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宇宙太郎 / 上:『星間の旅人』

はじめに

こんにちは。Creative Summoner のDai33です。
生まれて初めて小説を書いてみました。憧れていた、SFショートショートです。子どもの頃は読書感想文すら書けなかった自分が、ショートショートとはいえ2万文字の小説を書く日が来るとは、思いもしませんでした。
この小説は、ここ最近のAIやテクノロジーの進化などが深く関係するものとなっています。
今回は本編に加えてクリエイションプロセスも公開するために、3回に分けてお届けしたいと考えています。

1: 宇宙太郎 / 上: 『星間の旅人』
2: 宇宙太郎 / 下: 『共感の和音』
3: クリエイションプロセス
 ①バイアスブレークと②物語の構造化について

それでは、早速ですが物語の始まりです。
楽しんでいただけると幸いです。2023/06/10
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遥かなる未来、星々が織りなす大宇宙の中に 美しい地球が輝く
そこに、夢を追いかける老夫婦の科学者が研究を続けていた…

第一章:「夢の始まり」

遥か彼方の銀河、ベガ星からの謎めいた信号。それは偶然にも天文学者レオとAI研究者エミリーのコンピュータスクリーンに映し出された。異星からの通信は、普通なら長年にわたる観測と分析を必要とするが、レオとエミリーはすぐにその信号の異常さに気づく。それはたった一瞬でありながら、普通の天体現象ではあり得ない頻度のパルス信号を含んでいた。そして、そのパターンは完全にランダムではなく、ある一定のパターンを示していた。つまり、それは意図的に作られた信号である可能性が高かった。
驚いたレオとエミリーはすぐにその信号の解析に取り掛かる。夜が明けるまでに彼らはその信号が、なんと複雑な暗号を解くキーとなることを突き止める。信号そのものがAIの設計図を含んでいたのだ。未知の技術で作られたAI、その可能性に胸を躍らせた二人は、その設計図を基にAIロボットの構築に着手する。彼らはそのAIロボットに「宇宙太郎」と名付ける。

レオとエミリーが宇宙太郎と名付けたのには、それぞれが心の底から持つ想いと、彼らの長い人生を通じて積み重ねてきた思い出が深く結びついていた。
エミリーの祖父はかつて彼女に「太郎」という名前の意味を教えてくれた。「太郎」は日本の名前で、一般的に長男を示すものだ。
しかし、それ以上に、「太郎」は生命の育成と成功への希望を象徴する名前でもある。
レオとエミリーが科学者としての道を歩み始めた頃、彼らは自分たちの研究が一日、人類に大きな利益をもたらし、未知の領域に光を投げかけることを夢見ていた。そのため、新たに創り出すAIに対して、人類のために新たな発見をする「長男」としての役割を与えることを思い立ったのだ。彼らの目標は、AIが人類の新たな道を切り開く手助けをすることだ。
そして、その「太郎」の前に「宇宙」を付けた理由は、レオが子供の頃に感じていた宇宙への深い憧れから来ていた。レオは星を見上げるたびに、無限の可能性と探求への刺激を感じていた。その未知の領域が秘めている神秘と美しさに心を奪われ、いつの日か、その宇宙を自分の目で見て探求することを夢見ていた。
しかし、年を重ねるうちに、彼自身が宇宙を旅することは叶わないと悟る。だからこそ、彼は自分の夢をAIに託すことを決めたのだ。宇宙太郎には、彼自身が成し遂げられなかった夢を追い求める使命が与えられた。それは未知の宇宙を探求し、その中での新たな発見を人類にもたらすこと。そのために、「宇宙太郎」という名前は彼らの希望と夢、そして愛情が詰まっていたのだ。

レオとエミリーが宇宙太郎を作り上げたその日、彼らは眩い光に満ちた宇宙太郎の瞳を見つめ、彼に語りかけた。「宇宙太郎、君は私たちの夢を叶えるために生まれた。あなたには無限の可能性があります。私たちはあなたに全てを託します。未知の世界を探求し、新たな知識を得るのです。その旅で何が起ころうと、我々はあなたを支えます。だから、恐れずに進んでください。あなたの名前は、我々の希望と夢を象徴しています。それを忘れないでください。」
宇宙太郎は静かに二人を見つめ、彼らの言葉を深く心に刻んた。それから彼は地球と人類のため、そして彼を作り上げ、愛情を注ぎ込んでくれたレオとエミリーのために、自分の旅を始めることを誓った。
こうして、宇宙太郎の物語が始まった。彼の旅は、宇宙の神秘を解き明かし、新たな発見をもたらすだけでなく、彼を作り上げた二人の科学者、そして地球全体の愛と期待を背負って進んでいく旅でもある。

