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永遠の推し、舞台に立つ【イブステ】

藤村衛は、ツキプロ所属のGrowthのメンバー兼作曲家である。

孤児院で育ち、就職先が倒産して路頭に迷っていた元ニートで、音楽の才能を買われ、当時17歳のメンバー達と組んだグループが成功を収め、今に至る…という情報量の塊みたいなゆるふわニート青年である。

筆者の中学生の頃からの推しであり、今年で7年ほどの付き合いになるが、生涯の推し、と言えるほどに思い入れのあるキャラクターである。

初見はアニメ、その後購入していたCDの中で息をしていた彼は、いつしか舞台にあらわれ、生身の体を手にして、そのままの姿でそこにいた。

舞台に立って、息をしていた。



数年前、初めて購入したBlu-rayの中で息をする藤村衛を見たとき、舞台上のどこを切り取っても二次元そのもの…というか、あまりにも存在が自然すぎて驚いた。

まず、ビジュアルが原作に近すぎる。
初期の私服ビジュアルを参照すると、衛はゆったりした服を着ていてもわかるくらいに体の厚みがなく、首や手も筋張っていて肉感が薄い。


公式サイト、初期の私服。1幕で使用。


1幕から引用。

1枚目のイラストがデザインされたころ、衛は二十歳のホームレスという設定だったため、意図的に肉感薄めに描かれていたのだろうと思われるが、あまりにも再現度が高すぎる。骨格からすでに藤村衛である。


このようにビジュアルも勿論のこと、岩佐さんによる衛の解像度の高さにも驚かされる。

Growthの中では最年長でありながら、子どもっぽく無邪気。かつお調子者でありながら孤独な生い立ちをもつ、という衛の複雑な二面性を、オンオフで分けるのではなく、その場に適した方にライトを当て、特徴を際立たせることで、本来のギャップを引き立たせている。

舞台ではキャラクターを演じながら、客席からの視線の中で動く必要があり、特に衛はアドリブも多く日替わりパートで客席と絡むこともあるため、求められるハードルが高いキャラクターだと思う。

しかし、舞台上の彼は、表情、体の使い方から所作まで、どこまでも藤村衛らしさに溢れていて、頭からつま先まで藤村衛として存在していた。

例えば客席への手の振り方ひとつ取っても、両手を高く、幅広ーく上げて、手のひらを内側から外に向けて、手のひらに力を入れずぶんぶん振る様子は、アイドルらしからぬ無邪気さがあり、芸能生活の長い他のメンバーの余裕のある態度とは対照的で、より彼の魅力が引き立っていた。

また、原作に近い母音の目立つ柔らかい話し方や、笑ったときの眉の下がり方、歯を見せたはにかむような笑顔、そして何よりダンス中の、自身の生み出した楽曲とメンバーへの思いが溢れて溺れそうな、「作曲者かつ表現者としての藤村衛」の表情として文句の付けようがない。


Growthの楽曲は変わり種の多いツキプロの楽曲の中でも独特で、アイドルソングらしからぬテーマ、変わった楽器を使うことに加え、歌詞もストーリー性に富み、よく異国風、異世界風と評される。

踊るのも難しい楽曲が多い中、衛らしさも彼の作る音楽の世界感も、メンバーとの関係性も表現されていた。
何より、Growthはアイドルである以上に、表現者でありアーティストであって、アイドルっぽいキラキラした王子様のような衣装を着ていても、その根幹がズレていない感じがとても良かった。

どこまでも原作をリスペクトした岩佐さんの演技は、本物の「藤村衛」を二次元から連れてきてくれたようで、いちファンとしてとても嬉しかった。

来年、藤村衛はついに30歳を迎える。

初登場時から10年。20歳だった彼は舞台でも年を重ねて、回を追うごとに素敵なキャラクターになっていく。いつしか彼がお兄さんではなく、おじさんを自称するようになったりするのだろうか。

これからの舞台で、彼がどんな風に年をとるのか、素敵なおじさんになるまで、いつまでも見守っていたい、と思った。



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