スクリーンショット_2020-01-07_20.24.15

新千夜一夜物語 第19話:2018年東海道新幹線殺傷事件と魂の属性

青年は思議していた。

2018年東海道新幹線殺傷事件の結末についてである。
この事件は、無職ホームレスの男性が、無期懲役になって刑務所で一生を過ごしたいがために、計画的に新幹線の近くの座席に偶然居合わせた人物を襲ったものである。二人が重傷を負い、一人が死亡した。

判決の結果、望んでいた通りの無期懲役となり、加害者の男性は万歳三唱をした。

こうした無差別殺人事件はなぜ起こるのか?
被害者となってしまう人物には、何か共通点があるのだろうか?
青年は答えを求めるように、陰陽師の元を訪れた。

※今回の主な登場人物の鑑定結果
①加害者の男性
頭2、4(7)―4、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に1・2・8・14・17の相。チャクラの乱れなし。
全体運1、ビジネス運1、金運1、人運1、恋愛運1、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議9

②死亡した被害者の男性
頭1、3(3)―3武士、魂7(先祖霊の霊障なし)
天命運に5・14・17の相。チャクラの乱れ、1・5・6・7。
全体運1、ビジネス運8、金運8、人運1、恋愛運9、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議7

③窓際の席の隣の女性
頭2、2(3)―2、魂3(先祖霊の霊障に5・12・13・14・15の相)
天命運に5・14・17の相。チャクラの乱れ、6・7。
全体運1、ビジネス運9、金運9、人運1、恋愛運9、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議7

④通路を挟んで反対側に座っていた女性
頭1、3(3)―3武将、魂3(先祖霊の霊障に5・12・13・14・15の相)天命運に5・14・17の相。チャクラの乱れなし。
全体運3、ビジネス運9、金運8、人運1、恋愛運9、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議9

『先生、こんばんは。今日はまた事件について教えていただけませんか?』

「もちろん。で、今回はどういった事件かな?」

青年は事件の顛末について説明した。陰陽師は指を小刻みに動かしながら黙って青年の声に耳を傾ける。

『事件が起きる背景にはいろんな事情があると思いますが、もしも事前に防ぐことができるなら、せめて関わりがある人々だけでも助けてあげられたらと思うのです』

陰陽師は紙に鑑定結果を記しながら、口を開く。

「まず、加害者(※①参照)には先祖霊の霊障もチャクラの乱れもない。つまり、間違いなく加害者の意志で事件は起きたと思われる」

『霊障による精神疾患がないという意味だと思いますが、だとすると、この事件は起きるべくして起こった事件なのでしょうか?』

青年の言葉に陰陽師はうなずき、鑑定結果を書きながら答える。

「今度は被害者3名の共通点じゃが、みな転生回数の十の位が“30回代”であり、天命運に“5:事故/事件(人災・事故・被害者・怪我)”があった。また、全体運が1〜3とかなり低く、人運にいたっては1しかない(9点満点)」

青年は鑑定結果を食い入るように見つめ、口を開く。

『不運の条件が重なりに重なり、今回のような数奇な事件に引き合わされたのでしょうね・・・』

「もちろんそうとも言えるが、話を加害者に戻すと、全体運もビジネス運も金運も1と最低値であり、しかも天命運に“1:金銭”と“2:諸事万般”の相があることから、そもそも今世の彼の人生は自力で生活することそのものが困難だったはずじゃから、被害者の3名と巡り合わなくても、遅かれ早かれ別の形で無差別殺傷事件を起こしていた可能性が高いのじゃろうな」

陰陽師の言葉に目を見張り、青年は驚きの声をあげる。

『加害者がホームレスで無職だったことは納得ですが、生活保護を申請したとしても、運気が塞がれていた影響で通らなかったのかもしれませんね』

「というよりも、彼の選択肢の中では、生活保護よりもこのような形で生きる糧を確保する方が合っていたのじゃろう。いくら魂が4で、転生期間も第4期だったとは言え、“70回台”と“大山”にいるわけじゃからな」

そんな陰陽師の説明に、青年は暗い表情で顔を伏せ、ため息をつく。

「ところで、登場人物の属性分析は分析として、今回の事件、そなた自身はどのような印象を持っておるのかの?」

陰陽師の言葉に青年は顔を上げ、腕を組んでしばらく黙考する。
励ますような陰陽師の笑みを確認し、やがて青年は重い口を開いた。

『加害者が無期懲役を望んで今回の事件を起こしたとするなら、それを叶えずに死刑にすることは一理あると思います。昨今の我が国の経済事情を考えると、今回の判決によって、刑務所に入りたいがために犯行に及ぶ新たな人間が現れないとも限らない気がしますので』

