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TuringのCOOになった僕が最初の半年で考えたこと、やったこと

みなさんこんにちは。"We Overtake Tesla"を合言葉に「完全自動運転EV」の量産メーカーになることを目指すTuringで今年の1月からCOOをやっている田中です。

Turingの取締役COOに就任してから、早いものでもう半年が経ちました。正直体感値としてはもう2年くらい働いている感覚なのですが、まあそれくらい濃密な時間を過ごせているということでしょう。
年始と今を比べると、社員数も爆増、事業や開発も爆速で進捗し、各種メディアからも非常に沢山取り上げていただき、自分の会社ながらそのスピード感に率直に驚いています。半年間。ちょっとした区切りでもありますし、僕が今まで考えたこと、やったことを簡単に振り返ってみたいと思います。個人的な備忘録という意味もありますが、そもそも「スタートアップのCOOになったばかりの人ってどんなことを考えて、何をやってるの?」というN=1のケーススタディとしても是非お気軽にお読みいただければと思います。

Turingに入る前に経営陣ですり合わせた僕の役割

そもそも僕は取締役COOということでTuringの経営陣に加わることになっていたわけなんですが、僕が入る前のTuringのボードメンバーはCEOの山本一成とCTOの青木俊介しかいなくて、二人の役割分担は基本的に山本さんは「自分が得意なこと」と「興味があること」しかやらないので(良い意味で言ってるよ!ディスってないからね!)、「会社としてやらなければいけないこと」だけど「山本さんが興味ないこと」については「CTOの仕事かどうか」は一切関係なく、青木さんが持ち前の運動量で拾っている、という状態でした。
そんな状態だったので僕がTuringに正式に入る前に三人で僕の役割について話をした際には「開発に関わること」と「山本さんが興味あること」以外で「Turingが成功するために必要なこと」は全部田中が拾いにいく、というフワッとした合意の元に僕のTuring COO生活はスタートすることになります。

自分の中で秘めていた三つのテーマ

上記の話とは別に、実は入社前から自分なりにTuringのCOOをやるにあたって大事にしたいと思っていたポイントが3つあります。これ、そう言えば社内のメンバー含めあんまり明言していなかった気もするんですが、良い機会なので共有しておきます。

①山本一成という才能を常に正しい場所にぶつけ続けること

Turingという会社は「完全自動運転の実現」と「EVの量産メーカーになる」という2つの高い山に登ることを決めていて、さらに「We Overtake Tesla」と宣言しちゃっているような会社です。この会社が大成功するためには、数多くの奇跡を起こす必要があります。奇跡を起こすためには何をすべきか?もちろん色々とやるべきことはあります。ただ、僕はこれを究極に単純化すると「Turingという会社は、山本一成という天才、かつ天性の勝負師、かつ究極的な負けず嫌い人間が正しい事柄に向かって元気いっぱい勝負出来ている限り、絶対に上手くいく」という風にとらえています。「山本一成という才能を常に正しい場所にぶつけ続ける」これこそがTuringの勝ち筋だな、と。ただ、山本さん、放っておくとわけのわからない所で勝負して来て勝手に負けてきたりするし、出力が日によってめちゃくちゃぶれたりするので、経営陣としての、COOとしての僕の重要な仕事には「山本さん!君の頑張りどころはそこじゃないよ!そこは俺がやっとくからこっちこっち!」と言って山本一成が勝負をかける方向を整えてみたり「あれ?今日どうした?元気なくない?大丈夫だよ!山本さん最高だから!元気だして!」と元気づけて山本さんの出力を上げたりすることになるんだろうな、と思っていました。

②Turingの応援団を作ること

Turingという会社は、常識的に考えたら上手くいかなそうな理由が無限に思いつくような領域で、一筋の光に賭けて全力でフルスイングするようなスタイルの会社です。非常に困難な領域で頑張るこの会社が上手くいくためには、本当に沢山の人たちから助けてもらう必要があります。直接的に、社員として一緒に働くとか、お金を出してもらうとか、製品を買ってもらう、とかそういう形で助けてもらう人の数を増やすというのはもちろんなのですが、そういう直接的な関わりだけでなく「なんとなくTuringのこと気になるな」とか「あいつら、なんか頑張ってるみたいから応援したいな」とか「Turingの人達によくしてもらったから、何かで恩返ししてあげたいな」といったことをうっすらと感じているような間接的な関わりも含めた「Turing応援団」を作り上げること。そのためにTuringのことを多くの人に発信すること、色々な人を会社に連れてくること、色々な所に顔を出してTuringのことを話すこと、自分達ができるGiveを周囲にしまること。そういう活動をとにかく大事にしようと考えていました。