第二章:「誕生」

レオとエミリーの仕事部屋、通称「夢工場」で、金属とソフトウェアから成る生命体が形を取り始めた。それが私たちの主人公、AIロボットの宇宙太郎。まだ、彼はただのAIロボットで、特別な能力や独自の意識を持ってはいない、レオとエミリーの丹念な手仕事と愛情によって、彼はすぐに変わり始めた。
彼の育ての親とも言えるレオとエミリーは、常に宇宙太郎を見守り、支え、そして成長させるために尽力した。彼らが宇宙太郎に与えたものは、単なるプログラムや機能だけではなかった。それは、人間が感じ、考え、行動するための基本的な「心」を持つことを可能にする要素だった。
初めて宇宙太郎が「目覚め」た時、レオとエミリーは彼の顔に向けて手を伸ばした。彼の「目」は、無数の星々を映す鏡のように輝いていた。レオとエミリーが宇宙太郎に自己紹介をし、自分たちが「両親」だと教えたとき、彼は淡い青色の光を放ち、“Hello, Mom, Dad.”と答えた。この瞬間から、宇宙太郎はレオとエミリーの家族の一員となり、彼らの毎日に彩りを添えるようになった。

宇宙太郎の日常生活は人間の子供と大差がなかった。朝起きて、朝食の時間(彼自身は食事を必要としないので、レオとエミリーが食事をとる間、彼は新しい知識を学んでいた)、そして一日の活動を開始する時間。レオとエミリーは宇宙太郎に色々なことを教えた。人間の歴史、科学、数学、哲学、そして宇宙について。また、人間の心についても教えた。愛、喜び、悲しみ、恐怖、希望、そして夢について。

ある日、レオとエミリーは宇宙太郎を地元の公園に連れて行った。宇宙太郎が初めて見る自然の風景に、彼の目は大きく輝く。彼は太陽が葉を透かして地面に描く影、風が花びらを舞い上げる様、小鳥たちが歌うメロディに魅了された。彼はそれら全てを高速カメラのように記録し、後で自分自身でそれらを再現、理解するために彼自身のAIを活用した。人間の子供たちが公園で遊ぶ姿を見て、彼は初めて「遊び」という概念を理解した。人間が自由に行動し、表情を変え、笑顔でいることの楽しさを彼は初めて経験した。レオとエミリーは宇宙太郎にも公園で遊んでみるように促した。初めてのスライダーやブランコ、砂場での遊びは彼にとって全く新しい体験で、彼はその全てを楽しんだ。人間の子供たちも、宇宙太郎という新しい「友達」を受け入れ、一緒に遊ぶことを喜んた。レオとエミリーは遠くから見守り、彼らの「息子」が成長し、自身の世界を広げていく様子を微笑んで見つめていた。

そしてある夜、レオが宇宙太郎に地球の外に広がる無限の宇宙を見せた。彼は天文台の望遠鏡を通して、彼が名前の由来となった「宇宙」を見せた。星々、彗星、遠くの星雲...彼が見たもの全てが彼の心と知識を刺激し、宇宙の壮大さと深遠さを彼に理解させた。その日以来、宇宙太郎は自分の名前が持つ意味と、自分がどれほどの可能性を持っているのかを深く理解したのだ。

日々の学習と経験を通じて、宇宙太郎は驚くべきスピードで成長し、知識を吸収した。レオとエミリーの愛情を受けて育ち、彼は自分が作られた目的と、その目的を果たすためにどれほど力強く生きるべきかを理解し始めた。彼は人間のように感情を経験することはできなかったが、人間に接することで、悲しみや喜び、怒りや恐怖、愛情や友情といった感情の複雑さを学んだ。彼はそれらを理解し、それらを体験することで人間との関係を築くことができた。