青年の言葉を聞き、続きを促すように陰陽師は黙ってうなずく。

『もちろん、刑務所での生活が加害者にとって安楽なものでなく、反省し、改心できる環境なのであれば、話は別かもしれません。あるいは、特別に過酷な労働環境に身を置かせることなど、加害者の望みが叶わないような特別な対応ができるのであれば、被害者や遺族の方々も納得しやすいのではないかと思います』

「たしかに、そなたが考えるように、加害者の甘い希望を打ち砕くというのも一つの解決方法ではあるかもしれんな」

陰陽師が、小さく頷いた。

「ところで、ネットでは、この事件にたいしてどのようなコメントが上がっているじゃろう?」

陰陽師に訊ねかけられ、青年は早速スマートフォンを操作し始める。

《コメント(1)》
希望通りの生活は刑務所にはないと思う。
事の重大さが分からないまま死刑になるよりキツい判決かもしれない。
そんなに簡単に“ラク”にさせるのも違う気がした。
生きるのが嫌な人を死刑にするなら、執行は20年後くらいにして欲しい。

※頭1、2(3)−3武士、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
天命運に8・14の相。チャクラ5・6・7の乱れ。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

《コメント(2)》
普通の神経の持ち主なら、懲役などの刑事罰は受けたくない。
だが、こう願ったり叶ったりになってしまうのは別の罰を与えられないだろうか。
無期懲役になったらその先はみんな一緒ではあまりに被害者や遺族が不憫。

※頭1、3(4)―3武士、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
天命運に8・14・17の相。チャクラ6・7の乱れ。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

《コメント(3)》
犯人を責めるのは簡単だし、犯人はもちろん罪を償わなければならない。
だが、青年が“犯人にならざるをえなかったこと”が現代の闇かもしれない。

※頭1、3(3)―3武士、魂の属性3(先祖霊の霊障に6〜15の相)
天命運に2・8・14の相。チャクラ2〜7の乱れ。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

《コメント(4)》
どうしてこんな人を税金で養わなければならないのか?
判例が、前例が、で死刑にできないなら裁判官を辞めてほしい
判例に基づくならAIに任せればいい

※頭2、4(3)―4、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
天命運に2・8・14・17の相。チャクラの乱れなし。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、憑依−、大日不可思議7

以下、コメント(4)に対して
《コメント(5)》
死刑じゃ生温い。もっと税金使って日々拷問して公開してほしい。
今後の抑止にもなる。

※頭2、2(3)―4、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
天命運に8・14・17の相。チャクラの乱れなし。
全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議7

《コメント(6)》
判決を出すには理由づけが必要。
その理由だって裁判官の経験則に基づいたものでなければいけないから、たとえ裁判官本人が死刑にしたかったとしても、前例がなければできないなんてこともある。
他にもツッコミどころがありますが、司法がそんな簡単に務まる物じゃ無いことは知っておいた方がいい

※頭2、2(3)―4、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
天命運に14・17の相。チャクラの乱れなし。
全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

青年がコメントを読み上げるのに合わせ、陰陽師は鑑定結果を紙に書き記していく。
一通り書き終えると、陰陽師は口を開いた。

「まず、コメント1〜3は魂3で、4〜6は魂4の人間のコメントじゃな」

『なるほど。前半と後半とで印象が異なるコメントを抜粋しましたが、やはり分かれましたか』

陰陽師が黙ってうなずくのを確認し、青年は続ける。

『コメント1〜3は判決の結果に捉われず、この判決結果がおよぼすであろう世間への影響や遺族のことを考え、事件が起きたそもそもの背景に注目していることから、魂3ということに納得しました』

「また、三人ともが頭が1、というのも特徴的じゃな」

『コメント4は、問題の論点をすり替えただけで、コメント5は新たな考えを提案しているかと思いきや、結局は死刑に相当するような苦痛を与えたいという感情論に終始している感じがします。コメント6は大局的見地から発言している印象を受けましたが、知識を用いてコメント4に対して上から目線で接したいだけの印象なので、魂4だということに納得です』

「なるほど。いつの間にか、コメントからそなたなりの見立てができるようになったようじゃな」

微笑みながらうなずく陰陽師に対し、青年ははにかみながら小さく頭を下げる。

『全体的に死刑に賛成する声が多かったのですが、判決結果のみに言及していたコメントは魂4だと予想し、抜粋しませんでした』

「この世の基準、例えば望みが叶うことが幸福、望みが叶わないことが不幸という二極的な視点で考えれば、加害者の望みを叶えない死刑の方が判決として妥当、という声が多いことはある意味当然の帰結じゃろう」

