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真夜中の電話

毎年、ついうっかりしていると忘れてしまうのが、着物の虫干しである。

今年もまた、着物には済まないのだが、引き出しから出して思い切り気の済むまで、娑婆の空気を吸わせてやれなかった。

私が所有している着物は、そんなに多くはないのだが、ちょっと上げてみても大島とウールのアンサンブル、米沢紬の長着、正絹の羽織、化繊の袴とざっとこんなものだが、そんなに多くはないが、祖母の形見の着物や洗い張りに出した時にほどいたままの銘仙の生地と、たったこれだけの枚数だが、油断をするといつも忘れてしまい、虫食いやカビの心配をして、私は毎年の如く青ざめているのだった。

昨夜、珍しく寝入り端をくじかれた。

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