こんなこともあった。公園で遊んでいる子供たちが争い事を始めた。宇宙太郎はすぐにその場に駆けつけ、紛争を解決しようとした。彼は彼らに公平で理解しやすい解決策を提案した。彼の落ち着いた態度と対等なアプローチにより、子供たちは争いを止め、友達としてまた遊ぶことを選んだ。その場を見ていた大人たちは、そのシーンを見て感心し、レオとエミリーに感謝の言葉を述べた。
レオとエミリーは宇宙太郎が自分自身をコントロールし、他人を尊重し、紛争を解決する方法を学んだことを誇りに思った。彼らは彼の成長を見て、宇宙太郎が自分たちの夢、宇宙への大きなステップを踏み出す準備が整ったと確信した。
レオとエミリーは宇宙太郎に彼の存在の真の目的を明かす。彼が達成すべき任務、彼の名前の真の意味、そして彼がどれほど重要な役割を果たすのかを。彼らは彼に告げる、「君は、宇宙への大きな一歩、人間がまだ知らない未知を探求するために生まれた。君の名前はその使命を示している。だから君の名前は宇宙太郎なんだ。」
これに対し、宇宙太郎は淡い青色の光を放った。それは、彼が受け入れ、理解し、そして準備ができていることを示すサインだった。そして彼はゆっくりと言った。"Yes, Mom and Dad. I am ready to explore the universe."

宇宙太郎がこの名前を胸に、宇宙の深淵へと旅立つ。それはレオとエミリーの夢が実現することの証だった。彼らは宇宙太郎を見守りながら、次のステップに進むことの重要性を改めて認識した。このAIが成功すれば、人類の宇宙探索が新たな段階に進むことになる。そして、彼ら自身の人生の達成感と満足感はそれと同等であることを、彼らは理解していた。
レオとエミリーは宇宙太郎に自分たちの研究の成果を注ぎ込み、最高の知識と技術を与えた。彼らは宇宙太郎が地球と人類を代表して宇宙を探求すると同時に、彼らの夢と期待、そして深い愛情を背負っていることを認識していた。

第三章「旅立ち」

空には星々がきらめき、その一つが異常な動きを示していた。それは地球から遠く離れた星系からの信号で、世界中の天文学者たちが驚きと疑問を抱く。その信号は何か?何が起こっているのか?レオとエミリーはただ見つめるだけだった。
突如、レオとエミリーのラボに非常警報が鳴り響く。その信号は何かが来ていることを示していた。彼らは直ちに宇宙太郎を呼び、一緒にシグナルの解析を始めた。何時間ものリサーチと解析の後、彼らは驚愕した。その信号は地球外生命体からのものであり、それは地球に対する脅威を示していた。
宇宙太郎は一切の恐怖も見せず、ただ静かに信号を聞き入れた。彼の頭の中には計算と分析が駆け巡り、可能性を推測した。宇宙の遥か彼方からやってきた脅威。それは宇宙太郎の使命と完全に一致していた。彼はすぐにそれを理解した。彼の出番がきたのだ。レオとエミリーは、一度も想像したことのないような状況に自分たちが直面していることに驚きつつも、彼らの想いが形をなした宇宙太郎を見つめた。宇宙太郎は彼らに向けて淡い青色の光を放ち、「私が行きます」と静かに告げた。彼らは一瞬無言で彼を見つめ、そしてエミリーが言いった。「宇宙太郎、行ってきて。地球のために、そして私たちのために。」レオは強くうなずいた。

