⑥「課題の粒度」×「関わり方」で捉えるNPO支援

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。

「NPO支援者育成試論」6つ目の記事です。なかなか支援者の育成の方まで話が進んでいかないですが、あまり雑に言葉にしたくはないので一つずつ話を進めていきたいと思います。長い目でお付き合いいただけますと幸いです。

さて、前回と前々回の記事でNPO支援を大きく二つの視点から類型化してみました。「課題の粒度」「関わり方」の二つ。なぜ長々とこうした類型の話をしてきたかというと、これまでも何度も書いてきている通りNPO支援の仕事は内容も関わり方もさまざまで、多様であること自体は良いことだけれども、その多様さは裏を返せばわかりにくいということでもあるということを、この仕事に携わっている人間の一人として真摯に向き合う必要があると考えているからです。


多様であることは良いことだが、わかりにくさを放置したくはない

私自身も含めてですが、似たようなNPOを支援する仕事をしており、似たような言葉(NPOコンサルとかNPO支援とか伴走支援とか)を使って説明している人は複数いるけれど、それぞれの仕事の仕方やNPOへの関わり方などは異なっています。もちろん共通していると感じる点もたくさんありますし、NPOへの支援の仕方が統一されるべきだなどということを考えているわけではありません。NPOが多様であるように、NPO支援も多様であるべきです。

しかし、NPO支援という仕事が成熟しきっていない現状では、何か組織に課題があって支援者を求めているNPOが、どんな支援者にどんな支援を求めれば良いのか判断することができません。

例えば誰かに問い合わせをしてみて、提示された支援内容が自分たちが直面している課題や組織の状況や体制に適しているものなのか、そもそも他にどんな選択肢があって、そこにはどんな違いがあるのか判断することが難しいと感じるNPOの方は少なくないでしょう。複数の支援者に相談して相見積もりを取るにしても、そもそも関わり方が違う支援内容に対して提示される見積もり額が適正なのかどうかを判断することも難しいはずです。

私のこの拙い連載記事がNPO支援業界のスタンダードな言葉遣いや類型化になるなどといった壮大なことはまったく想像していないのですが、それでもこうした類型化の視点を持つ方が支援者側にも依頼者であるNPO側にも少しずつ増えていけば、NPOと支援者のマッチングはよりスムーズに起こるようになると思います。そして、この連載記事の本来の趣旨であり想定読者であるこれから支援者を目指したい人にとっても自分の目指す方向性や専門性を整理して考えやすく・伝えやすくなるはずなので、NPO支援という仕事全体の底上げにも繋がりやすくなるのではないかと考えています。

「課題の粒度」と「関わり方」類型

改めて二つの視点による類型を示しておきます。

「課題の粒度」による分類

「関わり方」による分類

NPO支援者が自分の得意な支援方法を伝えやすくなる

ということで、冒頭ですでにだいぶ結論に近いところまで述べてしまっているのですが、「課題の粒度」と「関わり方」というNPO支援の仕事を分類する視点を二つ組み合わせることで、まずNPO支援の仕事をしている人間が自分が得意とする専門テーマや支援方法をNPOに伝えやすくなるという効果があると考えています。

関わり方の類型の説明文では括弧書きでWebサイト制作等の業務の場合の例を書いてありますが、これはつまり課題の粒度でいうと「Web制作」という機能支援の具体的テーマ(課題)に対して、複数の「関わり方(支援の仕方)」があり得るという風に捉えることができます。同じ専門性について支援を行う支援者であっても、具体的なNPOへの関わり方は色々あり得る訳です。そしてこのことはWeb制作に限らず、広報や会計、法務などおそらくどんな機能支援の支援テーマであっても同じようにさまざまな関わり方の違いや特徴を捉えることができるはずです。(Web制作というテーマを例として挙げているのは私自身がWeb制作に関わることがあり、それなりに詳しいので仮想事例として整理して書きやすいということもありますが、その専門性を必要としているNPOの多さに対して、必要な支援の種類や方法があまり理解されておらず適切な支援につながっていないケースがあると特に感じているテーマだからです)

特にご自身が機能支援を専門とされている方は、関わり方のレベルではどのような支援を行うことができるのか、得意としているのはどのようなものなのかをNPOに伝えられるようにすると、ミスマッチがなくなるのではないかと思います。(代走的支援に加えて伴走的支援や育成的支援までを求めているNPOと、代走的支援に特化して支援している支援者のマッチングでは特にミスマッチが起こりやすいと感じます。特にその専門性を支援対象のNPOが将来的に内製化しようと考えているのかどうか、その辺りは支援開始前にしっかりとNPO側とコミュニケーションをとるべきだと感じます)

