見出し画像

夜の公園で歌手と会う話 part4

前回の選択肢→7スキ/0コメント:④→無視する

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

向こうに認識されていない事が予想外だった僕だったが、いざ思い通りの事が予想外の後に起きたとしても、僕は彼女に返事をする事が出来なかった…。

それは何故か?

高岡は一年前、すでに亡くなっているのだ。

先程まで僕は彼女に対して平然に振る舞っていたが、たった今この事実を思い出した瞬間、背筋が凍り付き、その場から動けなくなってしまった。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

高岡は、高校を卒業する半年くらい前から学校に来なくなった。

僕は2組で高岡と同じクラスだったのだが、なぜ彼女が不登校になってしまったのかは、その時全く知らなかった。

うちのクラスは皆仲がいいし、いじめが無いのは自分でも分かっていたので、どうせ学校との価値観の相違やらなんやらでグレているんだろう。そういう反発したくなるお年頃だと思うし、そんな気にしないでおこう。

高岡が不登校をし始めた当時は、それぐらいに考えていた。

しかし、卒業式を二か月後に控えた日を迎える頃、僕らのクラスはついに陰鬱ムードと化していた。

高岡が学校に来なくなってから、四ヶ月が経過した頃である。

普通ならばこの時期は、皆最後の名残惜しさを感じながらクラスで一体となり、遊んだり笑ったりして卒業式という日を迎えるんだろうけれど、僕らの教室の世界は、それらとは真逆だった。

僕のいた2組は1組に比べ一体感がとても強く、体育祭の時なんかは皆で案を出し合ってデザインしたオリジナルのTシャツを着て校庭に出陣するのがお決まりのイベントである。他のクラスや教員の人達が、「今年は何を作ってくれるのだろうね。あいつらは」などとデザインを毎年期待しているので、2組のTシャツお披露目ショーはそういった人達の一つのお楽しみイベントともなっていた。

そう、クラスメイト一人が欠けているだけでも教室の空気がこの様なあり様になってしまうのは、2組の一体感の強さ故なのである。個々が感情を共有し合い悲しめるというのは、強みであると同時に、弱みでもある。

高岡が不登校になり、その日数が増えていくにつれ、ムードが遷移していったのはいうまでもないが、‟トドメ”となったのは、学の彼女である島村涼子(しまむらりょうこ)からの伝言だった。

10月の中旬頃、昼休み中に僕が教室のマイデスクに突っ伏して寝ていると、ゆさゆさと学が僕の頭を揺すってきた。

顔を上げると、そこにはいつもと違った面持ちの学と島村が立っていた。二人の表情から察するに、少なくとも今から良い知らせを聞ける事は無いだろうというのは、僕でも理解できた。

「どうしたの?」

「今、いいか?ちょっと大事な話があって…」

クラス内のがやから拾った内容だが、島村と高岡は違うクラスだがどうやら仲がいいらしく、放課後はいつも一緒に下校していたらしい。

普段は、学ですら昼休み中2組に顔を出すことはそうそうない。なのに島村もいるという事は、高岡に関してなのだろうな…というどうでもいい推測をし、僕は二人の話を聞くことにした。

「うん。わかった」

僕がそういうと二人は教室を後にし、僕もその背中を追うようについていった。

話をするために変えた場所は、校舎の屋上に続く階段の踊り場だった。

「じゃあ、まず俺から話すけど、いい?」

島村がゆっくりと首を縦に振り、学が島村に会話の許諾を得ると、学もゆっくりと話し始めた。

「あのな。高岡さんの事なんだけど、悟、彼女について何か知ってることあるか?」

「僕が?いや、知らないな。分かってるのは、高岡さんが不登校になってしまったっていう事実だけだ」

「そっか…そうだよな。一応、何か情報あればと思って聞いてみたんだけど」

会話の入り方としては、どうも違和感を感じる。わざわざ場所を変えてまで二人が話したい事があるという用件のもとここへ来たのに、そちら側が情報提供を要求してしまっては、本末転倒な気がするが…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◎選択肢◎

❶⇒「どうしてそんなこと聞くの?」

❷⇒その場を立ち去る

❸⇒「ここに呼んだ理由は?」

❹⇒「高岡さんに何かあったの?」


誤字脱字、言葉の使い間違え等ありましたら遠慮なく言ってください( ;∀;)




















この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?