給湯器ラプソディー

歳月はあっという間に過ぎ去ってしまう。
つい先日、買い換えたばかりだと思っていた風呂の給湯器も、気がつけば十三年という歳月が流れていた。その間には祖母と祖父を見送り、コロナ禍を余儀なくされたそんな十三年だったが、今はそんな感慨に浸っている場合ではない。
先日、給湯器のメーカーの方に年に一度の点検に来て頂いたのだが、もうそろそろ寿命だと買い替えを勧められた。昨年まで我が家を担当してくれていた青年は、生憎、昨年のうちから「来年、異動になるかもしれません」と、私たち家族に話していた。
何でも気軽に話せる気のいい青年だっただけに、寂しくなるなと思っていたのだが、今日、私たち家族は彼の誠実さというものをしみじみと思い知らされることになる。
新しく点検にやって来た人はおじさんで、人の好い顔をして笑顔を振り撒きながらも、手を動かさない代わりに口喧しくて、何だか胡散臭そうで私は好きになれなかった。

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