summary16:コンビニ人間を読んだ
小説は年に一冊読むか読まないか程度ですが、タイトルと装丁が目を引いて気まぐれに買ったけど積みっぱなしで、2年たった今読んだ。
かかったのは3日、合わせて6、7時間くらいで読みきれるものだった。
感想
ひと通り読んで、最初に少し恐怖を感じた。合理的すぎるこの思考は、実際に存在したらなかなか異彩を放つだろう。
けど、身の回りにすごい天然の人とかちょっと抜けている人って、案外このような扱いされているのかもしれない。いないところで変人扱いされてたりとかはよくある話だとおもう。
会話の中でも、独身の人には、結婚について聞いたりとかは、自分自身からはそんな話しないけど、上の世代の人と話をすると普通によくある話。
一つの意見として、見方を変えると自分のこどもだったらどう思うかとまで考えた。
自分がどっち側の人間とかじゃなくて、対人のとしてどうかを考えさせられる話だったと思う。
気になったこと
時代が変革していき、多様性が主張されてきた昨今であるが、やっぱり未だ残る「結婚至上主義」「正社員至上主義」が主導権を握っていると実感している。
要因は社会的にあらゆる要因があると思われる。均一的な義務教育や、昭和の働き方を叩き込まれた世代が、上司になっている。高齢化社会で、自分たちの価値観(これまでの風習とか)が当たり前である世代が多数派であることとか、多角的に言われ出してきたと思うけど、現実的に浸透していない。
そうなると、就職しないとおかしい、結婚しないとおかしい。その辺はどうなっているのか?と干渉される。
自分も結婚してるし、正規職員である。その恩恵も十分に受けていると思う。
変なプレッシャーも勝手に感じたりしたけど、そんなのもいろいろ勘案して就職もしたし、結婚もした。納得している。
だから、自分の結婚観など絶対に他人に押し付けない。自分で考えることだから。
個人的にはこの押し付けがましい構図が変わるには、あと20〜30年はかかるのではないかと思う。
そんな中でも、メディアでは意識改革の主張が大きく言われてきたと感じている。とことん変化を嫌い、他と違うことを恐れ、従順な国民性だと思う。
今活躍している人は、そのおかげで逆張りが効いた事業を起こせているのもよくわかる。
あとは、いわゆる普段テレビぐらいしか見ない層とかに、どう伝えていくかが今後の鍵なんだと思った。
以下、概要とあらすじ(個人的まとめ)
概要
村田沙耶香による日本の小説作品。2016年、第155回芥川龍之介賞を受賞した。
あらすじ(注意:結構ネタバレ)
コンビニで働く36歳独身女性が主人公の話。
主人公は、幼い頃からその合理的すぎる感覚のせいで、周りや家族に不審がられ、合理的すぎる行動が迷惑を生み出してると子供の時に気づいてからは、周りを不審がらせないように「普通」を他人から取り入れて演じきって生きてきた。
感情がこれといってなく、何を基準に生きて生きていけばいいのかわからない中で、18歳で始めたコンビニバイトに出会った。
コンビニ店員という基準のおかげで、コンビニ店員になるだけで周りと一緒になり、「普通」になれる。
一緒に働く人や、店員から形成された人格によってできた友人から、「普通」の話し方を吸収するが、個人的な感情や欲はない。
18年間も同じバイトで働くことで、まわりの「普通」の人はだんだん不審がる。
なぜバイト?就職しないのはなぜ?結婚しないのはなぜ?
