」としか思えないこともあります。ですから新米カウンセラーには、カウンセリングを受けに来たティーンの精神状態を評価する基準が必要なのです。

 発達分野という概念を通じて思春期の女の子たちについて考えることは、プロの臨床家には実用面で役立ちますが、もっと重要なのは、これを使えば親御さんが、わが子が大人になるのに必要な課題を具体的に知り、ティーン特有のわけのわからない行動を理解できることです。

 たとえば、去年までは地区のお祭りで子供用のゲームに大喜びで参加していたのに、今年は、あんなのつまんないと文句を言って、大人と一緒にいたがる娘。なぜそんな変化が起きたのか? もしかすると、子供時代にさよならする作業(第1章)を始めたのかもしれません。あるいは、模擬国連研究レポートのためにわくわくしながら『エコノミスト』誌を買う一方で、大好きなアイドルグループの記事がある『USウィークリー』誌を三冊も買うのはなぜか? たぶん、娘さんは恋愛の世界に足を踏み入れた(第6章)のでしょう。ティーンエイジャーの重要な発達過程を理解すれば、つい首をひねりたくなるようなわが子の行動にイライラすることも減るはずです。

 また、発達分野をもとに考えれば、いちばん必要なところにエネルギーを集中させることができます。たとえば、ある友人グループに仲間入りし、とても楽しくやっている(第2章)のはいいけれど、勉強がおろそかになり、将来の計画を立てる(第5章)上でアドバイスが必要になっているかもしれません。あるいは、大学に行ってもソフトボールを続けようと思っているくせに、コーチの指導に耳を貸そうとしない娘。目標は明確でも、大人の権威への反抗(第4章)が行きすぎるのは困ります。娘さんがさまざまな側面で並行して成長していることを知っていれば、ある分野で成功していても別の分野で困難を抱えていることを見逃してしまう可能性が減るでしょう。

 さらに、発達分野を通して考えれば、娘さんの身に起きた特定の出来事を、成長の全体の流れという文脈の中で評価しやすくなります。生徒会役員選挙で負けて大泣きしている娘をどこまで心配すべきか? 普段はもっと忍耐力があるか、あるいは感情のコントロールにいつも苦労しているか(第3章)によるでしょう。寒い日にコートも着ずに出かけた娘を放っておいてもいいか? 今日に限らず、普段からちょっと心配なくらい自分をケアできていないか(第7章)? 十代の女の子は、親には理解できないようなことを当たり前のようにするので、手を出さずにいて大丈夫なのか、それとも口を出すべきなのか、判断する上で役立つでしょう。

 この本で紹介する発達分野は普遍的なもので、時代に関係なく、さまざまな背景を持つ女子、そして男子にも幅広く通用するものです。あなたもわたしもこの発達分野に沿って成長しましたが、現代はわたしたちの記憶にある子供時代とは大きく違い、二十四時間デジタル機器でつながり合っている、競争の厳しい、ハイスピードな環境で子育てをしなければなりません。ですから、いつの世代にも共通する十代の子供たちの諸相とともに、現代社会特有のティーンエイジャー(そしてその親)の生活についても取り上げます。

 基本的には、女子と男子は相違点より類似点のほうが多いのです。ですから、十代の男の子を知っている、育てた経験があるという方々も、この本に登場する話やアドバイスに覚えがあると思うかもしれませんが、それも当然でしょう。でも、十代の女の子特有の問題もあって、本書では、女の子を育てている親御さんが知っておいたほうがいい最先端の研究について詳しく解説します。ここで紹介する発達分野は子供の人種や経済状況に左右されませんし、そういう背景要因についても配慮するつもりです。つまり、子供の発達における内面的、精神的問題が話の中心になるということです。

本書の目的

 この本は、ああしろこうしろと指示するより、ケーススタディの描写に重点を置いています。娘さんをどう育てるか指導するのではなく、娘さんを理解する「新たな視点」を提供しようとしているのです。

 親として直面する、悩ましいけれどごく当たり前の問題に対してどう反応したらいいか、一貫して提案はしていますが、わたしのアドバイスにどうか縛られないでください。子育てに正解はないとわたしは思います。ある家族でうまくいったことが、別の家族にも通用するとは限りません。娘さんのこと、そして家族内の力学のことを、いちばんよく知っているのはあなたです。その知識とここでの提案をうまく合体させ、本書に登場するさまざまな例を利用して、娘さんのティーンエイジャーらしいふるまいについて、彼女がどう成長しようとしているのか(あるいはどう成長するべきか)考えてもらえたら嬉しく思います。

 思春期がどういう役割を果たすのか、その青写真を提供することで、娘さんへの理解を深め、あなたの心配を減らし、娘さんの思春期という旅を上手に支え、ティーンエイジャーがどれだけ幅広い分野で成長するのか認識してもらう(実際、驚くはずです)ことが、この本の目的です。

 娘さんの成長を見守るあなたが直面するすべての問題を網羅しているわけではなく、そもそもそれはとても不可能です。でも、女の子たちの行動や思考にはパターンがあり、そのパターンを知っておけば、ガイド役にとって役立つはずです。わたしは、女の子ってすごいなと日々感心し、同じようにその親御さんたちもすごいなといつも感心しています。ですから、みなさんが娘さんをより上手に支えるために、わたしがみなさんを支えることができればと思って、この本を書いたのです。

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