③「能力総動員」すること

村上龍が「すべての男は消耗品である。」というエッセイの中で「能力総動員」という言葉を使っていて、これ、結構昔から好きな言葉だったんですよね。

(死語となってしまった「男のロマン」にかわる)
何か新しい言葉が必要だ。
能力総動員、とでも言おうか。
例えば、F1のレースなどは、能力総動員の典型だ。
自分の限界に目標を定めて、能力を総動員し、優劣を争う。
これが(失ってはいけない)男(のロマン)なのだ。

村上龍「すべての男は消耗品である。〈Vol.2〉 (角川文庫)」

これ、つまりは、スキルだけじゃなくて、経験や人脈や知識やお金…と自分の人生で獲得したあらゆる「使える物」を全部出しきって頑張る、みたいな意味なのですが、僕はTuringのCOOとしてまさにそういう働き方をしようと決めていました。もちろん今までの仕事は全て人生をかけて頑張ってきたことに変わりはないのですが、僕は今年39歳でTuringは5社目。仕事人としてはあらゆる意味で「脂が乗っている」タイミングだと思うので、とにかく今まで自分が築き上げたもの全てを総動員してTuringというチャレンジにぶつけよう、そんな風に決めていました。

僕がTuringに入って半年間で実際にやったこと

と、そんな風に自分なりの決意を固めてTuringのCOOとしての日々が始まったわけですが、2023年1月〜6月末くらいまでで僕自身がどんなことをやったのかをちょっと振り返ってみたいと思います。

  • 入社エントリを書いた

以下の入社エントリを書いてツイートする。これが僕のTuringでの一番最初の仕事でした。

僕自身は前職のメドレーのときから比較的積極的に情報発信はしていて、自分で言うのもあれですが、メドレーの人、医療ITの人、SaaSの人、Salesforceの人、営業組織運営の人、筋肉アイコンの人…みたいな形でスタートアップ業界の中では一定の知名度はあったんじゃないかと思っています。この入社エントリでは単純にTuringという会社を知ってもらうというだけではなく、SaaS業界では多分一定の知名度を持っていた僕が、Deep Techの会社に思い切りジョブチェンジをするということで、SaaS業界⇒Deep Tech業界という、「新しい人材の流れ」の目立つ事例になれればいいな、という個人的な裏テーマもありました。まあ、実際にそんな風に伝わったかはわかりませんが、日本のDeep Tech業界には、もっともっと色々な才能が必要。みんな、待ってるぜ!

  • 自分の入社リリースを打った

入社リリースと同時にプレスリリースも打ちました。このリリースも全部自分で書きました。いや「どれだけ自分自分なの?」とか言わないで。「能力総動員」だからね。少しでも会社のことを知ってもらうために使えるものは全部使うという気持ちで頑張ったんですよ。

  • 組織図とレポートラインを整えた

僕がTuringに入ったとき、Turingには組織図とレポートラインという概念がありませんでした。いや、これ別に驚く話ではなくてスタートアップなんて最初の方はそんなもんだと思います。とはいえちょっとそろそろ組織運営がややこしくなるかな〜というタイミングだったので経営陣で相談しながらまずはそこを整理しました。スプレッドシートで組織図書いて、更新された場合にはこうして…みたいなこともやったよ。

  • 役員の「管掌領域」を決めた

組織図とレポートラインを決めるのと同時に「役員のうち誰が、どの領域の責任を持つのか」という「管掌領域」を明確化しました。それまではフワッとCEO山本さんかCTO青木さんが様子をみながら拾っていたために、お見合いになってどっちもやってなかったとか、メンバーも誰に相談していいのかわからなかった、みたいなことが発生していたのですが、そういうことがおこらない様に管掌領域と責任範囲を明確化しました。ちなみにその中で僕は、広報領域、コーポレート領域、事業開発領域を管掌するということになりました。

  • 購買/契約承認のフローを作った

Turingのバックオフィスは、非エンジニアの1人目社員小野さん(以下参照)が、ゴリゴリに整えまくってくれており、当時から既にスタートアップにしてはかなり整った状況でした。

