見出し画像

なぜフィギュアスケートは若年層が強いのか

なぜフィギュアスケートや、フィギュアスケートほどではないものの体操などのアクロバティックな競技で若年層が活躍するでしょうか。私の仮説では身体が小さくて華奢な方が回転半径が小さく、早く回転でき、空中でより多く回転できるからだと考えています。例えばスペースがある場所でクルクル回る椅子の上で両腕を大きく広げて伸ばした状態で回転し、そこから急に腕を体に近づけて抱き抱えると回転が早くなります。伸ばせばまた遅くなります。このメカニズムを使い演技系の選手たちは回転の速度をコントロールしています。そしてこの回転半径の限界は骨格によって決められてしまう為に、華奢な選手の方がより早く回転できます。

ですから回転できた方が得点が出るフィギュアスケートなどでは、身体が未成熟で第二次性徴が完全に終わり切る前の段階の選手たちが強いのではないかというのが私の仮説です。もし私がコーチで選手たちの人生を全く気にせず金メダル獲得のみを使命とするならば、早い段階で競技をはじめさせて、第二次性徴が顕著になる手前の段階(15-17歳)でピークを迎えさせる戦略を取ります。そのぐらいの年齢が線が細いながら筋肉もそれなりに出来ていて、柔軟性も出やすいからです。

一方で若い時にできた技術は、年齢を重ね骨盤が大きくなり肩幅が広くなったタイミングで成功させることが難しくなるでしょう。回転半径が大きくなるからです。特に女性は体がふくよかになり大きく変化するのでその傾向が顕著なのではないかと予想します。その場合は、成長した骨格に合った技術がまた必要になりますが、もし若い時の骨格に動きが最適化されすぎていると、その変化が難しくなります。

人生の早い時期の骨格や条件に最適化した結果、違う条件下になった時うまくいかなくなる現象を早すぎる最適化と私は呼んでいます。例えば子供の体は大人の骨格の小さい版ではなく、バランスもまた変化しています。頭は大人より大きく胴体は細いです。バランスが違うので理想とする走りもまた実は違います。にもかかわらず子供の時に大人と同じような動きをして速く走っている選手は、大人になり身体のバランスが変わってくるタイミングで過去に覚えた走りのバランスがうまく合わなくなり競技力が低下します。その競技で最も高いパフォーマンスを出すということは、言い換えればその競技の条件に最適化するということです。そして条件の中には自分自身の身体も含まれます。

この最適化問題は「移りゆく環境の中で一体いつのどの環境に最適化し、そうではない時にはどの程度余白を残しておくのが最終的に最も良いのか」という大きな問いを抱えています。余白を残し過ぎれば適応が甘くなり競技力は向上しない。一方最適化しすぎると変化に適応できない。最適な余白は時期によっても違いピークのタイミングによっても違います。

若い時に複数競技を経験した方がいい理由はこの早すぎる最適化を避ける為です。いくつかの競技では競技特性上若い時にピークを迎えざるを得ないものもありますが、多くの競技では長くやった方が競技力が高まるので最適化されすぎない形で競技に適応するのが良いからだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?