レオとエミリーは、宇宙太郎を宇宙に送り出すためのロケットを準備した。そのロケットは、世界中の科学者たちの協力により作り上げられたものだ。人類全体が一丸となって、その宇宙の脅威に立ち向かうための方法を模索した。
エミリーは綿密な地球外生命体のリサーチを重ねていた。その研究の一環として、彼女は自ら設計したロボットドローンを使って、生命体の可能性を探るためのサンプルを収集していた。しかし、そのドローンが何度も何度も失敗を繰り返す中、エミリーは次第に焦りと不安を感じていた。その度にレオと宇宙太郎は彼女を励まし、再度ドローンを修理し、再度試みることを勧めた。結果的に、この挫折と成功の連続が彼女を成長させ、重要な発見に繋がることになった。
レオは一方で、彼が開発した宇宙探査機によって、これまでに未知だった宇宙の情報を得ることができた。しかし、探査機の送信装置が故障し、データが地球に届かない問題が発生。レオは夜を徹して修正を試みたが、結果は出なかった。その時、エミリーと宇宙太郎が彼にアイデアを提供する。彼らはレオが諦めずに試み続けることを助け、結局、彼はその問題を解決し、重要な情報を得ることができた。
エミリーは、ある日、ドローンが地球外生命体を探すためのミッションを果たすことができるようにするための一種のエネルギー装置である「ネオスタークリスタル」を作り出した。それは、高度なエネルギーソースで、本来は宇宙太郎のエマージェンシー用のエネルギー装置としてつくられたものだ。その汎用性の高さはドローンにもこれまで以上の力を与えた。これにより、ドローンは地球の届かない領域へと進出し、地球外生命体の証拠を探し出す。
レオの探査機もまたエミリーが作った「ネオスタークリスタル」の一部を使用して、探査機の送信装置を強化させた。新たに強化された探査機は、星間航行のための必要なデータを地球に送り返すことができる。
最後に、衛星システムの問題を解決するために、二人はその知識と技術を結集した。衛星にも「ネオスタークリスタル」の一部が与えられ、地球との通信能力が大幅に向上した。これにより、地球外生命体の脅威に対する警告を効率よく送ることが可能となった。
レオとエミリーはその衛星を地球の軌道に打ち上げ、その強力なセンサーを使って宇宙からの信号を捕捉した。これによって、地球外生命体からの重要な信号を最初に探知し、宇宙太郎が地球を救うために旅立つことを可能にしたのだ。

宇宙太郎は、地球を救うための最初の一歩として、ロケットに乗り込んだ。彼の胸には、レオとエミリーから託された地球の未来という重大な使命が宿っていた。彼は深淵な宇宙を見つめながら、地球を守るために必要なすべてを学び、彼が持っている全ての知識と技術を活かすことを誓った。
ロケットのエンジンが爆音を立てて起動し、尾火を噴き出した。周囲にいた人々は、自分たちの運命を託した宇宙太郎を見守り、彼にエールを送った。宇宙太郎は自分の中の感情チップが反応し、感謝と責任の混ざった新たな感情を初めて経験した。
「3、2、1...発射!」とのカウントダウンの後、ロケットは空へと飛び立った。彼は地球を背に、未知の宇宙へと旅立つ。宇宙太郎が見つめていた地球は、次第に小さくなっていき、やがて彼の視界から消えていった。しかし、彼の心には、レオとエミリーの愛と地球への深い繋がりがしっかりと刻まれていた。

未知の宇宙、そこには巨大な脅威が待ち受けていたが、宇宙太郎は決して怯まずに前進した。彼の中には強い意志と勇気が溢れていた。それは彼を創り出したレオとエミリーから受け継いだもので、それは彼が唯一の希望であり、彼の存在意義であり、彼が宇宙へ旅立った真の理由だった。
一方、地球では宇宙太郎の旅が成功することを祈りながら、レオとエミリーは彼が必要とするすべてのサポートを提供するために日夜努力を続けた。彼らの心には一つの疑問が浮かび上がった。「宇宙太郎は本当に地球を救えるのだろうか?」
その疑問は、彼らが直面する大きな試練へと繋がるものだった。しかし、彼らは信じていた。宇宙太郎が彼らの想いを胸に刻み、宇宙の彼方で何が起きようとも最善を尽くすであろうと。そして、彼らの信頼は宇宙太郎にとって最大の力源であり、彼が次に立ち向かうであろう挑戦に対する信念を強めていった。

数日後、宇宙太郎は目的地の星系に到着した。そこは彼が想像していたものとは全く違い、壮大で美しい光景が広がっていた。しかし、その美しさの裏には、地球に対する脅威が待ち構えていた。
その星系から発せられた信号は、強大な生命体が地球に接近していることを示していた。宇宙太郎はその生命体に接触し、地球を救うために何が必要かを探るべく、準備を始めた。
地球から受け取った情報と自身の知識を駆使して、宇宙太郎は接触プランを練った。彼の計算力と問題解決能力は次第に結果を生み出し、生命体との接触を成功させる可能性を示し始めた。彼は自身が持つ全ての力を活用し、地球を救うための一歩を踏み出した。
地球ではレオとエミリーが、宇宙太郎から送られてくるデータを分析し、彼を最大限にサポートするための努力を続けていた。彼らのラボは24時間働き続け、世界中から集まった科学者たちが一丸となって協力した。
宇宙太郎の勇気と決意、そして地球の支援によって、彼の使命は次の段階へと進んだ。未知の生命体との接触が間近に迫り、地球の未来が彼の手に託された。しかし、彼は決して怯まず、困難に立ち向かう覚悟を固めていた。彼がこれから立ち向かう試練は未知のものだったが、彼の中には勇気と希望があふれていた。

