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新千夜一夜物語 第17話:激辛カレー教諭いじめ事件と魂の属性

青年は激怒していた。

神戸市の小学校にて、男性教員(20代)が先輩の教員たち(30〜40代)に羽交い締めにされて激辛カレーを目にこすりつけられたという、教師間にて行われたいじめ事件についてである。

加害者グループは被害者にとっての先輩教師4人(首謀者の女性1人、男性3人)であり、他にも別の女性教員らにLINEでわいせつなメッセージを無理やり送らせたり、被害者の男性教員の車の上に乗ったり、その車内に飲み物をわざとこぼしたりしたという。

被害者の男性は兵庫県警に被害届を出しており、今も登校できない状況が続いているとのこと。
一方、加害者4人は休職処分となった。また、いじめの様子は動画で撮影されており、動画を見た児童の一部が精神的ショックを受けたようで、その児童たちへの心的配慮として給食でのカレーを中止した。

教員の間でいじめがあるようでは、学校でのいじめ問題が改善するはずがない。
今回の事件も、何らかの霊障による原因があるのではないかと感じた。そして、陰陽師に今回の事件の要因を確認すべく、出かけるのだった。

※今回の主な登場人物の鑑定結果
①いじめの中心となった女性教員
頭2、2(4)−4、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に2・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
憑依−、大日不可思議8

②いじめの被害者となった男性教員
頭1、2(3)−4、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に2・5・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
全体運7、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、
大日不可思議8

③激辛カレーを食べさせる時に被害者を羽交い締めにした教員
頭2、2(3)―4、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に2・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
憑依−、大日不可思議8

④女性教員を他校から呼び寄せた校長
頭2、2(3)―3武士、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に2・14の相。第7チャクラの乱れ。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
憑依−、大日不可思議8

⑤いじめの対策を取れなかった現校長
頭2、2(3)―3武士、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に2・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
全体運8、ビジネス運7、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
憑依−、大日不可思議8

『先生、こんばんは。また2−4でしょうか!』

部屋に入るなり、開口一番青年は吠えた。

「いきなりすごい鼻息じゃが、今度は何があったのかの?」

『失礼しました。今回はいじめ事件について話を聞きにまいりました』

青年は、深々と謝罪の礼をしたあとで、事件の概要を陰陽師に説明し始めた。

*教員の名前が未公開のため、人物についてはインターネットから確認できた範囲となります。

いくつかの質疑応答の後、事件の概要と主要な人間関係を理解した陰陽師は小刻みに指を動かしながら、鑑定結果を書き記していく。

鑑定結果を見た青年は、驚きの声を上げる。

『いじめの中心となった女性教員(※①参照)は転生回数の十の位が40回代ですから、運気が“小山”に当たるとはいえ、やはり、2−4ですか』

鑑定結果のメモ書きを凝視し、青年は続ける。

『先祖霊の霊障にも天命運にも、5:事故/事件がないのに、今回の加害者となった理由としてどういったことが考えられるでしょう?』

「まず気性がかなり荒い。また、この女性教員の場合、天命運に2:仕事と14:偶発的人的トラブルの相があることも、事件の引き金の一端になったと思われる」

『この女教師は、前校長から気に入られてこの小学校に引き抜かれたようですし、生徒からは頼り甲斐のある先生という声もあったことから、性格に二面性があったのかもしれませんね』

「さらに言うと、この女性教員の場合、チャクラ1〜7全てが乱れておるところからみて(−40%)、他の人間に比べてストレスが溜まりやすく、その結果、ストレスのはけ口として今回のような事件を引き起こした可能性もかなり高いじゃろうな」

青年はうつむき、少し長めの息を吐く。過去にいじめられていた体験を思い出したのだろうか。

『ちなみに、被害者の男性教員(※②参照)も同じ2−4の人物ですが、頭が1なので、穏便に事を済ませようとしてあまり抵抗しなかったことも、加害者の教員たちのいじめがエスカレートしていった一因かもしれませんね』

