⑧NPO支援者は本当に足りていないのか?

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。

今回は、そもそも私がこの一連の記事で「NPO支援者を育成すべきである」と考え、書いてみようと思ったことの背景にある問題について深堀りして考えてみたいと思います。

「NPO支援者は本当に足りていないのか」という問題です。

どのような問いを立てるかとその問いの背景にどんな認識があるのかを確認することはNPO支援をするときにも大切にしている姿勢です。


Twitterにて

この連載記事を書き始める少し前に私はTwitterで以下のような発言をしました。

私のそんなに熱心に使えていないTwitter投稿にしては珍しく反応をたくさんいただきましたし、このツイートを見ていただいたという複数の方からDMやメールにて「NPO支援者になりたい」「案件を紹介して欲しい」などの問い合わせも複数いただきました。関心を持っていただけている方がたくさんいらっしゃることが分かって嬉しかったです。

さて、この投稿にすでに表れている通り私は「NPO支援者が足りていない」と感じています。

なぜこのように考えるようになったのかを整理していきましょう。

観測できている事実「依頼に応えきれていない」

まず、私のこの「NPO支援者が足りていない」という認識は、何かしらの調査を実施して明らかにしたことではありません。そうではなく、NPO支援者として仕事をしている私自身が経験していることや、複数の知り合い支援者の方の状況を見聞きしたことなどの周囲で観測できている事実から、課題全体を推測しているというものになります。

小難しい書き方をしていますが、話は非常にシンプルです。

仕事依頼の問い合わせが多すぎて捌ききれない

という問題が発生しているのです。

私はプロのNPO支援者としては今年で7年目(独立してからは4年目)になりますが、私個人の仕事としてはありがたいことにご依頼いただく案件の数が年々増えています。ついに、一年程前からはスケジュールがほぼ常に詰まっており、新規の支援依頼については数ヶ月(3ヶ月から半年程度)お待ちいただかないといけないという状況となり、その後も近い状況が続いています。今年もすでに年度内(2023年3月まで)のスケジュールはほぼ埋まっており、ある程度以上のコミットが必要な案件はお待ちいただいたりお断りしなくてはならない状況になってきています。私個人の仕事としては(収入的な意味合いのみで考えれば)非常にありがたい状況ではありますが、お応えしきれない団体さんにはいつも心苦しく感じています。

そして、こうした状況は私に限った話ではなく、知り合いの支援者の方では私以上に常に忙しく新規の案件を受ける余裕がないという方が複数いらっしゃいます。

問い合わせをいただいて、私がスケジュール的にすでに対応できない状況だったときに、「この課題であれば◯◯さんもできる or 私より△△さんの方が得意なので問い合わせしてみては?」と促してみたときに「実はすでに◯◯さんにも相談したが、忙しくて受けられないということで堤さんを紹介いただいた」という答えが返ってきたことも何度もあります。

私自身はNPO支援者としてそこまで有名でも実績豊富でもないと思いますが、その私がすでにこのような状況になってきていますので、私より多くの実績を残してきている先輩支援者のみなさんはさらに厳しい状況にあるのではないかと推測しています。すべての方が私のようにスケジュール全体が常にパンパンになるまで依頼を受けているかはともかくとして、問い合わせのきたものに対して、キャパシティの問題からお断りするという状況は少なからず発生しているのではないかと推測しています。

そもそも私がこれだけ案件をたくさんいただけている背景には、先輩支援者の方からの紹介が案件獲得の経路として大きな役割を果たし続けてきたことがあります。紹介いただく案件の中には、例えばWeb/ITやデジタル領域に関わる支援など、私が専門としている(そして先輩支援者の方は専門としていない)テーマだから紹介をしてくれたというものもありますが、そうではなくテーマとしては先輩支援者も対応可能なものだが、キャパシティ的に受けきれないという理由で紹介をいただくケースも少なくありませんでした。(私の案件獲得経路の状況や分析について詳しくは売上分析の記事をご覧ください↓)

このような状況から

NPO支援のニーズに対して、実際に支援することのできる支援者の数が足りていない

ということを強く感じています。

問題は一部支援者への依頼の集中か?

さて、では今度は「NPO支援者が足りていない」という問題自体をもう少し深堀りしてみましょう。

ここまで述べてきた通り、私が経験したり観測できているのはNPO支援者が足りていないということ自体ではなくあくまでも「一部のNPO支援者への支援依頼が対応可能な量(キャパシティ)を超えている」ということです。

私や周辺の複数の支援者の方のキャパシティがだいたい常にいっぱいだからといって、全体としてNPO支援者が足りないかどうかはわかりません。

つまりNPOの支援ができる人あるいはしたいと考える人は実はたくさんいて、その人たちはキャパシティに余裕があり、むしろもっと支援したいと考えているのに依頼がないという事態が発生しているのではないかということです。

もしそうだとすると、問題は「NPO支援者が足りていない」ことではなく、「NPO支援をしている人やできる人やりたい人は実はけっこうたくさんいるのに一部の支援者に問い合わせや依頼が集中している」という風に問題の形が少し変わってきます。

この側面はある程度はあるだろうなと考えています。これは依頼するNPOの側から考えてみればある意味当然なのです。NPOが支援者に支援依頼をするためには「この支援者なら自組織の課題を解決してくれるだろう」という信頼感というか期待感がもてることが一定程度必要です。突き詰めていってしまえば実績とか評判があるかということ(私自身の大学時代のボランティア経験や何の専門性も実績もない社会人一年目からのプロボノ活動の経験も振り返ると実績や評判だけではないのでここら辺あまり雑にしたくはないのですが、細かい話は追々記事を分けて掘り下げられればと思っています)。私もプロのNPO支援者としてキャリアを歩み始めたときにどのように実績を作っていくのか、一番苦労したところでもあります。(この辺りは別途詳しく書いていきたいと思いますが、実際私はNPO支援者のプロとして仕事をし始めたとき―NPOコンサルベンチャーに転職したとき―に特に一年目はほとんど自力で依頼を獲得することはできませんでした。知名度がまったくない―実力もなかったです―ので当たり前といえば当たり前なのですが)

このように考えてみると、NPOの支援ニーズに業界全体として応えられるようになるためには、単純に能力・スキルとしてNPO支援ができる人の数が増えるだけでは不十分だといえます。いくら能力のある人が「NPO支援します」と言っても、それだけではNPO側としてその方に支援を依頼したいと思えるようにはならないのです。

「NPO支援者が足りている」とはどういうことか

ここまでをまとめると、NPOの支援ニーズが満たされていくために必要なのは

①能力・スキルとしてNPO支援できる人が増えること
②NPO支援ができる人と支援ニーズを持ったNPOと適切にマッチングできること(あるいは個々のNPO支援者が適切に案件獲得できるようになること)

という風に整理できるのではないでしょうか。そして、それぞれについて本当に問題になっているのかをしっかりと考えた上で、問題があるとしたらどのように解決しているのかを考えていくことが必要なのではないかと思います。

本日はここまでにします。整理した課題についてまた記事を分けて深堀りしていきたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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NPOコンサルや伴走支援者になりたかった数年前の私のような方に向けて仕事をする中で感じたことや考えたことを書いています。 支援者育成やNPO支援の仕組み化などに取り組んでいくために、もしいいなと思ってもらえたら、サポートしてもらえると嬉しいです。