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火とナイフとバイク

火とナイフとバイク。
コロナ禍の中で見つけたこれらの趣味は、ただの時間つぶしではなく、まるで芋虫が蝶になるくらいに自分の人生を変えた。

なぜ始めたのか? 簡単な話、コロナのせいで世界が縮小し、自分の時間が増えたことと、単純に外に出たかったこと。
最初に始めたのは魚捌き。YouTubeでプロの料理人たちがテクニックを惜しげもなく披露しているのを見て、ただ見よう見まねでやってみた。コロナ禍で流通も滞ってしまい、個人が漁師さんから直接珍しい魚を手に入れることもできるようになっていた。
1年間、ほぼ毎日のように魚を捌き続けたら、それなりに包丁を使えるようになった。

そして、自分がコロナにかかったこと。それが、かなりのインパクトだった。最初は"人生終わったかも"と思った。あの頃は世界中が得体の知れぬ殺人ウィルスが拡散していくことに恐れ慄いていた。
その後、自由な移動ができない。直接人に会えない。これがどれだけストレスフルか思い知らされた。外の世界への渇望。回復後、外で思い切り楽しみたいという気持ちが芽生えたと思う。
外に出る口実が欲しくて、キャンプインストラクターになるのはどうか?と思いついた。しかし皮肉にもその講習はオンラインだった。残念。
しかし、その流れでリアルでワークショップを開催していたBBQ検定に出会い、そしてすっかりBBQの魅力に取り憑かれてしまった。

自分の知っていたBBQと違っていた。
それは本格的なアメリカンBBQ。大きな肉を調理し、友達を招いて料理を楽しむ。ただワイワイと盛り上がる屋外焼肉ではなかった。
本質はコミュニケーション。人と人とをつなぐ交流の場づくり。それはまさに自分が求めていたものだった。

バイクはもっと別の話。元々バイクは怖くて避けていたのだけど、火、ナイフ、バイクの「三種の神器」をマスターすれば、きっと人生が面白くなると思い挑戦した。
バイクに乗り始めて、本当に目が覚める思いだった。今まで体験したことのないスピード感。目から入ってくる映像も恐らく自分の脳にとっては新しいものだったはず。全身のセンサーが研ぎ澄まされて、ダイナミックに活性化したようだった。
危ない機械に跨り、安全にカッコ良く乗りこなすために運動を習慣化し、中年のだらしなかった体もみるみるリーンなガッチリ体型に変わっていった。

これらの趣味はただのアンチエイジングを超え、まるで生まれ変わったかのような感覚をもたらしてくれた。そして何より、クリエイティブな精神がより強く根付いた。

そしてAI時代、アタマの能力は飛躍的に高まり、アウトプットは格段に早く質の高いものになる。間違いなくクリエイティブにおいても、AIの方が人間より高い能力を既に持っていると考えた方が良い。
一方で人間としてのクリエイティビティを発揮すべきところは必ずある。それはよりフィジカルなものであるのは間違いない。
この「火とナイフとバイク」は、ただの道具以上の意味を持っていた。身体を使い、少々の危険を伴う道具を扱うことで人間の持つ感覚が研ぎ澄まされる。この身体を使った思考が、真のクリエイティビティを引き出すカギだと私は信じている。

アタマだけでなく、身体全体、ハラワタからも生まれる創造性。それこそが、AIと共存する未来で私たちが目指すべき方向だと確信している。

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