その手の会話には、妹から教えてもらった「体が弱い」とか「親の介護がある」などの言い訳も用意して乗り切っていたが、36歳という月日の経過が、その言い訳を通じなくさせていた。
友人がたくさん集まるところに参加した際も、結婚していないことから少数派になり、少数派である確固たる理由も特にないことから、自分のことをよく知らない人からも、勝手な想像と、干渉を受ける。
ある日、容姿も性格も変わった男がアルバイトに来た。
いわゆる社会不適合者で金にだらしなく、過度な自己中心的思考で男尊女卑、都合が悪くなると、この世は、縄文時代から社会のシステムは変わらず、ムラ社会が一般常識であり、自分は除去される存在であるため、不遇を受けてきているとの事。
案の定、その適合できない言動によりコンビニからも除外された。同僚や上司からも、非難や勝手に干渉を受けていた。
主人公はこの男が、コンビニのお客をストーカーしているところに遭遇する。
そして、男はルームシェアの家賃を滞納して追い出されていた。いつも通り、自己都合とムラ社会のせいにして言い訳をしてきた。
主人公はその時、独身でバイトのみという状態を、干渉されることについて、自分もなんとかしたいと思っていた。
そこでこの男を家に住まわることを提案した。感情は何もなくても、状態として同居であることを話すことができる。
男は、いつも通りの言い分や文句を言いながらも、居候することに了解した。自分のことは、隠すことを条件として。
周りの友人や妹は、その同居状態を知って、勝手な想像をして大変喜んだ。
ムラ社会の仲間と認められない行動をこれまでしていたが、やっと「普通」になった。こっちに来たと勘違いして。
しかしながら、男が無職であることや、男を知るコンビニの同僚に不意なことからバレてしまったことから状況が一転する。
同棲(同居)相手は無職で自分はアルバイトの状態であることが、さらに不審を増幅させた。実も妹も家に押しかけて来て、男と会い、今まで我慢してきたものが爆発した。どうしたら「普通」になれるのかと。
自分が唯一基準を持って生きることができるコンビニでも、これまでは無かった勝手な想像と干渉が始まる。店員という規律により関係を紡いでいたものも、ただのムラ社会で有ること知った。
唯一のコンビニにも居場所がなくなった。そして18年間務めたコンビニを辞めた。
とてもあっさりと。所詮、除外される存在だったのだと理解した。
そして主人公は、抜け殻のようになった。起きてなにかを食べて寝るだけ。
これまでは唯一の居場所であるコンビニのためだけに生きてきた。健康管理も仕事のうちということをかつての店長から教えられて以来、生活リズムもコンビニで健康に働くことを中心に規則正しく生きてきた。
いつも考えているのはコンビニのことばかり。夕方のこの時間は…深夜のこの時間帯は…など、頭の中にあるのもコンビニ音だけである。
お互い無職の状態が続き、わずかながら貯めた貯金を切り崩して生活するのも厳しくなってきた。
男は、収入源の確保と、どちらかが就職している状態を作り出すために主人公を就職させようと求人を探し出す。
年齢と職歴から、面接すら受けれない事が多くあったが、やっと面接までこぎつけた契約社員の面接を取り付けた。
久々にスーツを着て、面接会場に向かった。男は付き添いで来た。
駅を降りて、男が用を足すとコンビニに入った。自分もあとを追うように入店した。
時間はお昼の12時のピーク時。オフィス街であり、サラリーマンやOLで混み合っていた。
その光景を目の当たりにした時、一番にコンビニのことを考え行動してしまっていた。かつて、店員や社員でもないのに、勝手に棚を整理していた人のように。
店員や他の客から見ると、不審な行動に見えたが、たまたまスーツであった事が、本社の人間と勘違いさせて、その場はなんとも無かった。それどころか、バイトをバックれられたり、新人と二人でピークの中、社員も捕まらない状態で困っていた店員に感謝された。
男はその状況を見て、主人公を店の外に連れ出して怒った。なにをしているんだと。
その時自分は気づいた。人間である以上にコンビニ店員という動物であるということを。
男が怒鳴りつけている間も、頭の中はコンビニのことで頭がいっぱい。
男は、そんなことは、ムラ社会では許されない。と怒り続けた。
主人公は、たとえムラ社会から除外されようとも、家族を安心させられないとしても本能的にコンビニのための生き物であるということを伝えた。
男は、お前なんか人間じゃない。絶対に後悔する、と言い放ち去っていった。
主人公は、さっきからそう言っているのにと思った。
そして、面接の断りの連絡を入れ新しい店を探さなくては、と思う。
コンビニのガラスに映る自分を見て、コンビニのために存在する、意味のある生き物と実感した。