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好きな歌手様の曲の物語を脚本(戯曲)にしてみた。「黒猫」

二年前くらいに書いたやつです。文章の稚拙さがにじみ出ている…。

近頃スマホのメモ帳に作品をあまり置いときたくないので、消すくらいならばと思い投稿した次第です。ストーリー展開が急すぎて反省しました。



黒猫 :猫
絵描き :絵
絵描きの彼女:絵彼女
ナレーション

大人(男)1 :大
大人(男)2
大人(男)3
大人(女)1
大人(女)2
→大人は最初の街と隣町で違う役を1人でやっていただく形です。

子供(男)1:子
子供(男)2
子供(男)3

「」:人物の台詞
():心情表現
〈〉:直前の台詞主の動作や状況など
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台本


ナレーション


ある雪の降る街の大通りで歩いている一匹の黒い猫。
猫は行く当ても無く、ただ餌を探し求めていました。すると、


大(男)1 「おい、見ろ!黒猫がいるぞ!」

大(男)2「や、本当だ!〝不幸″が街中を歩くな!我々に移ってしまう!」


ナレーション

この街の人々は黒い猫を見つけると度々〝不幸″と口にし、この猫は生きているだけで、存在しているだけで咎められ、忌み嫌われていました。


大(男)2「まぁよくもこんな真昼間の大通りを歩けるもんだな」

大(女) 1「自分の存在価値もわからないのかしら」

大(女)2 「まあまあ、皆さん。猫一匹で昼間から騒がないで。そんな事よりどうです。これからあちらの方で年末祝いのパーティーをやるところなのですが。市民の方ならどなたでも歓迎ですのでぜひ。

大(女)1「いいわね!行きたいわ!」

大(男)2 「タダメシにありつくとするか!」

大(男)3 「ああ!本当にこの街は平和なもんだぜ!」

大(男)2「あれを除けばな…」

〈黒猫を指差す。後、猫以外舞台から消える〉

猫「俺は、孤独だ。生まれてから一度も友達と呼べる相手が出来たことが無い。それにそれだけじゃない。餌を探し、人に会うだけで罵られ、石を投げられる。普段から決まった時間に食事を確保して、住む場所が与えられているお前らと比べれば、僕は言われるまでもなく不幸だ。言われなくても分かっているのに…」


猫「けどもう孤独には慣れた。むしろ望んでいるくらいだ。俺がある日気づいた事、それは誰かを思いやることは凄く煩わしいって事だ。
もし俺が誰かと出会ってそいつが何かの原因で死んでしまったとしよう。
その時の悲しみ、苦しみはそいつと過ごした時間に伴って大きくなっていく。俺はそれが嫌だ。悲しんで苦しむのが嫌だ。だから孤独でいい。」


ナレーション

なんて可哀想な黒猫でしょう。孤独です。とても孤独なのです。そこへ1人の男性がやってきました。


絵 「君、お腹空かしてるの?」

猫「え?」

〈振り向く〉

絵 「うちにおいでよ。餌ぐらいならご馳走するから。ほら。」

〈両手で持ち上げようとする
後、猫、すこし後ろに退がる〉

猫(何だこいつ…俺を見て何とも思わないのか?しかも嫌に馴れ馴れしいな…)

絵 「反応しないなら連れて行くぞ〜」

〈また近づく。後、猫、後ろに退がる〉

猫(俺に餌をくれるだって?そんな訳がない!そうだ!こいつは俺を食おうと企んでんだ!でも待てよ…猫って食えるのか?こいつ一体何考えてるんだ…)

〈絵描き、さらに近づく〉

絵 「そう逃げるなよ!俺たち似た者同士だろ?」

猫 「!!近寄るな!」

〈絵描きの手を引っ掻いて、舞台から逃げる〉

〈絵描きは痛そうに手をおさえ、猫の行き先を目で追い、暗転〉

ナレーション

猫は必死に逃げました。何故そうしたのかはわかりません。ただただ走り、
〝孤独″と言う名の逃げ道へと向かいました。きっとまだ信じられなかったのでましょう。生まれて初めての優しさ、温もり全てが。
しかし絵描きはその猫を諦めはしませんでした。


猫 「ここまで来ればもう追ってはこないだろ…」

絵 「足速いなぁ。捕まえた!」

〈両手で持ち上げる〉

猫 「うぉっ!!しつこっ!」

絵 「まあまあとにかくウチにおいでよ猫さんよ。冬だから寒いし、第一寂しいだろ?本当に嫌なら無理して連れてかないけど。

猫 (十分強引だろ!)