「もちろん、その可能性もあるじゃろうし、被害者の教員の天命運に“5:事故/事件”があることから、それが原因でターゲットになってしまった可能性も捨てきれんじゃろうな」

『なるほど。それにしても、他の教員たちが止めようとしなかったことが不思議です。女性教員の取り巻き(※③参照)が頭2で2−4なのでいじめに加担するのはわかりますが、いじめを容認していた、二人の校長(※④、⑤参照)が“3:ビジネスマン”階級なのはどう理解したらよろしいでしょうか』

「学校を一つの組織と考えれば、校長は企業でいうところのトップじゃ。もちろん2-4が校長になることも皆無とはいえないじゃろうが、腐っても鯛ではないが、魂3の二人が校長の座に上り詰めたことは、それほど驚くことではあるまいて」

青年は納得顔でうなずき、口を開く。

『聞くところによると、前校長(※④参照)はあまり仕事をしない人で、職員室で何があっても関係ないという事なかれ主義の人物だったようですから、女性教員が自分の代わりに教員たちを仕切ることをある部分容認していたと考えることもできますよね』

「前校長のチャクラの乱れは7のみ(−20%)であるところから、一見障害が少ないと考えがちじゃが、実相はその逆で、7ひとつで-20%ということは、乱れのある個所が7であることも含め、1〜7の全てのチャクラが均等に乱れていることよりも問題が大きいということになる」

『とおっしゃいますと?』

「−40%の障害を1〜7で単純に割り算すると、一つのチャクラの乱れの平均値は約6%となるが、前校長の場合は7の乱れが単独で20%もあるんじゃ。チャクラ全体の説明は別の機会にするとして、第7チャクラの機能を端的に説明すると、動物的な生き方、つまり生存本能をベースとした生き方から、より本質的な生き方、つまり物欲主導の生き方から高次の使命感(滅私奉公・霊主体従)といった生き方へと向かうという機能を担っておることから、第7チャクラが正常だと、目に見えない世界に関する“真実”をおのずから理解できるようになり、物事を言葉によって理解するというより、直感/感覚・概念として理解する感覚が身についてくるようになる。逆に、このチャクラに異常があると、肝心な時に気力が充実しないことがあり、大局を見誤ることになるわけじゃな」

『と言うことは、前校長の場合は、大局的な判断を下しにくいことから、結果的に採用してはいけない女性教員を誤って推薦してしまった可能性が高いと・・・』

「まあ、そういうことじゃ」

陰陽師は首肯して答える。

「話を聞く限り、後任の現校長(※⑤参照)も女性教員の暴走を止めることよりも、下手な仲裁をすることによって、その矛先が自分に向けられることを避けたい、そんな思いが心の片隅にはあったのかもしれんな」

青年は腕を組み、唸り声をあげる。

「さらに言えば、いじめの首謀者である女性教員を除き、他の四人の教員の転生回数が30回台というのも決して偶然ではあるまい」

青年はメモ書きを再び覗き込み、口を開く。

『そう言えばそうですね! 転生回数の期に関わらず、30回代は心身が不安定になりやすく、数奇な運命を歩みやすいというお話でしたよね?』

「その通りじゃ。今回のような事件に関わることも、数奇な運命の範疇なのじゃろう」

『いじめという言葉はだいぶ前から出回っていましたが、ここまで目立つ事件は少ない気がします。それと、今回の顛末が、給食のカレーを中止するという見当違いとも思える措置がとられたのも数奇といえるのではないかと』

青年は苦笑しながら言った。陰陽師も微かに笑みを浮かべてうなずく。

「ところで、この事件に関し、インターネットではどのようなコメントが出ておるのじゃ?」

『確認しますね』

青年はスマートフォンを操作し、コメントを読み上げる。

《コメント1》
何を批判されてて
何が問題になってるのか

まったく理解できてないんだな・・・

※頭1、4(4)―4、魂の属性7
天命運に2・8・14・17の相。チャクラ5・6の乱れ。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
憑依−、大日不可思議7

