Effects of Habit and of the Use or Disuse of Parts; Correlated Variation; Inheritance. Changed habits produce an inherited effect as in the period of the flowering of plants when transported from one climate to another. With animals the increased use or disuse of parts has had a more marked influence; thus I find in the domestic duck that the bones of the wing weigh less and the bones of the leg more, in proportion to the whole skeleton, than do the same bones in the wild duck; and this change may be safely attributed to the domestic duck flying much less, and walking more, than its wild parents. The great and inherited development of the udders in cows and goats in countries where they are habitually milked, in comparison with these organs in other countries, is probably another instance of the effects of use. Not one of our domestic animals can be named which has not in some country drooping ears; and the view which has been suggested that the drooping is due to disuse of the muscles of the ear, from the animals being seldom much alarmed, seems probable.
習慣の変化は、ある気候から別の気候に移ったときの植物の開花時期のように、遺伝的な影響をもたらす。家禽のアヒルでは、野生のアヒルの同じ骨に比べて、骨格全体に占める翼の骨の重さが軽く、脚の骨の重さが重いことがわかる。この変化は、家禽のアヒルが野生の親アヒルよりも飛ぶことが少なく、歩くことが多いことに起因していると考えて差し支えないだろう。乳を搾る習慣のある国のウシやヤギの乳房が、他の国のウシやヤギの乳房に比べて大きく発達しているのも、おそらく使用による影響の一例であろう。私たちの家畜のうち、どこかの国で垂れ耳でなかったものを挙げることはできない。この垂れ耳は、家畜がめったに警戒しないために耳の筋肉が使われなくなったことが原因だという説があるが、その可能性は高いと思われる。
訳者注: アヒルはカモ科(Anatidae)のマガモ(Anas platyrhynchos)を原種とする家禽で、飼育が容易なことから世界中で飼育されています。主に卵や羽毛の採取や食肉のために品種改良されており、現代ではペットとして、また田んぼの雑草、害虫取りなどにも利用されています。科名、属名はラテン語でカモを意味するAnasが、種小名は古代ギリシャ語で幅広いを意味するπλατύς (platús)とくちばしを意味するῥύγχος (rhúnkhos)が由来です。
ウシはウシ科(Bovidae)ウシ属(Bos)の動物です。オーロックス(B. primigenius)(野生種としては1627年に最後の1頭がポーランドで死んで絶滅)というウシの原種を家畜化したもので、古代から多くの文明で飼育されてきました。家畜化の歴史が長く、各文明で様々に利用されてきたため神聖視されることもあり、多様な文化で牛にまつわる祭事や風習が残っています。科名、属名ともにラテン語で牛を意味するBosが由来です。家畜ウシの種小名は原種であるオーロックスと同じで種小名はラテン語で最初を意味するprimusと原種するを意味するgenusが由来です。二名法が普及したころには絶滅していた動物のため、バイソンや家畜ウシと混同され、学名が確定するまで紆余曲折がありました。
ヤギはウシ科ヤギ属(Capra)の動物の総称です。パサン(Capra aegagrus)を家畜化したもので、原種と同じく険しい地形と粗食でも飼育が可能で、肉、毛、乳を利用できるため世界中で飼育されてきました。種としてパサンと区別する場合はCapra hircusまたはパサンの亜種としてCapra aegagrus hircusイヌに次いで家畜化の歴史が長い動物であり、ヤギの乳からは最初のバターやチーズが発明されました。属名はラテン語でヤギを意味するCapraが由来です。パサンの種小名は古代ギリシャ語で野生のヤギを意味するαίγαγρος (aígagros)が、ヤギの種小名はラテン語でヤギを意味するhircusが由来です。(ラテン語のhircusはその語源がまだ良くわかっていません。)
Many laws regulate variation, some few of which can be dimly seen, and will hereafter be briefly discussed. I will here only allude to what may be called correlated variation. Important changes in the embryo or larva will probably entail changes in the mature animal. In monstrosities, the correlations between quite distinct parts are very curious; and many instances are given in Isidore Geoffroy St. Hilaire’s great work on this subject. Breeders believe that long limbs are almost always accompanied by an elongated head. Some instances of correlation are quite whimsical; thus cats which are entirely white and have blue eyes are generally deaf; but it has been lately stated by Mr. Tait that this is confined to the males. Colour and constitutional peculiarities go together, of which many remarkable cases could be given among animals and plants. From facts collected by Heusinger, it appears that white sheep and pigs are injured by certain plants, while dark-coloured individuals escape: Professor Wyman has recently communicated to me a good illustration of this fact; on asking some farmers in Virginia how it was that all their pigs were black, they informed him that the pigs ate the paint-root (Lachnanthes), which coloured their bones pink, and which caused the hoofs of all but the black varieties to drop off; and one of the “crackers” (i.e. Virginia squatters) added, “we select the black members of a litter for raising, as they alone have a good chance of living.” Hairless dogs have imperfect teeth; long-haired and coarse-haired animals are apt to have, as is asserted, long or many horns; pigeons with feathered feet have skin between their outer toes; pigeons with short beaks have small feet, and those with long beaks large feet. Hence if man goes on selecting, and thus augmenting, any peculiarity, he will almost certainly modify unintentionally other parts of the structure, owing to the mysterious laws of correlation.
