もしもシリーズ「もしも知財家が開発合宿に参加したら」
「もしもシリーズ」
知財家が、「一見すると知財業務ではない」ことに守備範囲を広げることが、これからの知財家の生命線だと思う。
「もしもシリーズ」では、そんな守備範囲の拡大について私見を綴る。
はじめに
都内近郊で行われた開発合宿(1泊2日)に参加した(正確には、半ば強引に参加させてもらったw)。
Wikipediaによれば、「開発合宿」は以下のように定義されている。
そんな開発合宿に、知財家が参加する意義は果たしてあるのか?
実際に参加してみると、多くの学びがあった。
開発合宿で気づいたこと
ディスカッションのボールコントロール
知財家とエンジニアが共同で行う仕事の代表例は、「発明発掘」だろう。
発明発掘で重要なポイントは、課題のコントロールだ。
課題はボールみたいなもので、油断してるとあらぬ方向にコロコロと転がってしまう(僕はこれを「大喜利化」と呼んでいる)。
議論の発散は必ずしも悪ではないが、ボールコントロールは必要だ。
これは、発明発掘に限った話ではない。
日常業務から察するに、実際の製品開発に携わっているエンジニアは、具現化系の能力を持った人種で、知的財産(無形資産)に携わっている知財家は、抽象化系の能力を持った人種だ。
具現化系の能力者であるエンジニア同士のディスカッションに、抽象化系の能力者である知財家が入る。
つまり、異物を投入する。
多少の議論の脱線や遠回りを経て、1つの答えが導き出される。
エンジニアと知財家が一緒に仕事をする一番のメリットがまさにこれに尽きる。
特に、開発合宿で行われるディスカッションは、普段の会議よりも時間の制約が小さい。
具現化と抽象化を往復する時間が十分にある。
それにより、答えがシェイプされていく。
まるで、異なるスタイルのアーティスト同士で、共同で石を削る彫刻のようだ。
「こんなのが特許になる」話
エンジニアなんて、好奇心の塊だ(少なくとも僕が知ってるエンジニアの大半がそうだ)。
スタートアップでは、大企業で発明経験のある人からフリーランス出身の人まで、多彩な人種が揃う。
そういったエンジニアに「こんなのが特許になるんだよ」という話をするだけで、期待を超える反応が返ってくる。
「あー、予算厳しいけど、出してあげたい。」
「こういう反応を示すエンジニアの発明こそ、後で化ける気がするんだ。」
開発合宿は、発明入りの宝箱がごろごろ転がっているダンジョンだ。
やっぱりTECHが好き
エンジニアが隣でキーボードを叩くと、モノが完成に近づく。
エンジニアが目の前で技術論を交わすと、知識が共有される。
雑談では好きなガジェットの話に花が咲く。
スタートアップのインハウスの知財家は、特許の仕事ばかりやっていられないのが日常だ。
それでも、開発合宿で腰を据えてエンジニアと話すことで、「テクノロジーって本当にいいもんですね~」という気持ちを思い出す。
むすび
開発合宿に限らず、知財家が入ることで、エンジニアの脳内の本質が顕になることがある。
ときに議論をミスリードすることもある。
でも、それは1試合におけるワンプレイに過ぎない。
ミスを恐れず、堂々と異物として振る舞う。
それによって、新たな価値が生まれる。
ゴールが決まるまでチャレンジを続けることが重要だ。
だって、知財家は、インタフェース(ボールを運ぶポジション)が最もハマる。