見出し画像

【レビュー】 パラサイト 半地下の家族

画像1

この映画は、心に寄生する

画像2

第72回カンヌ国際映画祭(2019年)で韓国映画初となるパルム・ドールを受賞
第77回ゴールデングローブ賞(2020年)では、外国語映画賞を獲得。
先日発表された第92回アカデミー賞ノミネート発表では、作品・監督・脚本・編集・美術・国際長編映画賞と6部門で候補となりました。
また、世界中の映画賞で約140の受賞、170以上のノミネートを記録しており、世界的に「世紀の傑作」と評価を受けています。
近年のパルムドール受賞作は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016年)、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2017年)、『万引き家族』(2018年)とどれも貧困を描いた作品が続いていますが、前3作に比べて本作は圧倒的に娯楽性が高いです。
それでいて「軽く」ならないから恐ろしい限り...
2年連続でアジア作品が最高賞に輝くというのも日本人にとっては素直に嬉しいです。

半地下の家族

本作に登場する主人公たちは邦題でも示されている通り、半地下の家族。
日本人である我々は「半地下」という要素がピンとこないかもしれませんが、地震が少ない韓国には、半地下物件というものが多数存在します。

画像3

半分若しくはその殆どが地下に埋まっている物件は、通常の物件と比べて安い傾向にあります。
その反面、湿気や換気や雨漏りの問題、虫が多く出る故の衛生的な問題、日差しが遮られる故の洗濯問題、貧困層が暮らすが故の治安的な問題など数多の問題を抱えており、そこで暮らすある一家が極貧生活からの脱却を果たそうとアレコレ画策していくのが大まかな本筋の流れ。
ただ、予測不可能なストーリー展開やそれらを通して垣間見えてくる人間模様の描き方がとてつもなく面白いのです。

下層 vs 上層

画像4

本作は貧富の差という格差社会を扱った映画で、これはポン・ジュノ監督のフィルモグラフィーに於ける定番のテーマでもあります。
その社会批判を痛烈なアイディアで映像化&物語化するのがいつもの手口。
今回はその格差をまさに高低差で表現するという超シンプルなアプローチ。
特筆すべきは視覚的な対比で、嫌という程に、残酷なまでに強者と弱者の対比を丁寧に描きます。
山の上と山の下。
広々とした空と電線だらけの空。
開放感溢れる窓と足元だけが見える地下窓。
贅沢なソファとテーブル、地べたと汚い台。
白い壁と薄汚れた壁。
間接照明と裸電球。
雨が山の上から流れ、濁流となり地下に流れ込む。
夢のような時間が過ぎれば、地獄のような現状が待っている。
この単純な上下構造が徐々に変化していく、ここまで巧妙に描かれているのは観たことがありません。

笑っていいの?

画像5

全編通してこんなにもシリアスなテーマなのに、不謹慎な笑いに溢れていてゲラゲラ笑いながら、笑っているうちにまた暗い影が差してハッと引き戻される。
これはギャグなのか、ホラーなのか、観客も追い付かないほど目まぐるしい展開の連続で、この絶妙なバランスを成立させた監督の手腕に脱帽です。
ただの格差社会を描くだけでなく、あらゆる方向に棘を飛ばす作品。
とてつもなく不気味でゾッとするが、ユーモラスな傑作でした。
私はポン・ジュノ監督の下で寄生したい。

どっち派?

画像6

俳優陣も言うことなしで、常に名演を保障するソン・ガンホが完璧なのは当然として、どうしてこんなみんないい顔しているのかと褒めても褒め足りないほど素晴らしい。
この役は彼等しかないだろうというキャスティングで織りなされています。
ここからは少し余談になりますが、本作を観た人たちの中で少し話題になっているのが、登場する女優の中で一番タイプなのは誰かということ。
主要人物として登場する女優は計5名。

・パク・ソダム:半地下住宅に暮らすキム一家の娘(上記写真左から2番目)
・チョ・ヨジョン:高台の大富豪に暮らすIT企業社長の妻(上記写真右から2番目)
・チョン・ジソ:高台の大富豪に暮らすIT企業社長の娘
・チャン・ヘジン:半地下住宅に暮らすキム一家の妻(上記写真1番右)
・イ・ジョンウン:IT企業社長家の家政婦(上記写真1番左)

チャン・ヘジンとイ・ジョンウンは一先ず置いといて、パク・ソダムとチョ・ヨジョンとチョン・ジソの3名が拮抗している模様。
私はダントツでチョン・ジソ。

画像7

結局私が一番伝えたかったのは、こんなレビューなんかどうでもいいのでとりあえずチョン・ジソを見てくださいということです

画像8

出番は少なかったけど、ピザの女社長も捨て難い…

点数 ★★★★★★★★★★ 10/10点

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?