多くの法則が変動を規制しているが、そのうちのいくつかがおぼろげながら見えてきた。ここでは相関変異と呼ばれるものについてのみ言及する。胚や幼生時における重要な変化は、おそらく成熟した動物における変化を伴う怪物では、まったく異なる部位間の相関関係が非常に興味深い;イジドール・ジェフロワ・サン・ティレールのこの問題に関する大著には、多くの例が挙げられている。繁殖家たちは、長い手足には必ずと言っていいほど細長い頭部が付随すると信じている。このような相関関係については、非常に気まぐれな例もある。例えば、真っ白で青い目をした猫は一般的に耳が聞こえない;しかしテイト氏は最近、これはオスに限られると述べている。色と体質の特異性は密接な関係にあり、動物や植物には多くの顕著な例がある。ホイジンガーが収集した事実によれば、白い羊や豚はある種の植物によって傷つけられるが、色の濃い個体はそれを免れるようだ:
ワイマン教授が最近、この事実の良い例を教えてくれた。ヴァージニア州のある農家に、どうして豚がみんな黒いのか尋ねたところ、豚がペンキの根(Lachnanthes)を食べて骨をピンク色に染めたのだと教えてくれた、また、「クラッカー」(ヴァージニアの不法占拠者)の一人は、「私たちは子牛の中から黒い子を選んで育てる。
毛のない犬は歯が不完全である。長毛の動物や粗毛の動物は、よく言われるように、長い角や多くの角を持ちがちである。羽のある足を持つハトは、足の指の外側の間に皮がある。くちばしの短いハトは足が小さく、くちばしの長いハトは足が大きい。
したがって、もし人間が何らかの特殊性を選択し、そうして増大させようとすれば、相関関係の不思議な法則によって、ほとんど確実に、構造の他の部分を意図せず修正することになる。
訳者注: 怪物(monstrosities)とは、文字通り醜悪で見るに堪えない、時に巨大なものを指す言葉です。生物学の文脈で使われた場合は、巨人症や体の一部の肥大、双頭や無毛、欠損などの奇形を指しています。語源はラテン語で怪物を意味するmonstrum、さらに古くは古代イタリックで警告を意味するmoneōが語源です。 イジドール・ジェフロワ・サン・ティレール(Isidore Geoffroy Saint-Hilaire)は、フランスの動物学者、解剖学者です。奇形の研究に多大な功績をあげ、その著作はダーウィンの進化論に強い影響を与えました。また動植物の順化(植民地に外来種を移入し、統治者に理想的な生態系を再構築すること)に強い興味を示し、1854年、パリ順化学会を設立、ナポレオン三世から寄付されたパリ郊外の公園で、動物の家畜化や有用植物の導入などの研究を行いました。のちに息子のアルベルト・ジェフロワ・サン・ティレール(Albert Geoffroy Saint-Hilaire)が公園の園長を引き継ぎ、進化論がゆがんで解釈された結果の一つである人間動物園などの展示が行われました。
(多分この人…でも時代的に違うかな)テイト(Robert Lawson Tait)はイギリスの医師です。特に事前に手術器具を消毒しておくことを徹底した無菌手術を重視し、死亡率を大幅に低下させるかずかず技法を導入したこと、また腹腔内卵巣摘出術の導入に成功し、彼以降多くの女性の命を救ったことで骨盤および腹部外科のパイオニアとされます。
ホイジンガー(Karl Friedrich Heusinger)はドイツの病理学者です。比較病理学、地理的疾病分類額の創始者とされ、ダーウィンと書簡をやり取りして交流をしました。
ワイマン(Jeffries Wyman) はアメリカの博物学者、解剖学者です。ロンドンでリチャード・オーウェンに師事し、イジドール・ジェフロワ・サン・ティレール、アシル・ヴァランシエンヌ(魚類学者、キュビエの弟子)、再現説を定式化したエティエンヌ・セールらに教授を受けました。ゴリラについて初めて科学的に記述し、オーウェンの弟子ではありますが、ダーウィンとの文通を通じて進化論に賛成の姿勢を表明しました。
The results of the various, unknown, or but dimly understood laws of variation are infinitely complex and diversified. It is well worth while carefully to study the several treatises on some of our old cultivated plants, as on the hyacinth, potato, even the dahlia, &c.; and it is really surprising to note the endless points of structure and constitution in which the varieties and sub-varieties differ slightly from each other. The whole organisation seems to have become plastic, and departs in a slight degree from that of the parental type.
