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テクノロジー・ルネッサンス : 人類総クリエイティブ時代の到来

歴史を遡ると、ギリシャや古代ローマ時代では、クリエイティビティが神秘的な力、人間の外部に存在するものと信じられていました。しかし、14-16世紀のルネッサンス時代に至り、創造性が個々人の内部に宿る能力であるとの認識が生まれました。"人間の創造力"という概念が、ホモサピエンスが数十万年の歴史を持つ中で、 たったの500年間とは驚くべきことです。

ルネッサンスは、学問や芸術が権威から実践的な活動へと焦点が移った時代です。活版印刷の発明によって情報の共有が容易になり、これが人間の創造性を爆発的に引き出すきっかけとなりました。

現代において、クリエイティビティは特定のアーティストやクリエイターに限定される特別な能力と見なされがちです。この100年の間、工業化中心の社会となり効率化が重視され、人々は決められたルールに従い生産活動に従事することが期待されました。教育システムもこの考え方を反映し、指示に従い、決められた仕事をこなす人材を育成することに焦点を置いています。

幼少期は無邪気に創造的な活動に没頭していても、年齢を重ねるにつれ、多くの人々が創造することに対する苦手意識を抱くようになります。実際、多くの人が「自分には創造性がない」と感じています。一方、プロのアーティストやクリエイターも、自分の創造的な限界を常に恐れ、次の作品を生み出せるかどうかの不安を抱えています。

エリザベス・ギルバートさんのTEDトーク「創造性をはぐくむには」は、この問題に対する洞察を提供します。彼女は、プロの作家としてのクリエイティビティを高め、作品を生み出す際の不安や葛藤とどのように折り合いをつけるかについて話しています。この話は多くの人にとって共感を呼ぶものですが、その内容は一部のプロフェッショナルなクリエイターの話しでした。


しかし、テクノロジーの進化が再び私たちの価値観や振る舞いを変えようとしています。今日、誰もが情報発信者になれる時代です。ポケットに収まる高性能コンピューターを常に持ち歩き、情報収集から編集まで、手のひらの上で行えるようになりました。
さらにAIの進化は、クリエイティビティの領域に革新的な変化をもたらしています。人間の創造力とAIの能力が融合することで、新しい種類のアートが生まれ、新しい表現の可能性が広がっています。人間とAIの共同作業は、アートだけでなく、科学、教育、ビジネスなど多様な分野で新たな発展を促すでしょう。

テクノロジーがもたらすクリエイティビティの新時代は、ギリシャ時代の神秘的な創造性の精霊や、ルネッサンスの時代の人間中心の創造性を経て、全ての人々にとっての当たり前のものへと進化していきます。
これからのクリエイティビティは、私たち自身の創造性とAIの可能性が結びつき、未知の芸術やイノベーションを生み出す土壌となるでしょう。これはただの技術進化ではなく、私たちの思考や価値観に対する根本的な変革を意味しています。

近い将来、テクノロジールネッサンスと呼べる時代が到来し、それは私たち一人一人がクリエイティブな力を持つ時代となるでしょう。クリエイティビティは特別なものではなく、私たちの日常生活の一部として組み込まれることになるのです。そして、私たちは皆、それぞれの方法で創造的な力を発揮し、新しい時代を築いていくことでしょう。

"クリエイティブ"を歴史の流れで考察 D.Sawai
・AIがギリシャ時代の精霊のように創造を外部化させる
・ルネッサンス時代のように広く個人が創造性を発揮する

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