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仮面浪人時代の追憶(その6)

センター試験に向けては地学をやったくらいだった。
地学は一浪でも生半可な知識しかなかった。当時のセンター地学はそれでもなんとかなったのだが、一応対策はした。

いよいよセンター試験当日。眠気が強い中、農工大に向かう。前日に下見に行き、迷うことはない。獣医学部があるのでキャンパスは広い。A先輩とM君は和歌山でセンター試験を受けるそうだ。緊張感が高まってくる。
率直に言って、あまり印象がない。
センター試験も受験は三回目になり、そこまでの緊張感がなくなってきたのだろうか。出来はよくはなかったが、一応終わった。

自己採点をする。これも記憶があやふやだ。良かったのは国語と地学。国語は平均点が101点にも関わらず151点も取れた。自己採点報告を担任にすると、「佐藤凄いな。東大A判定のものでも国語はそんなに取れてないぞ」と言われた(いや、僕も文IIならA判定だが、とは少し思った)。緊張なくやれたからだろうか。地学は85点。それなりと言ったところだ。一方で、前年度高得点だった英数世などは得点率が落ちていた記憶がある。当時はセンター試験の開示もなく不確かだが、640/800前後という記憶がある。

出願には迷ってしまった。東大後期に出せる得点ではない。前期東大だけになるが、文Iに出すか文IIに出すか。決めかねた私は駿台池袋校がやっている出願相談に足を運ぶことになった。訪問すると、ベテランの職員の方が対応してくださった。「君は大阪校出身か。担任はAね。私のかつての部下だね。報告しておく」という前置きがあり、成績表を見せる。「駿台全国は受けていないのかい?」と聞かれ、「全国は受けていません」と答えた。(余談だが、駿台で出願相談をする際は大学別模試以外に駿台全国も受けると良いかもしれない)そうすると、「センター試験が悪かったんだね。大学生の生活というものの生活習慣がセンター試験の失敗に繋がったのかもしれない。合格率は東大模試判定から10%引きで文Iなら50%、文IIなら70%というところだろう。ところで君は法学部ということだが、法曹になりたいのか、東大に行きたいのか、どちらだい?話を聞いていると、東大に行きたいように思えるが」
とこちらの考えを読み切ったアドバイスが来る。
「法曹にもなりたいですが、東大にも行きたいです」
というのが正直な私の返答だった。
「法曹になりたいなら、皆文Iに落ちたら中央法でも進学している。法曹になりたいなら文I前期だろう。だが、東大に行きたいなら文IIだろう。ところで君は京大経済論文方式には興味はないか?これなら仮面浪人生ならほぼ確実に合格できる」と言われた。「文Iか文IIか家に帰って検討します。京大は東京にいたいので検討していません。ありがとうございました」と答えた。

寮に戻りかなり考えた。奈良学園から政経のY君には、「センター試験ミスったんなら文IIしかないやろ」と言われた。高校生徒会長のT君には「文IIええぞ。東大で待ってる」と言われた。一方で、仮面仲間のM君には、「文Iにしろよ。佐藤なら文IIに受かったところで、文Iに出していればと思うだろう」と言われた。また、父には、「大輔は東大法学部に入りたいと言って、進学校受験からの大学受験をしているのではないのか。文I前期に全てを賭けろ」と言われた。散々迷ったが、育ての親である父の意見を聞いた。
出願は東京大学文科I類一本に絞った。

そういえば、使用参考書などを書いていなかった気がする。
仮面時に使った参考書で気になったものを挙げたい。
英語…英頻(桐原)、新英頻(駿台)、英文解釈要約精構、ビジュアル英文解釈、英文和訳演習、Z会の英作文参考書、コペルニクス英作文、Z会通信添削EJ、速読英単語必修編、上級編、英語で読む(Z会)etc.
数学…鉄則、一対一対応の演習
国語…Z会LJ、現代文SOS、出口の現代文、現代文用語集、古文解釈の方法、マドンナ古文、土屋の古文、土屋の古文単語、マドンナ古文単語、漢文早覚え学習法、漢文句法本etc.
日本史…試験に出る日本史、日本史講義(時代の特徴と展開)、Z会JJ
世界史…教科書、河合塾論述問題集、駿台のテキスト、Z会WJ
と言った形だ。
やはり苦手の数学はそれほど問題集をこなせていないのに気付かされる。「スタ演」までこなせれば合否も違ったのかもしれない。英語はやりこんでいる。併願で早稲田法を取れるくらいなら当然というところだろうか。

受験のストレスが大きかった。
高校のクラスメイトの早稲田法のIさんにストレスが厳しく電話をする。
「もう直前期だから早く寝たほうがいいんじゃないかな。生活リズムを整えるのも大事」と言われた。最もなアドバイスだ。みんな自分のことを考えていてくれたんだなと思う。

受験直前期に父から電話がある。「大輔、お前の合格を祈願してお百度参りをしてきたぞ。また、国会議員の谷本龍哉さんからネクタイと激励文を送ってもらった。お前の中高の先輩だ(注、公立中、高校とどちらも同じ学校)。気合を入れろ」とのとだった。衆議院議員の代議士である高校の先輩からの手紙。手紙が届くと、気合の入った筆書きで激励文が書いてあった。内容は失念してしまったが、田舎で代議士というのは絶大な力がある。気合が入るというのもあるが、プレッシャーをすごく感じてしまった。父のお百度参りというものにも圧を感じた。受ける前から勝負は決していたのかもしれない。

受験前日にまた駒場東大前の今はなき喫茶店ZIZIに行く。また、ここに来た。今年こそはなんとか合格をと祈ったのであった。

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