絵 「まぁ寂しいのは俺…」

猫 「?」

絵「いや。何でもない。来たかったらついておいで。」

〈少しうつむきながらゆっくりと舞台から消える絵描き、後に猫も少し迷うそぶりを見せた後、ゆっくりと歩を進め、ついていく。後、暗転〉



ナレーション

こうして猫はついに初めての友達が出来、共に時を過ごしました。一緒に食事をしたり、お散歩をしたり、時には絵描きのお手伝いで絵を描いたりもしました。楽しい時間はあっという間に過ぎ、二度目の冬の事。絵描きはある事を考えます。

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絵 「ただいま!今日も街通りで絵を売ったけど全然ダメだったー!」

猫 (そりゃだって…あんな絵で売れる訳ないだろ…)

絵 「…そういえば…名前…決めてなかったな…君の。」

猫 (名前なんかいるもんか。そっちの方が小説っぽくてカッコいいだろ。まあ、つけてくれるのだったらせっかくだしつけてもらってもいいけど…)

〈頭を掻いて照れる〉

絵 「あ!そうだ!思いつきだけどいい名前があるぞ!えーとペン…ペン…
お、これだ。記念に書いておこう。」

〈ペンで名前を書く〉

絵 「これで良し!元々ある言葉だし、ちょっと洒落過ぎてる気がするけどそんなに悪くないと思うよ?

〈名前を見せる〉

猫(ん?Holly Night (ホーリー ・ナイト)?)

絵 「これはね、元々宗教から由来した言葉らしいんだけど直訳すると゛聖なる夜″って意味なんだ。だから、なんていうのかな…黒い猫って闇に溶けやすいだろう?暗い夜の中チカチカ光る目がまるで〝聖火″みたいでピッタリだなって思ったんだよ!伝わる?」

猫 「〝聖なる夜″…悪くないし、カッコいいかもしれないな。」

〈分かりやすくニヤける〉

絵「嬉しそうな顔してるな。じゃあ決まり!お前は今日からholly nightだ!」

猫 「なんか在り来たりっぽいな。やっぱもっと普通の名前ないのか」

絵 「じゃあ夕ご飯にするか!」

〈絵描き、軽く無視〉

猫 「……まあいっか。それはそうとこの絵って、絶対売れないよなぁ…売れるわけがない。だってこいつは……僕の絵しか描かないんだもの。街一帯が僕の存在すら否定しているのに、そんな街通りで黒猫だらけの絵なんか商ってたら売れない以前に嫌がらせと勘違いされるんじゃないか。」

絵 「はい、ご飯」

〈餌をもらってからしばらく調理場に戻る絵描きの背中を見て、下を向く〉

猫 「あまり考えない方が良いのかもしれない。でも、とにかく一年こいつと過ごして分かったのは、凄くいい奴だってこと。考えるまでもなく今まで見てきた奴らと比べて…」


ナレーション

絵描きがこの黒猫と過ごしてからというもの、絵描きは一年間黒猫の絵を描き続けていました。その絵で稼げるお金など少しも無いのに、絵描きは黒猫を描いているのです。黒…いえ〝ホーリーナイト″にはどうしてもその理由がわかりませんでした。彼ぐらいの画力ならば少なくとも今の絵を描くよりは普通の絵を描く方が必ず高い値で売れる。なのに何故僕の絵しか売らないのだろうと色々考えようとしましたが、深く考えても答えは出ないと思い、考えるのを止めました。普通に絵を描いて、しっかりと稼いでもらいたいという気持ちもありましたが、行動には出しませんでした。
稼いで欲しいというのは自分自身の為ではありません。彼の為でした。初めて他人を思いやったのです。それからまた長い月日が経ち、ある日の事でした。