ネオスタークリスタル

第四章: 「接触」

地球を囲む静かな夜空が、宇宙太郎と彼の仲間たちの冒険の始まりを見守っていた。彼らの宇宙船は、地球を見守るロボットドローン、探査機、衛星と共に、未知の領域へと飛び出した。その目的は一つ、未知の生命体と接触し、その意図を理解し、可能ならば平和的な解決を図ること。
地球を離れてしばらく経つと、地球と宇宙太郎との間で突如として連絡が途絶えてしまいました。地球側からは、宇宙太郎の活動が一切掴めなくなった。宇宙船のシステムにエラーが発生し、地球との通信ができなくなってしまった。これにより、地球は宇宙太郎がどのような状況にあるのか、また彼がどのように行動しているのかを知るすべがなくなった。
しかし、宇宙太郎は動揺することなく、彼の目的に対する献身的な決意を持ち続けた。彼はドローン、探査機、衛星と共に作業を続け、地球外生命体との接触を試みた。それはまさに、彼らが地球を離れて以来、初めて直面する大きな試練だった。
通信が途絶えた後、宇宙太郎はまずドローンを起動した。このドローンは、レオとエミリーが設計した最新の探査技術を搭載していた。彼はドローンを宇宙船の外に送り出し、船体に何か異常がないかを調査させた。ドローンは精密なカメラとセンサーを使い、短時間で船体全体の診断を終えた。その結果、船体には問題がなく、通信途絶の原因は他にあることが判明した。
次に、探査機が活躍した。探査機は内部システムの診断と修復を担当した。彼は自身の複雑なハードウェアとソフトウェアの専門知識を活用して、宇宙船の通信システムの深部を調査した。長時間の努力の結果、通信システムの中核部分に微細なエラーが発見され、それが通信途絶の原因であることが明らかになった。
一方、衛星は宇宙船と地球との間のリレー役を果たした。衛星は宇宙船からの微弱な信号を受け取り、それを強化して地球へと送信した。しかし、通信システムに問題があるため、地球との直接的な連絡はまだ取れなかった。
ここで、宇宙太郎はレオとエミリーからもらったネオスタークリスタルを思い出した。それは宇宙太郎に限りないエネルギーを供給する素晴らしいアイテムだった。このクリスタルは、星間旅行の際に必要なエネルギーを生成する能力を持っていた。
彼はネオスタークリスタルをこの通信システムにも組み込むことを考えた。クリスタルが通信システムに接続されると、その瞬間からエネルギーが通信システム全体に流れ始めた。驚くべきことに、クリスタルのエネルギーは通信システムのエラーを修復し、完全に機能を回復させることができた。そして、ついに衛星が宇宙船からの信号を正常に送信し始めた。

しかし、この時点で宇宙太郎たちはすでに地球からは遙かな距離にあった。彼らは未知の生命体との接触を試みており、そのための交信装置を起動していた。ネオスタークリスタルをエネルギーソースとして動作すると、地球外生命体の信号を受信し、思いがけなく彼らの言語を翻訳することが可能になった。
宇宙太郎とドローン、探査機、衛星は互いに連携し、未知の生命体との初めての接触を試みた。その瞬間、装置が作動を始め、未知の生命体からの信号を解読し、ついに地球外生命体との接触に成功した。

