夜中のひまわり
真夜中のひまわりは、昼のその顔とはまた別で、全然違う花みたいである。
昼は太陽に照らされて、どことなく健康的なイメージであるが、夜中のひまわりは闇に包まれて、月の光にでも照らされない限り、その姿を表すこともない。
それは、人にも同じようなことが言えるように思う。昼は世間向けの人のいい顔をして、夜は孤独と向き合うそんな自分の姿と、どことなく重なる私である。
以前、掲載したエッセイの中でも書いたのだが、私はひまわりの甘い匂いが何とも言えず大好きである。
しかし、やはり人間の嗅覚というものも真夜中の、真っ暗な中でのひまわりの匂いを嗅ぐと、昼とはまた違ったような、もっと濃い匂いがするような気がするから、全くもって不思議である。
これは、人の持っている視覚や嗅覚というものの単なる錯覚なだけなのかもしれないが、その不思議に気がつかないで暮らしてしまうよりは、気がついて暮らす方が断然楽しい人生だと思う。
毎年のことながら、私はひまわりの水が乾いていないか、チェックをするために庭に出るのだが、このひまわりの匂いを嗅ぐ作業というものが、酷く幸せなひと時なのである。
蚊に刺されるのは仕方がないにしても、ひまわりに会えるのは今だけだと思うと、私は何だかどうしようもなく、このひまわりが愛おしくて堪らなくなるのである。
来年があるかなんて誰にも分からないから、今年も咲いてくれたかわいいひまわりに、軽く接吻をして、私は部屋へと戻るのである。
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