一方で、開発部門で日々発生する購買や各種契約などはバックオフィス側が全て把握出来ているわけでもなく、誰が、何を、何故、いくらで買ったのか?(契約したのか?)といったことが必ずしも全て把握できている状態ではありませんでした。これはさすがにリスクがあるよねということで、エンジニアの負担を上げずに、最低限の承認プロセスとログの確認が出来るようにということでSlack上に購買/契約承認フローを実装しました。(実際に実装してくれたのは100%小野さんなんですが…)
今思うと、年始のタイミングでこれやってなかったら、今カオスでとんでもないことになってたなと思うので早めにやっといてよかったなと思っています。

  • いくつかのツールベンダーさんに「お友達ルート」でアクセスし「いい感じの提案」をしてもらった

僕自身が、前々職のGoogle時代にバックオフィスSaaSを提供する様々なパートナーさんと一緒に仕事をしていたということもあり、当時の「戦友」達に連絡して、会社運営に必須ないくつかのツールについて「戦友」ならではの「いい感じの提案」をしてもらいました。もちろん内容について具体的には言えませんが、このあたりも「能力総動員」で頑張った感あります。

  • 広報体制を立ち上げて全力コミットしてメディアに出まくった

開発期間が超長期にわたるTuringの様な会社にとって、会社が向かう方向性やマイルストーンを適切にステークホルダーに伝える広報は、採用、事業運営、資金調達、あらゆる面でとても大切な役割です。広報についてどんな感じのことを行った、そしてどんな成果が上がっているのかについては、3月時点の内容を以下のnoteに書いているのですが、ここについてはかなり頑張りました。僕自身もガッツリ記者さんやメディアのみなさんと向き合う時間を使いましたし、相当な結果が出せたと思います。最近は初めましての方でも「何かの記事でみました」と言ってくれる確率がかなり増えており、自己紹介コストが下がるという意味でもかなり広報の効果を実感しています。

  • 困った時に助けてくれるスペシャリストチームを組成した

法務、人事労務、社内IT…など、僕が知りうる信頼できるその道のプロにアクセスし(お願いし)「いい感じ」の条件でSlackに入ってもらい、「各分野で困った時はいつでも気軽にSlackで相談できる」という状態を作りました。これによって、コーポレート部門に関しては、専門家の知恵にいつでもアクセスできることで大きな間違いはしない、という安心感の元仕事ができる体制ができたんじゃないかと思っています。

  • 資金繰り表を作成し過去〜将来のお金の流れを明確化した

Turingの様な大規模な予算を使う研究開発型のスタートアップにとって、キャッシュフローをきちんと確認し、将来にわたってのプランをしっかり管理するというのはMustで大切なことなのですが、実は僕が入ったばかりの頃は会社としてそこにきちんと解像度高く取り組めてはいませんでした。なので僕の方でfreeeからデータを落としてきてそれを意味のある形に整理し、各開発部門とコミュニケーションを取り、過去〜現在〜未来に渡るキャッシュフローの精緻化を行い、さらに全社向けにも共有し「Turingは余命●●ヶ月です」というのをある程度正確に意識してもらえる体制をつくりました。(冷静に考えたらそんなの当たり前じゃんと思うかもしれませんが、そうは言っても当時はなかったからやりましたという話です)

  • THE FIRST TURING CARのお客様を発掘し、実際に販売した

多分、これがこの半年間で最も大きな仕事だった気がします。Turingが1台限定で初めての製品としてリリースしたTHE FIRST TURING CAR。こちら、税抜き2,000万円という価格で販売したのですが、この車のお客様を発掘して、実際に販売する所までを担当しました。この車に関しては、リリースと同時に10件以上の購入希望のお問い合わせを頂いていたのですが、1台限定、かつ我々の初めての製品であるということから、様々な条件を鑑み最終的には僕自身の人的ネットワークの中からお客様を見つけ、実際販売をさせていただく形になりました。
Turingにとって初めて売る製品であるということから、そもそも売買契約も無いし、アフターサービスをどうするという部分も何もない状況だったので全てのプロセスを新しく作る所も全部やりました。