〈足元をフラつかせ、胸を押さえて壁に手を当ててそのまま床に崩れ落ちるように座り込む(息を切らした感じの息づかいになる)〉

猫 「!? 一体どうしたんだ?」

絵 「ごめん…ごめんよ…俺昔から病弱でさ、家が貧しかったから抱えてる病気もロクに治療できなかったんだ…。
そんな家でも俺は食っていける保証のない絵描きになろうと決心して家を出たんだ。たくさん稼いだらかならず帰ると自分に誓いを立ててね…
けど…何で…かな…君にあってから何というか、その…絵を描く者達の立場としても不思議な、変な感覚なんだけど…‥
〝君の絵しか美しく感じなくなった″んだ。

猫 (なんだ、それ?そんな変な理由で僕の絵ばかり描いてたのか?じゃあどう考えても俺のせいでこいつは…)

絵 「僕さ…君といた時間が本当に幸せだった。普通の絵で稼いで普通に暮らすよりずっと有意義だったよ。昔から僕友達なんて1人もいなかったから
すごくたのかった。まぁ猫だけどさ…
それでもいい。僕は満足したから。」

猫(俺の名前は〝君〟じゃなく〝ホーリーナイト〟だろ…お願いだからまだ死なないでくれよ…また頑張って普通の絵を描いて稼いでくれ、僕は出て行くから…)

絵 「頼みがあるんだけど…こっちに来れるか…?」

〈猫、ゆっくりと絵描きに近づく〉

〈後、絵描きは手紙を書き、猫にそっと手紙を近づける〉

絵 「実は僕には恋人がいるんだ…彼女はまだ若いけれど、雪の山道を一つ越えた街に1人で住んでいる。その人に、この手紙を届けて欲しいんだ…お願い出来る?」

〈猫は溢れそうな涙を拭い、ゆっくりうなずく〉

絵 「一生に一度のお願いだ…頼んだよ。黒き幸 ホーリ…ナイト…」

〈絵描きが弱々しく握っていた手紙が手から離れる〉


ナレーション

絵描きの頼みを引き受けた黒猫は雪の降る山道へと走りました。今は亡き友達との約束を口に咥えて。
けれど、目的地までは簡単な道のりではありませんでした。


子1 「あ、悪魔の使いだ!」

子2 「あっちへ行け!!」

〈子供達が石を投げつける〉

子3 「〝不幸″は他所の家に行けよ!僕らも不幸になっちゃうだろ!」

〈石が顔に当たり、顔をおさえる〉

猫 「何とでも呼ぶなら呼べ…俺は世界一優しい友からもらった名前がある。〝聖なる夜″という決して消えない名前がある!
お前らの言葉と暴力ごときでその名を傷つけさせるものか!!」

〈前面に立っていた子供の間を突っ切り、そのまま雪山へと向かう〉


ナレーション

雪山を登っている中、すでに黒猫の体力は限界を超えていました。
脚には血が滲み、片目はもう見えない状態となっていました。
でも倒れそうになる度にあの絵描きの顔が頭に浮かんでいたのです。


猫「はぁ…はぁ…もう…ダ…メだ…」

〈床に倒れこむ〉

〈5秒静止した後、思考が流れる〉

猫 (何で俺は生まれてきたんだろう?
周りから拒絶される為に生まれてきたのだろうか。そういえば俺を〝不幸″と呼ぶやつらに対して〝幸″と呼んでくれたのもあいつだけだった。
あぁ、そういえばあいつと約束したんだった。手紙を届けないと…。)

〈立ち上がろうとするが、立ち上がれない〉

猫 (生まれてきた意味?忌み嫌われ続けてきた俺に意味なんて……あ)

〈ふと気づいた様にピクリと動く〉

猫(今、まさにこの瞬間じゃないか。この日の為に俺は生まれてきたのかもしれない。
一生に一度の友、一生に一度の幸せ、
そしてそれを同時に与えてくれた友人からの一生に一度のお願い。
そんな願いを簡単に投げてたまるものか。)

猫「うぅっ!!」

〈ゆっくり立ち上がり、再び雪山を登る。〉


ナレーション

苦しい状況、状態の中やっとの思いで頂上を登った黒猫の眼前には、絵描きの言っていた恋人の住んでいる街が広がっていました。黒猫は命が尽きようともこの手紙を届けるまでは地に倒れないと決めていました。すごいスピードで雪山を下ります。

