後記「弁理士会セミナー This is startup もしも、創業期のスタートアップに弁理士が参画したら」
【要約】
サマリ
日本弁理士会の研修講師を初めて務めた。
お題は、「This is startup もしも、創業期のスタートアップに弁理士が参画したら」。
テーマは、スタートアップのリアルだ。
日頃、「同業者に時間を使って頂く価値のある話はあんまりないんだよなー」と思っていて、弁理士会の研修講師って柄じゃないと自認しているのだが、同期合格の友人でもある飯村弁理士(ふたば大樹知的財産事務所)からのオファーだったので重い腰を上げた。
とはいえ、どうせやるなら爪痕を残そうという想いで、伝えたいことをいろいろ思案したが、「いったいスタートアップとはどんなところなのか」をお伝えすることが、自分が提供できる価値が最も高いだろうし、それを知った弁理士が1人でも増えることが、ひいてはスタートアップのためにもなると思って1時間マシンガントークで走った。
完全オンラインでの開催に350人の方が時間を使っていただいたみたいだ。
ご清聴、ありがとうございました。
【登壇テーマ】
This is startup もしも、創業期のスタートアップに弁理士が参画したら
テーマは「スタートアップ」
60分の講演に60枚超のスライドを用意して、とにかく「スタートアップ」、「スタートアップ」、「スタートアップ」と連呼した気がする。
「特許」や「商標」といった言葉はほとんど使わなかった。
僕のこだわりである定義に沿って「知財」という最上位概念に「スタートアップ」をかけあわせて、実体験でメッセージを補強するスタイルを採った。
ペルソナは、特許事務所の弁理士と大企業の弁理士の両方とした。
実際の参加比率は、特許事務所:大企業=2:1くらいだったみたいだ。
正直言って、スタートアップを軸としたときの特許事務所向けのメッセージと大企業向けのメッセージを混在させたくなかったのだが、大企業の弁理士も想像以上に参加して頂くことがわかったので、抽象度を一段あげて対処した。
講演の大テーマは、次のとおり。
第1章 スタートアップとは何か?
スタートアップの定義は諸説様々であるが、スタートアップの中を見た弁理士が弁理士向けに伝えたいこと、という観点でまとめたのが上の3つだ。
「成長戦略」
スタートアップとは、赤字覚悟で急峻な成長を目指す会社である。「スピード」
スタートアップのスピードが速いには、ランウェイが短いからである。「多刀流」
スタートアップに常に不足しているのが「人材」である。
第2章 スタートアップのリアル
第2章では、僕の体験談に絞ってお話した。
上記のとおり、「特許」や「一般的な知財」の話は一切なしw
敢えて言えば、「そんなことよりもっと重要な課題がたくさんある。それを弁理士がやることにどんな意味があったのか」ということをお伝えしたかった。
売上貢献
特許を出すより売上に貢献することをやろう。契約
契約のデリバリーフローの中に身を置けば発明発掘は撲滅できる。人事
MVVは知財であり、人にレバレッジをかけるという意味において多大な貢献が期待できる領域である。広報
広報と特許実務は一致点が多く、広報で得た学びは特許実務にも還元できる。
話せないことも多いので、かなり間引いてしゃべったのだが、何人かの方から頂いたフィードバックを見るに、弁理士のスキルが通用する領域の広がりはお伝えできたのではないだろうか。
第3章 さぁ、スタートアップしよう!
第3章では、特許事務所の弁理士&大企業の弁理士に向けた「チャレンジしようぜ」というメッセージを込めた。
【特許事務所の弁理士向けのメッセージ】
特許事務所の弁理士向けのレジュメを作っているときに思ったのが、「なんて当たり前のことを偉そうに書いているのか…」という違和感だ。
しかし、当たり前のことをやるのは難しい。
特許事務所に発注するお金は、元を正せば経営者が決めた経営戦略に沿って知財部に配布されたものだ。
経営者はその予算に「こういう課題を解決して欲しい」という想いを込めているはずだ。
であるならば、経営者から直接課題を聞くことがまず第一歩である。
「何を当たり前のことを」と思われた方もいらっしゃるだろうが、本当にこれに尽きる。
逆に言えば、経営者の課題を解決するなら、その方法は何だっていい。
特許出願は経営者の課題解決の手段の1つに過ぎないのだ。
【大企業の弁理士向けのメッセージ】
続いて、大企業の弁理士に向けたメッセージ。
ここでは、「オープンイノベーションに関与して欲しい」ということをとにかく強調した。
大企業の知財部の方でオープンイノベーションのミーティングに出てくる方は未だに多いとは言えない。
しかし、僕の経験上、うまくいくオープンイノベーションというのは、双方の知財部が1つのゴールに向かって契約から特許戦略から、もっと言えば事業計画のところにまで知恵を絞って1つの答えを導くものだ。
逆に言えば、知財部が書面でしか会話をしないオープンイノベーションはうまくいかない。
これは本当にそう思う。
特許庁が発表した「事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進のためのマナーブック」でも、「理念・目的の共有」という言葉で同じことを述べている。
理念・目的を理解していない人間がオープンイノベーションに関わってもうまくいくわけはない。
これは弁理士も例外ではない。
本気でオープンイノベーションを促進したいのであれば、大企業の弁理士がオープンイノベーションに関わるべきだし、そういう弁理士が増えると、オープンイノベーションの成功も速度も激上がりするだろう。
契約書のドラフトを受け取ったときに初めてオープンイノベーションの背景を理解するのでは手遅れなんだ。
是非、契約交渉のミーティングではなく、キックオフミーティングから参画して欲しい。
(僕もすべてのキックオフミーティングに出れているわけではないが、キャッチアップだけは怠っていない)
むすび
初めて弁理士会の研修講師を務めたが、いやはや、同業者に講義をするというのはなかなかにハートが鍛えられた。
元同僚でもある森田弁理士(大野総合法律事務所)からこんな感想メッセージを頂いた。
これは本当に嬉しかった。
そう。
「感」で伝わることが大事だった。
他にも「感」じて頂いた方がいらっしゃったのであれば、幸いである。
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