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This is startup - 「アオアシ(青井葦人)」~コンバートで得た俯瞰力~


【要約】

このブログ記事では、知財の専門家である著者がスタートアップの知財責任者としての経験を通じて学んだ教訓を共有しています。彼は、スタートアップで直面する日常的な課題が従来の知財の範囲を超えており、解決策を見出すためには決断力と持続力が必要だと述べています。著者は、このような環境で重要なのは課題分析能力と俯瞰力であり、これらの能力は慣れない仕事を経験することで培われると説明しています。彼はサッカー漫画「アオアシ」に触れ、主人公のポジション変更がもたらした視野の広がりと同様に、スタートアップでの兼務やコンバートが新たな視点と学びを提供することを示唆しています。スタートアップでの使命は会社の成長であり、変化に適応し、全体を見渡せる能力を持つことが成功に不可欠であると結論づけています。

Chat GPT 4

はじめに

知財の専門家として職業人生を歩んできた。
スタートアップには知財責任者としてジョインした。

しかし、スタートアップの中で見た事象(解決すべき課題)は、僕の知っている知財のそれではなかった。

解き方も分からない。
誰も正解を教えてくれない。

決めて正解にする。

これは、経営者が常日頃から投げかけている言葉だ。

そのためには、決める力(決断力)と正解にするまでやり抜く力(グリッド)が必要だ。
この点について、スタートアップの中の人に異を唱える人はいないと思う。

このうち「決断力」を左右する能力は、課題の分析力である。
そして、課題の分析のために重要な能力の1つに、俯瞰力(視野の広さ)が挙げられる。

では、俯瞰力は、何で培われるか。
僕の解は兼務である。

慣れない仕事を通して見た世界。
これを、大好きなサッカー漫画「アオアシ」を題材にして解きほぐしていきたい。

アオアシとは

「アオアシ」は、地方の高校でフォワードとして活躍していた高校一年生「青井葦人」(アシト)が、東京のユースクラブに入団し、プロを目指すスポーツマンガである。
あまりにはまってしまった僕は、アニメから入って、速攻でコミック全巻をポチった。

アオアシには、スタートアップに関わる知財家が学ぶべきところがたくさんある。
(アオアシは、ビジネス書になるくらいに示唆に富んでいる)

前提知識(アオアシ)

登場人物

  • 青井葦人…フォワード → サイドバック

    • アオアシの主人公であり、この記事の主役。自信が望むフォワードとして東京のユースクラブ「エスペリオンユース」に入団した後、自信をスカウトした福田の方針によってサイドバックにコンバートされ、その才能を開花させていく。

青井葦人
【出典】TVアニメ『アオアシ』公式サイト
  • 福田達也…ユース監督

    • エスペリオンユースの監督。アシトの才能を初期に見抜き、エスペリオンユースにスカウトした後、アシトをコンバートする。

福田達也
【出典】TVアニメ『アオアシ』公式サイト

コンバート

福田は、葦人をフォワードとしてエスペリオンにスカウトした後、サイドバックへのコンバートを命じる。

葦人は、フォワードへのこだわりを捨てきれないままサイドバックとしてプレイを重ねるうちに、ピッチの全体と全プレイヤを視界に捉えることができるサイドバックというポジションで天性の才を開花させていく。

サッカー漫画と言えば、ミッドフィルダー(キャプテン翼)やフォワード(蒼き伝説シュート!)がフォーカスされてきたが、「アオアシ」は、これまでのサッカー漫画では陽の光が当たられてこなかったサイドバックに焦点を当てたレアな作品だ。