団体支援については、団体自身が主体的に自分たちのやりたいことを言語化したり整理していくことをいかに支えていくかという話なので、代走的支援というのは基本的には成立しないはずです(例えば支援者がその団体のビジョンを代わりに作ってあげるということは意味がわからないことになってしまいます)ので、かけ合わせ方によっては存在し得ない支援の形もありうると思います。いま書きながら自分自身がやっている支援について思い起こしてみると、団体支援については伴走的支援と育成的支援と教師的支援と顧問的支援をすべて組み合わせたような関わり方をしているような気もしてきます。こうなると、そもそもの分類が機能していないのではという疑問も湧いてきますが、機能支援以外はおそらく複数の関わり方を組み合わせて柔軟に対応していくことが求められるし、だからこそ難易度が高いのではないかと思います。

NPO支援業を行っている皆さんは「課題の粒度」×「関わり方」でご自身の支援スタイルを捉えることができるでしょうか。いろいろな方の具体例に当てはめながら類型自体をアップデートしていけたら面白いなと思うので、良ければフィードバックをお待ちしています。

関わり方により目標とする「成果物」も異なる

特に「関わり方」については、スタイルが異なるとその支援が何を成果とするのかというゴール設定も変わってきます。これまでと同じくWebサイト制作という機能支援のテーマに対して、関わり方によって成果物(や支援のゴール)がどのように異なるのかを考えてみましょう。

代走的支援の場合、Webサイトの完成など納品物が明確な場合が多くなりやすいはずです。

伴走的支援の場合は、あまり私がWebサイト制作に関してこのスタイルを取ることが少ないので想像の部分も大きいですが、一定時間以上の業務稼働自体を成果とするかあるいは業務を行うことによって発生するはずの成果にコミットする場合もあるでしょうか。例えばサイトコンセプトの作成やワイヤーフレームの作成など制作会社への依頼をスムーズにするため資料の作成などを団体の方との話し合いをリードしながら進めつつ、キャッチコピーや写真の選定、各ページに掲載する文章のライティングなどもどんどん手を動かしながら進めるといった動き方はあり得るでしょう(Webサイト制作とは異なりますが、例えばファンドレイジング業務であれば寄付獲得金額など。欧米では寄付獲得金額にコミットし、成果報酬型で契約するファンドレイザーもいらっしゃるといいますよね)。

育成的支援の場合には、担当者やチームのスキルレベルなどの定性的なゴール設定がなされることが多いかもしれません。支援先のNPOスタッフにWebサイトリニューアルの進め方や考え方を理解してもらい、次のWebサイトリニューアルの際には内部スタッフだけで進められるようになることを目指します。(Webサイトのリニューアルはそんなに高頻度で行うことはないので、これ自体を成果として設定して支援を行うことは少ないかと思いますが、伴走的支援で今回のリニューアルについては支援者がある程度一緒に走りながらリードしつつ、次回のリニューアルに向けて各ステップの進め方自体をしっかりレクチャーしたりフレームワークを提示しながら進めていくというやり方はあるかもしれません)

教師的支援は研修なり勉強会なりの実施そのものが成果となることが多いと思いますが、本来は受講後の変容を成果目標とすべきですね。つまり、Webサイトリニューアルの進め方や手順を講義形式で解説する研修を実施し、その後しっかりと団体内部でそれらの検討が進んだのかどうかということにコミットをするということです。

顧問的支援はいわゆるアドバイザリー契約的な形なので成果物が明確でない場合も多いかと思います。その事自体を支援者と依頼元NPOの双方が共通認識を持ち合意が取れているかどうかがポイントになるでしょう。Webサイトリニューアルについてで言えば実際の制作自体は制作会社から提供される「代走的支援」に任せることになりますが、NPOのWebサイト制作においてしばしば問題となるのが「制作会社が言っていることがよく分からない」という問題です。制作会社自体がNPOに慣れていれば良いのですが、そうではない場合専門用語のやりとりについていけずうまく制作会社とコミュニケーションが取れないといったこともありますので、何か制作会社とのやりとりで不明点や困ったことがあった差に顧問的に関わってくれている支援者に質問や相談を行い、その都度サポートをしてもらうといった形はあります。また、制作会社などがWebサイトリニューアル完成後のいわゆる「保守点検やトラブル対応」の契約をしている場合も顧問的支援として分類しても良いかもしれません。

まとめ

支援者としては自分の支援がどのような成果に力点を置いた支援なのかをしっかりとNPOに説明した上で合意形成をする必要がありますし、NPOが支援者を探す場合には自組織が求めている成果物や成果状態を明確にした上で支援者へ相談ができると良いでしょう。

以上、本記事では「課題の粒度」と「関わり方」というNPO支援を捉える2つの支援を掛け合わせることでさまざまなNPO支援のあり方を少し立体的に捉えて書いてみました。次回ももう少しだけこの2つの視点の掛け合わせによって見えてくることについて書いてみたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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NPOコンサルや伴走支援者になりたかった数年前の私のような方に向けて仕事をする中で感じたことや考えたことを書いています。 支援者育成やNPO支援の仕組み化などに取り組んでいくために、もしいいなと思ってもらえたら、サポートしてもらえると嬉しいです。