《コメント2》
そもそも普通ではない激辛カレーを給食なんかに出さないでよ
子供だって食べられない子いるでしょうに

※頭1、2(3)―4、魂の属性3(2・6〜14・17の相)
天命運に2・8・14・17の相。チャクラ2〜6の乱れ。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
憑依9、大日不可思議9

《コメント3》
期待している対応「教師全員を解雇、刑事事件として告発します」
実際の対応「カレーやめます」

※頭2、2(3)―4、魂の属性3(2・8・12〜15の相)
天命運に2・8・14・17の相。チャクラ5の乱れ。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運8、天啓−、
憑依−、大日不可思議9

《コメント4》
問題の根本を改善するのではなく
とりあえず臭いものに蓋をする風土なのですね

※頭2、2(3)―3武士、魂の属性3(2〜5、12・17の相。5は一般事故・被害者・怪我)。天命運に2〜5・17の相。チャクラ4〜6の乱れ。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓8、
憑依−、大日不可思議8

《コメント5》
教師になるくらい頭がいい筈なのに何でこんなにバカなの
もう教師というシステムやめてAIの授業とかでいいのではないか?

※頭2、4(3)―4、魂の属性3(8・12・17の相)
天命運に2・8・17の相。チャクラ5の乱れ。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
憑依9、大日不可思議7

以下、コメント5に対し
《コメント6》
小学校の教員になるようなやつが頭いいわけないだろ

※頭2、2(3)―4、魂の属性3(2〜4・6〜14・17の相)
天命運に2・3・6・8・14・17の相。チャクラ1〜6の乱れ。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
憑依7、大日不可思議8

《コメント7》
大学出て教員採用試験受かるくらいの頭持ってる奴が
高卒程度の地頭しか持ってない奴にどうやって教える事が出来るんですかね
天才の思考論理は分からないのが当たりまえだが、アホの思考論理も分からないでしょ?
そもそも大卒しか教員になれないって制度が間違っている

※頭2、3(3)−3武士、魂の属性3(2〜4・6〜12・14・17の相)
天命運に2〜4・8・17の相。チャクラ3〜6の乱れ。
全体運7、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
憑依9、大日不可思議9

《コメント8》
今の教師なんて高卒に毛が生えたレベルの知能しかない

※頭2、2(3)―4、魂の属性3(2・4・8・12〜15の相)
天命運に4・8・14の相。チャクラの乱れ無し。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
憑依−、大日不可思議7

《コメント9》
教師はバカしかいない

※頭2、4(3)―4、魂の属性3(2・3・6〜14・17の相)
天命運に2・3・6・8の相。チャクラ4・5の乱れ
全体運5、ビジネス運5、金運5、人運5、恋愛運5、健康運8、天啓−、
憑依9、大日不可思議7

《コメント10》
まあペーパーさえ出来れば大学には入れるし。
単位さえとって試験に受かれば免許は取れる。
そんなもんです。

※頭2、3(3)―4、魂の属性3(2〜4・6・9・12・17の相)
天命運に2〜4・6・9・17の相。チャクラ1・5〜7の乱れ。
全体運3、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運8、天啓−、
憑依9、大日不可思議7

《コメント11》
教師なんてアホ大学の教育学部卒ですよ

※頭2、3(3)―3武士、魂3(先祖霊の霊障に4・6・8・9・13・17の相)
天命運に4・6・8・9・17の相。チャクラ7の乱れ。
全体運5、ビジネス運8、金運8、人運3、恋愛運7、健康運9、天啓9、
憑依−、大日不可思議7

陰陽師は指を小刻みに動かしながらコメントを聞いていたが、やがて指を止めて口を開く。

「この中で、魂3によるコメントは、4、7、11の三つとなる。それ以外は全て魂4じゃな」

青年は再びスマートフォンで該当するコメントを見、答える。

『ということは、半分以上が魂4ですね。ここらあたりにも魂4の参加意識の高さがしっかりでていますね』

「そうじゃの」

『しかし、コメント1と2も魂4だったとは。コメントを読む限り、一歩引いた視点な感じがしたのですが』

陰陽師は再び指を小刻みに動かし、数字を書き足していく。

「その二人は頭が1なので、他のコメントとは違った印象を受けたのじゃろう」

青年は納得顔で何度もうなずく。

『4と7と11は教員の人格や行動というよりも、事件の根本的な問題や原因について触れている印象があります』

陰陽師はうなずいて賛同の意思を示す。

『コメント5はもっとも反応が多かったので読み上げましたが、やはり魂4でしたか。内容としては教師というシステムに言及していますが、AIにすればいいという結論が短絡的なのでしょうか? AIに変えたら変えたで起こりうるであろう、新たな問題をまったく想定していないような感じがするのですが』