様々な、未知の、あるいはおぼろげにしか理解されていない変異の法則の結果は、限りなく複雑で多様である。ヒヤシンス、ジャガイモ、ダリアなど、古くから栽培されている植物に関するいくつかの論文を注意深く研究する価値は十分にある;そして、品種や亜品種が互いに微妙に異なっている構造や性質の限りない点に注目することは、本当に驚くべきことだ。組織全体が可塑的で、親の型からわずかに逸脱しているのである。
訳者注: ヒヤシンス(Hyacinthus orientalis)はキジカクシ科(Asparagaceae)ヒヤシンス属の植物です。球根性の多年草で、様々な色の花が観賞用に栽培されています。イラン地域が原産とされ、オスマン帝国で栽培が始められ、16世紀にヨーロッパにもたらされました。ダーウィンの時代は栽培が始まって200年ほどとなります。科名はラテン語で同科の植物を表すasparagusが、属名は古代ギリシャ語で暗赤色、紫色を意味するὑάκινθος(huákinthos)からと考えられています。種小名はラテン語で昇る、表れるを意味する orior が由来です。
ジャガイモ(Solanum tuberosum)は南米アンデス山脈由来のナス科(Solanaceae)ナス属の植物です。塊根を食用にし、世界中で栽培されています。リンネが初めて学名を付けた植物の一つで、ダーウィンの時代はヨーロッパの寒冷地域で主食とされるようになっていました。現代では5000を超える品種があると言われます。科名はラテン語で同科の植物を表すSolanumから、さらに古くはその花の形から太陽を意味するSolとの関連が示唆されています。種小名はラテン語でこぶ、腫れものなどを意味するTuburが由来です。
ダリアはキク科(Asteraceae)ダリア属(Dahlia)に属する植物です。バラやチューリップと並んで、最も花色が豊富な園芸植物の一つで、世界中で品種改良がおこなわれています。科名はラテン語で星を表すaster 、さらに古くは古代ギリシャ語で星を表すἀστήρ (astḗr)が由来です。属名はリンネの弟子アンデシュ・ダール (Anders Dahl) にちなんで名づけられました。
Any variation which is not inherited is unimportant for us. But the number and diversity of inheritable deviations of structure, both those of slight and those of considerable physiological importance, are endless. Dr. Prosper Lucas’ treatise, in two large volumes, is the fullest and the best on this subject. No breeder doubts how strong is the tendency to inheritance; that like produces like is his fundamental belief: doubts have been thrown on this principle only by theoretical writers. When any deviation of structure often appears, and we see it in the father and child, we cannot tell whether it may not be due to the same cause having acted on both; but when among individuals, apparently exposed to the same conditions, any very rare deviation, due to some extraordinary combination of circumstances, appears in the parent—say, once among several million individuals—and it reappears in the child, the mere doctrine of chances almost compels us to attribute its reappearance to inheritance. Every one must have heard of cases of albinism, prickly skin, hairy bodies, &c., appearing in several members of the same family. If strange and rare deviations of structure are truly inherited, less strange and commoner deviations may be freely admitted to be inheritable. Perhaps the correct way of viewing the whole subject would be, to look at the inheritance of every character whatever as the rule, and non-inheritance as the anomaly.