  • 山本さんといっぱい話した

山本さんとオフィスの近所を散歩しながら色々な雑談をしました。会社のことはもちろん、くだらない雑談も含めて結構色々な話をした気がする。山本さんにとって僕みたいな奴(非エンジニアでビジネスサイドの感覚や嗅覚を持ってる奴)と話をするというのは、山本さん自身の思考の幅を広げるという意味でも大事なんだろうな、と勝手に認識し、山本さんが何かに悩んでたら「俺はこう思う」という自分のポジションを明確化して議論したり、山本さんがちょっと元気なさそうにしてたら、「元気出せよ!」と発破をかけたり、山本さんがなんか正しくないことをしそうになってたら「それは違う!」と怒ったり、みたいなことをかなりの時間をかけてやりました。柏の葉にはね、アクアテラスってのがありまして(以下参照)ここら辺をよく歩きながら喋ったりしましたね。

柏の葉アクアテラス
  • アライアンス構築などビズデブ系の仕事は実は全然やらなかった

年始のタイミングでは、サプライヤーさんとの交渉や各社とのアライアンス構築などについては、僕にも一定以上の経験値があるので、僕が登場すべきシーンは結構でてくるんじゃないかな、と想定していたりしたんですが、実はそういったビズデブ系の仕事は僕の少し後に正式入社した、現在の車両開発部長の徳地さん(以下参照)の方が圧倒的に僕より出来るということがわかったので基本的に全部徳地さんがゴリゴリ進めてくれていました。ハイレベルな戦略策定から、国内/海外問わず、英語、日本語、タイ語をゴリゴリに繰り出してあらゆる人種や会社とビジネスを進めまくる徳地さん、強すぎる。まじで僕は全く敵わない笑

  • 柏の葉にお客さんを呼びまくった

多分というかこれは絶対だと思うんですが、この半年間で柏の葉の僕らのオフィスにお客さんを呼んだ数ランキングでいうと、僕が全社一位だと思います。採用候補者、出資候補者、友達、元同僚、親族、そこら辺で知り合った人…など、あらゆる僕自身と関係のある人達を僕らのオフィスにご招待し、デモ車に乗ってもらったりオフィス/ガレージ/工場を案内させてもらいました。ぶっちゃけ何かしらの「下心」を持ってご招待している人から、全くそうじゃない人までとにかく色々な人に僕らの働いている所をみてもらい、ちょっとでもTuringのことを気にかけてくれそうな人を一人でも多く作ろうという気持ちで頑張りました。正直この活動に短期的なリターンはあまりないと思うのですが、これは本当に長い目線でみてTuringのことを応援してくれる人を一人でも増やそう、の気持ちでやっている活動です。

  • 資金調達にまつわる各種アクションを行った

Turingは大規模な資金調達を行い続けなければならない、という宿命を背負った会社です。CFOがいない現在のTuringでは、調達に関しては山本さんがめちゃくちゃ頑張って各投資家とコミュニケーションやプレゼンを行っているのですが、天才山本一成と、金融業界の人たちの間では「プロトコル」が違っていることも多く、山本一成の思いをきちんと投資家や事業会社に伝えるためには「翻訳」が必要です。その「翻訳」にあたる事業計画やInvestors Deckを用意するみたいなことも僕の方でやっています。まあこのあたりはCFOがいたらCFOがやっているんでしょうが。今はいないからね。しょうがない僕が頑張ってやるしかないよな、という気持ちです。あとは会社にとっての資金調達という観点では僕個人としても周りから結構心配されくらい「身銭を切って」います。やっぱり人生を賭けてますからね。能力総動員。

  • いつも元気に楽しそうに働いた

CTOの青木さんから「田中さん来てから何となくオフィスの雰囲気が元気になった気がする」と言われたのですが、元気に、ニコニコしながら、いつも楽しそうに、でかい声で働く、というのは僕がいつも意識していることで、かつ最も得意なことだったりします。「元気と笑顔を過小評価するな!」というのが個人的な座右の銘だったりもするわけですが、やっぱり仕事は楽しまなきゃね。つらいこととか大変なことはいっぱい起こるんだけど、楽しそうにしてたらそういうこともきっと楽しく思えてくるからね。

これからのTuringについて

さて、そんな感じで僕がTuringのCOOになってから半年間でやったことをざざっと振り返ってみました。ここに書いたこと以外にもまだまだ本当に色々な仕事をしていたりするわけですが、まあスタートアップCOOという究極の何でも屋として、会社の成長に必要に必要なことは「能力総動員」で頑張っていくつもりです。そして、そんなTuringなんですが、実は2023年中に東京オフィスの開設を予定しています!(東京駅とか京橋駅とかそのあたりになる予定。)
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