「それもそうじゃが、それ以前の問題として、義務教育の中でも、特に小学生は勉学以上に人間教育という側面が重要となる」

『そのような意味で、AIが授業を行った場合、対AIのスキルは上達するかもしれませんが、対人間とのつき合い方に大きな支障が出るような気が僕もしています。もちろんこれからAIが活躍する領域はますます広くなっていくのでしょうが、そうであっても対人間とのつき合いが基本になることに変わりはないと思います』

青年は背もたりに寄りかかり、後頭部を両手で支える。

「そなたの言うように、百歩譲って魂4の児童が2−4の教員から指導を受けるのを是とするとしても、魂1〜3の児童までもが、大局的見地に欠けたものの見方や意見を一方的に押し付けられることは大いに問題じゃろうな」

『僕が小学生の頃、きちっとした理由づけもなしに“こうと言ったらこうなんだ!”式の意見を押しつけてきたり、すぐ感情的になる教員がいましたが、今考えてみると皆2-4だったのでしょうね』

「もちろんそれらの教師も皆2-4じゃが、問題は、そのようなやり方が今も教育現場でまかり通っているという現実じゃ。前にも話したように、ワシは月の半分近くを京都で過ごしておるのじゃが、居酒屋などで小学校の教師連中に遭遇することがままある。もちろん京都という特殊な場所柄、そのほとんどが2-4なのはいうまでもないのじゃが、彼らの話に聞くとはなしに耳を傾けていると、果たしてこんな連中に教育の現場を任せておいていいんじゃろうか、そう思わずにはおれない話が聞こえてきたことも一度や二度ではない」

陰陽師が小さく首を振りながら、小さくため息をついた。

『ところで原初的な質問なのですが、たとえば戦前も、小学校の教師には2-4が多かったのでしょうか』

「とんでもない」

青年の質問に、陰陽師は首を横に振る。

「戦前の小学校(尋常小学校・高等小学校)の教員は、ほぼ2(4)−3が半分近く、1(7)−1が約4割、残りの1割が2−4か2−2という比率じゃった」

『え、そうなのですか?!』

陰陽師の意外な回答に、青年は目を大きく見開く。

『ということは、現代と構成比率が全く異なっているのですね』

「その通りじゃ」

『しかし、敗戦によって、小学校の教育の場に何が起こったのでしょう?』

「原因は、大きく三つにわけられる。その一つは、敗戦より、焦土と化した我が国の復興のため、魂1~3の優秀な人材の多くが“教育よりも経済復興を選んだこと”じゃ。その結果が昭和40年代以降の奇跡の経済復興へとつながってはいくものの、戦後の多くの優秀な人材が、たとえ経済行為に直接従事しないとしても、大学や各種の研究機関などへ流れてしまい、初等教育に関心を持つ者が、極端に減ってしまったという問題じゃ」

『なるほど』

陰陽師の説明に、青年は大きく頷く。

「そして、二つ目には、“教育の変質”という問題じゃ」

『教育の変質ですか?』

「たとえば、日教組が“教師は労働者”という考え方を打ち出したことで、教育に対する教師の情熱が大きくそがれてしまった。また、国旗・国歌の問題に代表されるように、教育に政治を持ち込み教育の質も低下してしまったという問題も存在する」

『しかし、今でも情熱をもって生徒を指導している教師は相当数いると思いますが・・・』

「もちろん、それはそうなのじゃが、戦前の教育現場では、“教師は労働者“なぞという考え方をする教師は、まずいなかった。逆に、戦前の教師とは、教育を”聖職“と考える人格的に優れた人たちによって構成されていた」