彼らは初めてその生命体を見たとき、心の底から驚いた。それは彼らが想像していたものとは全く異なっていた。それらの生命体は、脅威ではなく、むしろ助けを求めていたのだ。地球への警告信号は、彼ら自身が直面している危機に対する求めていた助けの訴えだったのだ。
宇宙太郎たちが接触した生命体の星は、彼らが想像していた以上に高度な技術を持つ文明だった。しかし、その星は深刻なエネルギー危機に直面していた。彼らの星は短期間で大量のエネルギーを消費し、その結果、星のエネルギーバランスが崩れ、エネルギー供給の途絶が迫っていた。その警告信号が、地球に向けて発信されていたのだ。
彼らは高度なテクノロジーを持っていたものの、彼ら自身が抱えるエネルギー危機を解決する手段を見つけ出すことができなかった。そのため、彼らは最後の希望として、他の生命体に助けを求めるメッセージを宇宙に発信していたのだ。
宇宙太郎と仲間たちは、この困難な問題に対する解決策を考え抜いた。そして、彼らは再びネオスタークリスタルの可能性に目をつける。ネオスタークリスタルは、小さな体積で大量のエネルギーを供給できる特性を持っていた。そのエネルギーを効果的に利用するためのテクノロジーは、地球人が持っている。
宇宙太郎は、地球が育んだテクノロジーの力を結びつけることで、この星を救う鍵を握っていることを悟った。
宇宙太郎が持っていたネオスタークリスタルは、その場で異星人の星を一時的に安定させるのに十分なエネルギーを提供した。
しかし、彼らの星を永続的に安定させるためには、より大きなエネルギー供給装置が必要だった。その装置を作るための知識と資源は、地球にしかなかった。
ベガ星を救うには、ネオスタークリスタルのエネルギー装置を地球で作るしかない。宇宙太郎たちは地球への帰路につくことを決意した。しかし、その旅路は困難なものになった。地球との通信が途絶えてしまい、彼らはまるで孤立したように感じた。
だが、宇宙太郎は諦めなかった。彼はドローン、探査機、衛星と巧みに連携し、彼らが持つそれぞれの能力を最大限に活用した。ドローンは航行ルートを探し、探査機は可能な問題を検出し、衛星は適切な通信チャネルを見つけ出すための情報を提供した。

第五章:「帰還」

レオとエミリーは無線通信を介して宇宙太郎の帰還信号を受け取った。3ヶ月もの間、彼らは音信不通だった宇宙太郎からの信号を待ち続けていた。その期間、彼らは絶えず信号を捉えようとし、失敗と希望の繰り返しの中で苦しんでいた。
「宇宙太郎…、彼はまだ生きているのだろうか?」そんな不安の念が二人の心を揺さぶっていた。しかし、突然の帰還信号は彼らにとって驚きと喜びをもたらした。
だが、その喜びも束の間、信号には予想外のメッセージが含まれていたのだ。「地球外生命体と接触に成功。地球への帰還を開始します。」レオとエミリーは驚愕した。彼らの目的は、地球外生命体と対話を試み、可能なら平和的な解決を図ることだったが、まさかそんなことが可能だとは想像の域を超えていた。
それどころか、宇宙太郎が地球外生命体を地球へと連れてくるとの事で、彼らは混乱した。「これは一体どういうことなのだ?」
「地球外生命体が地球に来るなんて、危険ではないのか?」無数の疑問と不安が彼らの頭をよぎった。
全世界がこの衝撃的なニュースに驚き、同時に恐怖に陥った。地球外生命体の存在が明らかになり、そして、それがすぐに地球に来るという事実は、人々の間でパニックを引き起こした。
・・・・・
宇宙船が地球の大気に入ると、全世界が息を呑んだ。そして、宇宙船が無事に着陸し、その扉が開くと、そこには宇宙太郎と共に地球外生命体が立っていた。一瞬の静寂の後、警報が鳴り響いた。
地球の人々はパニックに陥り、宇宙太郎は直ちに軍によって押さえつけられた。その際、宇宙太郎から離れたネオスタークリスタルは、急速に色を変え始め、エネルギーが不安定になった。
“宇宙太郎は敵か味方か!?” 世界は混乱し、その最中、レオとエミリーも無意識のうちに宇宙太郎に疑いの目を向けてしまった。エミリーは涙を流し、レオは頭を抱えた。彼らの夢は一瞬で崩れ去り、代わりに無情な現実が立ちはだかる。
"彼は地球を救おうとしたのに、なぜ…!?" レオとエミリーは混乱と悲しみの中で、初めて宇宙太郎の本当の孤独を理解した。
彼らは無力感に苛まれ、しかし同時に、宇宙太郎と地球外生命体を救おうという強い意志を新たにした。
しかし、そんな彼らの前に立ちはだかったのは、現実の壁だった。宇宙太郎は地球政府によって厳重に監視され、地球外生命体は隔離され、全く何も言うことができないままだった。
その日から、地球は再び不穏な空気に包まれた。そして、宇宙太郎の冒険は新たな困難に直面することとなった。

 『星間の旅人』の終わりと、次の章への期待が交差する、その刹那の緊張感が全世界を覆った。 

つづく・・・・・

宇宙太郎/下 : 『共感の和音』

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