猫(もうすぐで街だ!家をしっかり見つけられるかな…視界がぼやけてきた…)

〈猫、走り続ける〉


猫「着いたぞ!早く探さないと。」

〈猫、石につまづく〉

猫「あっ」

〈猫、転がる〉

猫「何してんだ…こんな所で寝てる場合じゃない…早く立ち上がれ!」

〈猫、立ち上がって歩き出す。後、足元の石につまづく〉

猫「あっ」

〈転ぶ〉


猫 「だめだ、こんな所で休んじゃだめだ!早く立ち上がらないと…」

〈猫、四肢を痛めながらも必死に立ち上がろうとする。後、いきなり現れた男、急に黒猫の腹部を蹴りつける。〉

猫「うぐっッ!!」

大(男)1 「あれ?なんで隣町で噂されてた不幸の悪魔ちゃんがこんな所にいるんだぁ?この街に来られるとココの評判まで悪くなっちゃうからさ〜、消えて?」

〈もう一度蹴りを入れようとする。後、入る瞬間の蹴りを受け止める男が現れる。〉

大(男)2 「みっともねぇ。」

大(男)1 「誰だ?君。」

大(男)2「猫一匹でそこまでする必要ないだろうが。どちらが悪魔か分かったものじゃない。お前は命の価値にそれぞれ違いがあるとでも思ってんのか?俺は皆平等だと思うがな」

大(男)1 「質問に答えない上にクサい台詞吐く上に疑問を疑問で返すとは何てお行儀の悪い奴。」

〈男1、側にあった鉄パイプを取り、男2に襲いかかる。後、男2は軽々と手で上から降りてくる鉄パイプを受け止め後ろを振り返り台詞〉


大 (男)2 「行け。その口に咥えてるの、届けるんだろ?」


〈猫はゆっくり立ち上がり、大(男)2の顔を見て頷きふらふらと歩き出し舞台上から消える〉

大(男)1 「もう一度聞くけど…君誰?何であの猫を助けたの?」

大(男)2「大した人間じゃない。そしてあの猫は……俺の弟に少し顔つきが似てた。だから助けただけだ。」

〈暗転〉

猫「見つけた…この家…だ……」


〈猫、力なくドアをひっかいて倒れる。後、一人の女性がやってきてドアを開ける〉

絵彼女「何の音…?キャッ!猫!?
しかも傷だらけじゃない!」

〈絵彼女、猫の口元にある手紙を目につける〉

絵彼女「これ、なんだろう?」

〈絵彼女、手紙を手に取り、その場に座って手紙を見始める〉


ナレーション

その手紙には、自分、絵描きが家を飛び出した日からこの黒猫に出会って起こった事の全てが書かれていました。
今目の前に虫の息で倒れている黒猫がどれ程自分にとって大きい存在であったか、そしてどれ程辛い運命の中を彷徨い、生きてきたかも。手紙を読み終えると彼女の目には、手では拭いきれないほどの雫がこぼれていました。
そしてゆっくりと絵描きの彼女は黒猫の腹に手を当てました。


絵彼女
「もう、息をしていない……。」

絵彼女「本当に、本当にありがとうね…。私、貴方がここに来てくれなかったら、あの人の本当の気持ちが一生理解できなかったかもしれない。でも貴方はその気持ちをずっとずっと遠い所からここまで運んで来てくれたんだね。
手紙を必死に守りながら。」

〈ゆっくり腹部をさする〉


ナレーション

絵描きの彼女は、その後動かなくなった傷だらけの黒猫を手に抱え上げ、自分の家の庭に墓をつくってやりました。その墓には、こう書かれたそうです。

絵彼女 「出来た……。天国に逝ってもあの人と仲良くしてあげてね。

逞しい、〝聖なる騎士″さん。」

ナレーション

絵描きの彼女は、〝Holly Night″という元々の名前にアルファベットを一つ加えてやりました。そして元々の名前と同じ音で

〝Holly Knight 聖なる騎士 ″と呼んだのです。またあの世で絵描きと黒猫はきっと巡り会えるでしょう。この猫に今度は〝不幸″ばかりでなく、沢山の
〝幸福″がありますように……

終わり

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