『そのあたりが、2(4)−3が半分近く、1(7)−1が約4割という比率に現れているわけですね』

「そのとおりじゃ」

青年の言葉に小さく頷くと、陰陽師は話を続ける。

「そもそも戦前の小学校教師は、“師範学校”という今でいう教育大学出身者が基本となっていた。教師を養成するために作られた官立の学校であった師範学校は、東京に設置された日本初の教員養成機関(後の東京高等師範学校、学芸大学、東京教育大学を経て現在の筑波大学)の固有名称であったし、かつての京都師範学校は戦後、京都学芸大学を経て、今の京都教育大学になっておるといった具合にな」

『なるほど』

「ともかく、戦前の師範学校は学ぶことすべてが教職課程だったわけじゃから、教師になっても、そもそもの心構えが今とまったく違う。また、戦前は、士官学校同様、学費が一切かからず、さらには些少ながら給料も出たので、教師になるということは、優秀であるが貧しくて上の学校に行けない人間たちにとって、人生の大きな選択肢の一つだったわけじゃ。さらに言えば、師範学校そのものへの入学もなかなか難しく、入学選考では人柄や学力のみならず、変な顔をしていたり体臭が強いというだけで、教師には不向きと判断され、不合格になったなどという笑い話のような話さえ残っているくらいなんじゃ」

『なるほど、そこまでしないと師範学校に入れないということでしたら、自然と自覚がつきそうですね』

青年の言葉に、小さく頷きながら、陰陽師は言葉を続ける。

「教育という職責の意味を嫌というほど叩き込まれたそんな師範学校出身の教師たちは、高級官僚や大企業の幹部などになった帝大出身者の超エリートを尻目に、明日の日本を背負って立つ人材を育てることに強烈なプライドを持っていたわけじゃ」

『つまり、戦前の先生というのは、現在僕たちが教師に持っているイメージと全然違う存在だったのですね』

陰陽師の説明に、青年は納得顔で大きく頷く。

「その通りじゃ。今説明してきたような経緯から、戦前の教師は教育に対するスタンスが今の教師とは決定的に違っていた。勢い、教育を受ける生徒自身や保護者との間でも、全面的な信頼関係が成立していたわけじゃな」

『できることであれば、僕も戦前の教育を受けてみたかったです』

青年は感嘆の息を漏らし、答えた。

「それは、かく言うワシも同感じゃな」

青年の言葉に、陰陽師が小さく頷いた。

「ただしじゃ、戦前の教育にも問題がなかったわけでもない」

「といいますと?」

「教員の絶対数不足という問題じゃ」

『え。そうなのですか?』

「これまで説明してきたように、師範学校を卒業し、“訓導“(今でいう教諭)の資格を得た人間が教員になっていたわけじゃ、特に小学校(尋常小学校・国民学校)では人材不足が深刻じゃった。そのため、それを補うために、”代用教員“という制度を作り、師範学校にも行けず、普通教員資格もない人間たちが、旧制中学・旧制高等女学校卒業程度の学歴で小学校教師として任用されていたこともめずらしいことではなかったのじゃ」

『では、戦前の教師の中には、厳密に言うと、無免許の教師が存在していたと』

「平たく言うと、まあ、そうなるわけじゃな」

『しかし』

青年は、腕組みをしながら、言葉を続けた。

『そんな教師が一定数いたのに、何故、戦前の教師のレベルは高かったといえるのでしょう』

「そこが、先ほどから話している属性の妙なのじゃよ」

『つまり、戦前の小学校教師は、2(4)−3と1(7)−1で占められていたというあれですね』

「そのとおりじゃ。実際、代用教員経験者の中には後の著名人も非常に多く含まれていて、一例を挙げるとすれば、詩人の石川啄木、作家の坂口安吾、田山花袋、三浦綾子、化学者の野口英世や漫画家の馬場のぼるなど、枚挙にいとまがない。ちなみに、2006年(平成18年)度上半期のNHK朝の連続ドラマ“純情きらり”ヒロインの宮崎あおい演じた桜子も代用教員じゃったわけじゃ」