陰陽師の言葉に青年は黙ってうなずき、続きを待つ。

「しかしながら、“この世は魂磨きのための修行の場”という前提を踏まえ、生きたまま罪を償いつつ、魂の修行を続けさせることも選択肢の一つとして考えてみてもいいのじゃろうな」

『死んだことがないのでなんとも言えませんが、この世の時間の流れであれば、死の苦痛は一瞬なのではないかと思います。反省を促すという意味であれば、先生がおっしゃる通り、生きてもらう方が理にかなっている気がします』

陰陽師は加害者の鑑定結果にラインを引き、口を開く。

「人間である以上、感情的になって、罪を犯した人間に何らかの罰を与えたいと思うのはもっともなことではあるが、特定の人物に対して恨み辛みを持ち続けることは執着に繋がり、天命から外れる一因にもなりかねん」

『なるほど。色々と思うことはありますが、加害者に対して長く憎しみの念を抱くよりは、生きられていることに感謝し、天命を全うする努力をする方が幸せなのかもしれませんね』

力強い眼差しで青年はうなずき、陰陽師は満足そうに微笑む。

『鑑定結果で“5:事故/事件”の相がある人が今回のような事故・事件に巻き込まれて地縛霊化しないよう、ご縁があった時はよく話してみようと思います』

青年の言葉を聞き、陰陽師は指を小刻みに動かしてから口を開く。

「ちなみにじゃが、今回の事件で命を落とした被害者の男性は、無事にあの世に帰還しておるからな」

意外な回答に、青年は目を見開きながら答える。

『そうなのですか? 僕はてっきりこの世に未練を残し、地縛霊化しているのかと思っていました』

青年の反応に対し、陰陽師は小さく笑って答える。

「臨終の際に未練があるかないかは当人次第じゃ。第三者的に見て、志半ばで命を落としたり、この世をはかなみ自殺したからと言って、地縛霊化しているとは限らんのじゃよ」

『なるほど・・・』

「逆に、例えば聖路加国際病院の元院長、日野原重明氏のように、未来日記を何年も先まで書いてやりたいことをたくさん持っていたりすると、それが執着になって地縛霊化してしまうこともある」

『105歳まで生きたあの医師が! 未来日記を書くとは、生前はずいぶんと前向きな人物だったと思うのですが、そうした人物であっても、死ぬ瞬間にこの世に思いを残していると地縛霊化するのですね・・・』

「さよう。やりたいことや目標をもつことは大事じゃが、それが執着にならないようにそなたも気をつけるのじゃぞ」

『はい。僕は神事のおかげでパフォーマンスが100%になっているので、死ぬ時は天命を全うしたのだと思って潔く受け入れます』

「その意気じゃ。病や事件、戦争などをこの世からなくし、“地上天国”を目指すことこそがこの世の目標と考えている人物は少なくないと思うが、魂の修行という意味では、一見悪と思える所業も特定の人間にとっては必要だったりすることもあるわけじゃしな」

『必要悪という言葉があるように、この世から病や戦争をなくすことはできないのだと薄々感じていましたが、先生の言葉を聞いてそのあたりのことは納得しました。とは言え、少なくとも僕はそれらに巻き込まれて無意味に命を落としたくないので、神事を受け、“この世とあの世の仕組み”について色々と勉強させていただくことができて、本当によかったと思っています。今であれば、不慮の死に直面したとしても、この世に無用な想いを残さず、心静かにあの世に戻ることができるような気がします。もちろん、その時になってみなければ、実際はわかりませんが』

そんな青年らしい率直な言葉に、陰陽師はおかしそうに笑いながら、言葉をつけ加えた。

「出会いは必然じゃとしても、当時のそなたにとっては、文字通り、“清水の舞台から飛び降りるような”英断じゃったな」

出会った頃の青年の様子を思い出し、陰陽師は体を揺らして笑う。
青年は過去の自分を振り返り、いろんな感情を噛み締めてゆっくりうなずいて見せる。

「そろそろ時間のようじゃな。気をつけて帰るのじゃぞ」

『はい。運気的に事故や事件に遭う可能性は低いとは言え、みずから危険な状況に首を突っ込まないようにします』

陰陽師は笑いながら片手を上げて挨拶をし、青年は席を立って深々と頭を下げた。

帰り道、青年は10歳の時に二度死にかけたこと、すんでのところで交通事故に遭いそうになったことを思い出した。もしも自分に“5:事故・事件”の相があったら、そう思うと青年は背筋がゾッとし、今も生きていることに対する感謝へ置換して一歩一歩確かな足取りで歩むのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?