遺伝しない変異は私たちにとって重要ではない。しかし、わずかなものから生理学的にかなり重要なものまで、遺伝する構造の逸脱の数と多様性は無限である。プロスペル・リュカ博士の論文は2巻からなる大著で、このテーマに関する最も充実した最良のものである。遺伝の傾向がいかに強いかを疑う育種家はいない;同類は同類を生むというのが、育種家の基本的な信念である。この原則に疑問を投げかけるのは、理論的な作家だけである。構造の逸脱が頻繁に現れ、それが親と子で見られる場合、同じ原因が両方に影響している可能性があるかどうかは不明である。しかし、同じ状況にさらされているように見える個体の中で、非常にまれな逸脱が親で現れ(例えば、数百万の個体の中で一度)、それが子で再び現れる場合、単なる偶然の法則からすると、その再現は遺伝に起因するとほぼ言わざるを得ないだろう。アルビニズム、敏感肌、毛深い体などが、同じ家系の複数の家族に現れる例は、誰もが耳にしたことがあるはずだ。奇妙でまれな構造の逸脱が本当に遺伝するのであれば、それほど奇妙でない、ありふれた逸脱も遺伝する可能性がある。おそらく、この問題全体を見る正しい方法は、どのような性質であれ遺伝するのが原則であり、遺伝しないのが異常であると見ることであろう。
訳者注: プロスペル・リュカ(Prosper Lucas)はフランスの医師、遺伝学者です。ダーウィンが絶賛したと言われる『Traité philosophique et physiologique de l'hérédité naturelle dans les états de santé et de maladie du système nerveux, avec l'application méthodique des lois de la procréation au traitement général des affections dont elle est le principe.(神経系の健康と病気の状態における自然な遺伝に関する哲学的かつ生理学的論文:繁殖の法則を体系的に適用し、それが原則である疾患の一般的な治療に対する方法論的なアプローチ』という書物を記しました。
アルビニズム(albinism)とはアルビノとも呼ばれ、メラニン色素を作る酵素の欠損や異常によって起きる先天性の疾患です。先天性白化症候群とも呼ばれメラニン色素に関する遺伝子の変異が原因なのですが、生まれてきた個体は文化的に様々な文脈で語られることがあります。個体群として有名なのはシロウサギ(アナウサギのアルビノ)やウーパールーパーです。
The laws governing inheritance are for the most part unknown; no one can say why the same peculiarity in different individuals of the same species, or in different species, is sometimes inherited and sometimes not so; why the child often reverts in certain characteristics to its grandfather or grandmother or more remote ancestor; why a peculiarity is often transmitted from one sex to both sexes, or to one sex alone, more commonly but not exclusively to the like sex. It is a fact of some importance to us, that peculiarities appearing in the males of our domestic breeds are often transmitted, either exclusively or in a much greater degree, to the males alone. A much more important rule, which I think may be trusted, is that, at whatever period of life a peculiarity first appears, it tends to reappear in the offspring at a corresponding age, though sometimes earlier. In many cases this could not be otherwise; thus the inherited peculiarities in the horns of cattle could appear only in the offspring when nearly mature; peculiarities in the silk-worm are known to appear at the corresponding caterpillar or cocoon stage. But hereditary diseases and some other facts make me believe that the rule has a wider extension, and that, when there is no apparent reason why a peculiarity should appear at any particular age, yet that it does tend to appear in the offspring at the same period at which it first appeared in the parent. I believe this rule to be of the highest importance in explaining the laws of embryology. These remarks are of course confined to the first appearance of the peculiarity, and not to the primary cause which may have acted on the ovules or on the male element; in nearly the same manner as the increased length of the horns in the offspring from a short-horned cow by a long-horned bull, though appearing late in life, is clearly due to the male element.