This is startup

スタートアップで働く人間の使命

スタートアップで働く人間の使命。

それは言わずもがな、「会社の成長」である。
会社を成長させるために、経営者は給与を社員に支払っている。

ピッチに立ったサッカー選手の使命が「勝利」であるならば、スタートアップで働く人間の使命は「会社の成長」である。

コンバートは突然に

スタートアップにおいて、事業ピボットや組織ピボット(組織変更)は日常茶飯事である。

ピボットは、成長ベクトルを変える。
だから、変更前の成長ベクトルに親和していた人材は、変更後の成長ベクトルに親和しないのだ。

僕は、自ら望んでもなく、専門領域(知財)に加えて、非専門領域(人事、広報、法務)を任されてきた。

スタートアップには前触れというチュートリアルはない
いつだって突然だ。

未経験領域での仕事は大変だ。
そして、その分の学びがあるのも事実。

未経験領域の学びを、元々の専門領域である知財に即座にフィードバックできる。
これが、兼務によるバフである。

その結果、全体の動きが見えるようになった。
いや、「視座の可動域が広がった」と言った方が適切だろうか。

会社や事業の現在地(as is)と目的地(to be)を常に視界の中に捉える癖がついた。
知財の仕事をしていても人事の観点を意識するようになったし、広報の仕事をしているときに知財の視点を入れるようになった。
複数の領域を複合させて、現在地から目的地までの経路をナビゲーションする。
これが兼務に求められるパフォーマンスであろう。

未経験領域での仕事は、経験則で倒せない強敵である。
であるから、倒すまでのシナリオを自然と考えるようになった。

  • 現状からどう変化させるべきか

  • そのためにどのようなステップを踏むべきか

  • 万一倒せないときの改善プランはどのようなものか

  • 改善プランを作る前提で序盤をどう戦うか。

このような仮説的シナリオを自然と創作するようになった。

仮説を作るまでのリードタイムも短くなった(正確に言えば、考える前に体が動くようになった)。
敏捷性が上がったのだ。

専門領域で培ったプレイスタイルが通用するところと通用しないところも分かってきた。
自分に足りないものも分かってきた。

これらの感覚は、1つのポジションであがいているだけでは味わえなかったと確信している。

サイドバックからスタートアップというフィールドを見渡す。

スタートアップで重要な指標を1つ挙げろと言われれば、それは売上だろう。

赤字覚悟で急成長を目指すのがスタートアップである。
利益を出しても売上が伸びなければ、この要件を充足することはない。

売上を得点だとすると、売上に直結する事業部門はさながらフォワードであり、事業部門の対局に位置する管理部門はディフェンダーということになろう。

以前(アオアシに出会う前)、スタートアップをサッカーに例えて、「ミッドフィルダーが適職である」という記事を書いた。

スタートアップの状況をサッカーに例えると
フィールドには味方プレイヤは8人しかいない。
キーパーは素人でグローブを持っていない。
スコアボードを見ると、キックオフ前から3点ビハインドだ。
残念ながら後半はないかもしれない。
相手(市場)は、スタートアップだからと言って手を抜いてくれるわけじゃない。
もちろん、命題は勝利、負ければチームは解散だ。

こういう状況でピッチに立ったときに、知財家はどうプレイすべきだろうか?

キーワードは、次の3つ。

・ゲームメイカー
・ボールボーイ
・バランサー

弊Blog「This is startup - スタートアップで知財家がハマるポジション -」

しかし「アオアシ」に出会って考えが変わった。

「アオアシ」では、サイドバックを、ピッチ全体を見渡せるキーポジションとして描いている。

ディフェンスとオフェンスの切り替えを現場で判断する。
判断の際にピッチのすべてを参照し、ゴールまでの道筋を動きながら建てる。
ときに点を取り、ときに味方に点を取らせる。

自分のアウトプット(プレスリリースや特許明細書)で、どのように盤面を動かし、それを売上(得点)に繋げるか。

パスを受けるとき(相談時)にゴール(得点までの)イメージを相談者と詰める。

仕事の戦術とサッカーの戦術との間には、共通点が少なくない。

このとき、言葉や言語にとことんこだわり、得意の概念整理や構造化のスキルを惜しみなく投下する。
専門領域で得たスキルは、俯瞰力と得点力の両立を求められるポジションで効果を発揮するものであった。

そういう意味で、兼務というポジションは、知財領域を専門としてきた僕にとっては天職なのかもしれない。

まとめ

兼務やコンバートを受け入れると、その先に待っているのは葛藤である。

このことについても、「アオアシ」ではしっかり描かれている。
アシトは、フォワードを外されたショックから立ち直り、サイドバックというポジションを通して、サッカーの本質に迫っていく。

スタートアップにおけるコンバートは、会社や事業の本質の扉を開ける効能がある。
しかも、人が足りないが故に兼務でその世界線に立てるのだ。

そういう意味で、兼務というポジションは、知財領域を専門としてきた僕にとっては贅沢なのかもしれない。

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