陰陽師の説明に、目を見張りながら耳を傾けていた青年。その顔を横目で見ながら、陰陽師は話を続けた。

「そして最後の問題が、今までの話を受けた“小学校教師に要求される能力とそのステータスの問題”となる。まず、戦後の小学校教師は、個々のレベルはそれほど高くないとしても、全教科を教えられるオールマイティーさを要求される。そこには、学科だけではなく、体育や音楽まで入っているわけじゃから、ほんと大変じゃ。さらに教育学部に通うことが基本的に要求される。今でこそ、私立の教育学部や通信教育といった選択肢も広がってきたものの、誰でもが簡単にクリアーできるハードルではない」

『そのあたりは、学業に秀でた2-4の真骨頂ということになりますね』

「さらにステータスという面からみても、身分、処遇面からみても、突出こそしていないが2-4のプライドを大いに満足させる職業であることは間違いない」

『さらに、中高生よりコントロールしやすい小学生に、上から目線で過ごせてプライドも満たされ、給料も社会的地位も安定しているわけですからね』

青年は納得顔でうなずいた後、顔を上げて続ける。

『今までの話をお聞きしていて、ふと気になったのですが、ヤンキー上がりの教師というのは魂1〜4でいうとどこに該当するのでしょうか?』

「というと、一般論ではなく、誰か特定の教師に心当たりはあるのかの?」

青年は腕を組んで沈黙する。陰陽師は小さく笑いながら、青年に先を促す。

「もちろん、実在の人物でなく、たとえば、小説や漫画のキャラクターでも構わんぞ」

『実は』

陰陽師に励まされ、やがて青年は口を開いた。

『GTOというヤンキー上がりの教師が主人公の漫画があるのですが、彼を取り巻く人物が、どんな属性の人間たちなのか少々気にかかっていたのです』

「あいわかった。それで、主な登場人物の名前と特徴は?」

そう陰陽師に促され、青年はキャラクター名と各々の特徴を伝える。陰陽師はしばらく指を小刻みに動かした後、口を開く。

「鬼塚英吉(主人公)は
頭が1で、2(4)−3武士、魂の属性3(1)―7(3)、
先祖霊の霊障に2・6〜15の相があり、天命運に2・8・14の相がある。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓-、憑依-

冬月あずさ(ヒロイン)は
頭が1で、2(4)−3武士、魂の属性3(1)―7(3)、
先祖霊の霊障に12〜14・17の相があり、天命運に8・14の相がある。
全体運8、ビジネス運9、金運9、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓9、
憑依-、

内山田ひろし(教頭)は
頭が2で、2(3)−4、魂の属性7(1)―7(3)、
先祖霊の霊障がなく、天命運に8・14の相がある。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓-、憑依-

桜井良子(理事長)は
頭が1で、2(7)−3(1)武将、魂の属性7(1)―7(1)、
先祖霊の霊障がなく、天命運に8・14の相がある。
全体運9、ビジネス運9、金運9、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓-、憑依-」

青年は鑑定結果をまじまじと眺めてから口を開く。

『やはり、主人公とヒロインは、“3:ビジネスマン”階級でしたか。しかも、転生回数が240回の“小山”ですから、戦前の各小学校の教師の5割に属しているわけですね』

「主人公の鬼塚英吉に関して言うと、ヤンキー上がりといっても前の作品では暴走族のトップをしておったとの話から、世間一般のヤンキー上がりの教員として一括りにするのは少々問題があるじゃろうな」

『とおっしゃいますと?』

「ヤンキーの下っ端としてパシリにされていた2−4の人物が、喧嘩では芽が出ずに勉学に励んだ結果、私立大学の教育学部あたりに合格して教員免許を取得し、箔をつけたいがためにヤンキー上がりの教師と自称する人物も中にはおるじゃろうからな」