遺伝を支配する法則の大部分は不明である。同じ種の異なる個体、あるいは異なる種の異なる個体において、同じ特質が遺伝するときとしないときがあるのはなぜなのか?子供がある特質において祖父や祖母、あるいはもっと遠い祖先に戻ることが多いのはなぜなのか?ある特質がしばしば一方の性から両方の性に、あるいは一方の性だけに、より一般的ではあるが同じ性だけに遺伝するのはなぜなのか?誰にもわからない。家畜の雄に現れる特異性が、しばしば雄だけに伝わるか、あるいは雄だけに大きく伝わるということは、我々にとって重要な事実である。もっと重要な法則は、どのような時期であれ、ある特徴が最初に現れると、それに対応する年齢で、場合によってはそれよりも早く、子孫に再び現れる傾向があるということである。多くの場合は、これ以外の方法はあり得なかったであろう。したがって、ウシの角の遺伝的特異性は、子孫がほぼ成熟した段階でのみ現れる可能性があり、また、カイコの特異性は、対応する幼虫や繭の段階で現れることが知られている。しかし、遺伝性疾患やその他のいくつかの事実から、この法則はもっと広い範囲に及ぶと私は考えている。ある特殊性が特定の年齢で現れる明白な理由がない場合でも、その特殊性は親に最初に現れたのと同じ時期に子孫に現れる傾向がある。私はこの法則が発生学の法則を説明する上で最も重要であると考えている。これらの注目すべき事実は、もちろん、特異性が初めて現れる際に限定されており、それが卵子や雄性要素に作用した可能性には触れていない。だが、ほぼ同じように、短い角を持つ雌牛と長い角を持つ雄牛から生まれた子牛で長い角をもつものの角の長さは成熟してから見られるが、これは明らかに雄性要素に起因している。
訳者注: 遺伝とは、先祖の形質が生殖によって子孫に伝わる生命現象です。英語ではheredityといい、ラテン語で後継者を意味するhēresから派生したhērēditas、(後継者たる条件)という語に由来します。ダーウィン自身はパンゲネシスという獲得形質が生殖細胞に集約されて遺伝するという説を提唱し、ラマルクの用不用説を説明しようとしました。これはのちにダーウィンの従兄弟であるフランシス・ダルトンの実験によって否定されました。
Having alluded to the subject of reversion, I may here refer to a statement often made by naturalists—namely, that our domestic varieties, when run wild, gradually but invariably revert in character to their aboriginal stocks. Hence it has been argued that no deductions can be drawn from domestic races to species in a state of nature. I have in vain endeavoured to discover on what decisive facts the above statement has so often and so boldly been made. There would be great difficulty in proving its truth: we may safely conclude that very many of the most strongly marked domestic varieties could not possibly live in a wild state. In many cases we do not know what the aboriginal stock was, and so could not tell whether or not nearly perfect reversion had ensued. It would be necessary, in order to prevent the effects of intercrossing, that only a single variety should be turned loose in its new home. Nevertheless, as our varieties certainly do occasionally revert in some of their characters to ancestral forms, it seems to me not improbable that if we could succeed in naturalising, or were to cultivate, during many generations, the several races, for instance, of the cabbage, in very poor soil—in which case, however, some effect would have to be attributed to the definite action of the poor soil—that they would, to a large extent, or even wholly, revert to the wild aboriginal stock. Whether or not the experiment would succeed is not of great importance for our line of argument; for by the experiment itself the conditions of life are changed. If it could be shown that our domestic varieties manifested a strong tendency to reversion—that is, to lose their acquired characters, while kept under the same conditions and while kept in a considerable body, so that free intercrossing might check, by blending together, any slight deviations in their structure, in such case, I grant that we could deduce nothing from domestic varieties in regard to species. But there is not a shadow of evidence in favour of this view: to assert that we could not breed our cart and race-horses, long and short-horned cattle, and poultry of various breeds, and esculent vegetables, for an unlimited number of generations, would be opposed to all experience.