『その場合、生徒たちに、この先生を怒らせたら怖いという印象を与え、2−4お得意の感情任せ、上から目線の教育が行われるのですね。そして』

青年はため息混じりにつぶやく。

『教頭の内山田ひろしはやはり、2−4でしたか。彼はよく感情に振り回されていますし、愛車が何度も大破するのは転生回数の十の位が30回台の数奇な運命が反映されているのかもしれませんね』

「それなりに勉強の成果が出ているようじゃの」

青年の言葉に一つ頷いた後で、陰陽師は話を続けた。

「それ故、人情味や理屈、道理でもって生徒を更生させられる主人公の鬼塚英吉のような教師は、まず2(4)−3武士や1(7)―1と考えても差し支えないじゃろうな」

『確かに、鬼塚は解決策の一つとして暴力を使うことはあっても、生徒に暴力を振るったり、権力にものを言わせて生徒を従わせるようなことはしていませんでした。漫画のキャラクターにもその辺りが反映されているのですね』

青年は何度もうなずきながら続ける。

『鬼塚に先祖霊の霊障と天命運の両方で“2:仕事”の相があるのも興味深いです。本来であれば、もっと大きな舞台で活躍するチャンスがあるのに、物語を面白くするために場違いな分野の職に就いているというのですから』

青年は笑いながら言い、陰陽師も微笑みながらうなずく。

『ヒロインの冬月あずさは、根は真面目ですので教師は適職だとして、たまに暴走することがあるのは先祖霊の霊障“17:天啓”によるものではないかと。同様に、先祖霊と天命運の両方に“8:異性”の相があることから、恋人がいない設定なのもうなずけます』

「また、理事長の細かいキャラクターは存ぜぬが、主人公の才能を見抜くという意味では武将としての才をいかんなく発揮しておるようじゃの」

『理事長は1−1かと思いましたが、武将タイプだったのですね。しかも、転生回数が270回で“大山”の』

「ちなみに、舞台はどんな学校なのじゃ、公立の学校なのか、それとも私立なのかな?」

陰陽師の言葉に、青年はハッと息を飲み、答える。

『そう言えば、舞台は学校法人ということで私立ですから、経営的な手腕も必要なことから、理事長が武将タイプという設定だと考えて差し支えないのですね』

陰陽師は首肯して答える。

『先祖霊の霊障もなく親近性も7(1)ということから、主義主張や経営にも適しているということで、理事長の座にまで上り詰めたという設定になっておるのじゃろう」

『なるほど。それにしても』

青年は腕を組んでから続ける。

『小学校の教員が2−4ばかりになってしまうと、日本の将来が心配になってしまいますが、どうにかできないものなのでしょうか?』

「とにもかくにも、魂1~3の教員を増やすことじゃ。根本的な解決策は、その一点にかかっているといっても過言ではあるまい」

『これから日本を背負って立つ若い魂3世代にとって、今をときめくIT系企業の社員や公務員になる方が魅力的なのでしょうが、国の将来を考えるかぎり、小学校の教員を目指すことも重要だというわけですね』

「そのとおりじゃ」

大きく頷く陰陽師を見ながら、僕が2(4)で小学校の教員に適正があったら、と青年は小さくつぶやく。そんな青年の気持ちを察し、陰陽師が機先を制した。

「気持ちはわかるが、そなたはそなたのやるべき道があることを忘れてはならんぞ」

『そうでした。僕の使命は天命を歩む人物を増やし、その結果小学校の教員に適した人物を側面的に応援することでした』

我に帰り、そう答える青年の言葉に、陰陽師は満足そうにうなずく。青年はスマホの画面を確認して口を開く。

『ちょうどいい時間のようですね。本日も貴重なお話をありがとうございました』

「どういたしまして。気をつけて帰るのじゃぞ」

青年は席を立ち、深々と頭を下げる。陰陽師はいつもの笑みで応えるのだった。

帰路の途中、青年は学生時代のことを思い返していた。教員たちの顔と言動を思い返し、どの教員がどの魂なのかの仮説を立てる。
そして、これからは教員の採用に携わる人々との縁を増やしていこうと思うのだった。

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