先祖返りの話題に関しては、自然主義者たちがよく述べる一つの主張に言及することができる。すなわち、家畜品種は野生化すると、徐々にだが確実にその特性を元の野生の祖先の特性に戻してしまうというものである。それゆえ、栽培品種から野生種を推定することはできないと主張されてきた。私は上記のような主張が、どのような決定的な事実に基づいて、これほど頻繁に、そしてこれほど大胆になされているのか探してみたが無駄であった。その真偽を証明するのは至難の業である。ただ、最も明確な特徴を持つ家畜品種の多くは、野生状態で生息することはあり得ないと結論づけて差し支えないだろう。多くの場合、原種が何であったかわからないため、ほぼ完全な回帰が起こったかどうかもわからない。交雑の影響を防ぐためには、単一の品種だけを新しい土地に放す必要がある。とはいえ、われわれの品種が時折先祖返りするのは確かなので、例えばキャベツのいくつかの品種を、非常に痩せた土地に帰化させるか、何世代にもわたって栽培することに成功すれば、可能性は低くないように思われる。
しかし、その場合の何らかの効果は、貧しい土壌に決定的な作用で、それに帰する必要がある。その場合、キャベツはかなりの程度、あるいは完全に原種に戻るだろう。この実験が成功するかどうかは、われわれの論旨にとってさほど重要ではない。というのも、実験そのものによって生活条件が変わるからである。そのような場合、自由な交配によって、品種が混じり合うことで、その構造のわずかな逸脱を抑えることができるかもしれない。馬車馬や競走馬、長角牛や短角牛、さまざまな品種の家禽、葉物野菜などを、無制限に何世代にもわたって繁殖させることはできないと断言するのは、あらゆる経験に反するだろう。
訳者注: 先祖返り(reversion)とは何世代も前の先祖の形質が子孫に突然現れることです。ダーウィンの時代の遺伝学は現代ほど進んでいなかったため隔世遺伝(atavism)という言葉は使われていませんが、同じような現象を指しています。 キャベツ(Brassica oleracea var. capitata)はアブラナ科(Brassicaceae)アブラナ属ヤセイカンランの変種で、食用の葉野菜です。紀元前古代ギリシャ時代にはすでに栽培され食用とされており、ケール、カリフラワー、カイラン、メキャベツ、コールラビ、ブロッコリーなどはすべて同じ原種から改良された品種です。科名と属名はラテン語でキャベツを意味するBrassicaが、種小名はラテン語で野菜を意味するholusが、変種名はラテン語で頭があることを意味するcapitatusが由来です。英語のCabbageは古フランス語で頭でっかちを意味するcabocheが由来で、さらに古くはヴァルガー・ラテン語でこぶを意味するbottia、フランク語でつまみを意味するboceなどの語に別称のca-がついた形が語源とされます。またラテン語で頭を意味するcaputとも関係があるとされています。
馬車馬とは主に馬車を引くために品種改良されたウマの品種で、従順で力が強く、物を牽引する能力に優れます。馬車以外にも農用、軍用などに利用され、有名な品種としてペルシュロンやブルトンがあります。競走馬とは文字通り競馬に用いるために品種改良されたウマの品種で、長距離を高速で疾走することができるように改良されています。ほとんどがアラブ種と呼ばれる中東由来のウマが基になっており、有名な品種としてサラブレット、トラケナーがあります。これらの中間で良いとこどりをしたアメリカンクォーターホースなどの品種もあります。
●ダーウィンの時代、遺伝に対する研究はまだ発展途上で、現代の常識とは異なる学説や主張が多くありました。ダーウィンの遺伝に対する認識は今からすればもちろん間違っているのですが、間違っているなりに当時広く知られていた事実に適合するような仮説を立てています。
次回は”Character of Domestic Varieties; difficulty of distinguishing between Varieties and Species; origin of Domestic Varieties from one or more Species.”です。お楽しみに。