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Helplessly Hoping (CSN) 〜 歌詞和訳

彼らのファンなら間違いなく誰でも知ってるはずの名曲, CSN としてのデビュー・アルバム(まぁ 2枚目は CSNY になるわけだけど), "Crosby, Stills & Nash" に収められている "Helplessly Hoping", その歌詞を日本語にしてみようと思います。


なぜ この歌の歌詞を訳してみようかと思ったか, というと …

その動機はいくつかあるんだけど, その一つはあれ, あの印象的な一節, 

They are one person
They are two alone
They are three together
They are four each other

大好きな歌だから昔っから, 要するにもう何十年も口ずさんできたんだけど, しばらく前から, とはいえ わりと近年になってから改めて, つまりは今更ながら, あれって一体, 何言ってるんだろうって(ほんと今更ながらだなぁ)思うようになっていたから。

で, あの一節, 面白いことに, これも今更ながら, やっぱりよく分からない。と言っちゃ身も蓋もないけれど(笑)。

そもそもあの一節, つまりこの歌のコーラス, その 4行目, ネット上の英語の様々な歌詞サイトには "They are four each other" と記載されているものもあれば, "They are for each other" と記載されているものもあって(後者の例の方が多いと思う), かつ筆者のヒアリング力ではどっちなのか聴き分けができない。因みに, いま手元にあるのは輸入盤のCDで, 歌詞カードみたいなものが付いてるんだけど(米英のロックとかの原盤ってレコードにしろCDにしろ歌詞カードなんか入ってないのが普通じゃないかというのが筆者の印象だけど正確なところは知らない), そのカード上では "They are for each other" となっている。ただ筆者のこれまでの経験上これが本当に正しいのかどうか, 確信が持てないところがある。何しろ有名ミュージシャンの公式サイトの歌詞コーナーに間違いが記載されていたりすることもあって。

Wikipeda も当然ながら必ずしも正確とは限らないわけだけど, 英語のWikipedia では, この一節について,

「ここには言葉遊び("wordplay")があって, 数詞がダブル・ミーニングを持って使われて」おり, 

They are one person
They are two alone
They are three together
They are four each other

は つまり, 以下のような「言葉遊び」として受け取ることができると解説されている。

They are one person
They are too alone
They are free together
They are for each other

別れを匂わせる恋人同士の情景を歌った歌の歌詞の「言葉遊び」として面白いと言えば, 面白い。確かに面白い。言葉「遊び」だからそう深く考えなくてもいいかもしれないけれど, これについては, ちょっと参考にして歌詞を日本語にしてみたいなと思う。

ところで, そもそもこの歌, 上に取り上げた「言葉遊び」の他にも, これも Wikipedia に書いてあることではあるんだけど, 頭韻法("alliteration")が使われていて, 

のっけから "Helplessly Hoping" とか "Her Harlequin Hovers" とか "Gasping at Glimpses" とか..。第2ヴァースでも "Wordlessly Watching", "Heartlessly Helping Himself to Her", 第3ヴァースでも "Stand by the Stairway", "Confusion has its Cost", "Love isn't Lying", "It's Loose in a Lady who Lingers" … すごいね, これでもかこれでもかの頭韻法。

言葉遊び(語呂合わせみたいなもんか)といい, 頭韻法といい, この歌を書いた(作詞・作曲)Stephen Stills, クールだなぁ。ありゃりゃ, 彼の名前自体が 頭韻法じゃんかよ Stephen Stills!! (笑)

それはそうと, そうだった, 本章はこの歌の歌詞を訳そうと思った動機について, だった。

上に書いたこと以外にはそうですね, ってか上にもちらっと書いたけれど, もう何十年も(歌詞の意味をさして気にしないまま, しかしコーラスの部分についてはなんか不思議な歌詞だなぁと感じつつ)口ずさみ続けている歌であること, それと職業音楽家してる自分の兄がバンドでこの歌をよくカヴァーしていて, それもあって, この際, 歌詞の意味を改めて(できるだけ!)理解しておきたいなと思うようになったので, それで今日, いよいよあの歌の歌詞を日本語にしてみようとなったわけで。

この歌の歌詞は 「ちょっと見」「ちょっと聴き」「ちょっと読み」 シンプルに「見えて」「聴けて」「読めて」, しかしその実, 解釈は難解 〜 というわけで 参考に … しようとして, 結局しなかったサイト

なんだそりゃ(笑)

今までいろんな歌の歌詞を趣味シュミ和訳してきて, その際に以下のような(ネット上に沢山ある)歌詞の解釈についての英語の議論サイトを参考にしたことは 一度もない。

というのは単純な理由で, こういうサイトは面白いんだけど, いざ自分が好きな歌の歌詞を和訳しようとした時にこの種のサイトを覗いてしまうと, いろんな人がいろんな意見を言っていて読んでもキリがなく, 意見は当然 人それぞれでもあって, まぁそれがこの種のサイトの面白さ, 醍醐味なんだけど, こういうのを見てしまうとなかなか翻訳, つまり大好きな歌の歌詞の日本語への置き換え作業に入れなくて, いつまで経っても note 投稿できない, なんてことになりかねない, だからや〜めた, 見ないで訳そう, となるのが常, というわけで。

いや, 本当のところ, そんなことも考えたことなくて, ただ早く訳したい, 早く自分の日本語に置き換えてみたい, そもそもそんなもの見ないでもできる(エヘン!..え? 変?), ってなわけなのだった。

しかし今回は違って, この歌 "Helplessly Hoping" の歌詞は字面だけ見れば思い切りシンプルなのに, その見た目のシンプルさとは対照的に歌の意味に関してはいたって難解。

見た目はシンプルなのに理解しようとすると意外と難解だってことに気づく, ソレって惚れた女性を見る目, 彼女を分かろうとする・解ろうとする心の動きと似てるかもしれないですね。おお, いいところに気づいたぞ(笑)。

というわけで, 今回だけは以下のようなサイトをチラ見したんだけど, 実は結局は文字通りチラ見しただけに終わった。面白いんだけど, 大変なんです, 全部読み込んでから訳詞の作業に入ったりしたら(要するに時間がかかるからなのか!)。

そのうち気が向いたら また見てみるかも。でも覗き見程度かな, で, ネット上で拾ってチラ見したのは以下の 3つ。

これと, 

これと,

これ。

さて, 

本題に移るぞ 🎶

"Helplessly Hoping" by Crosby, Stills & Nash 〜 歌詞和訳

Helplessly Hoping 〜 歌詞和訳

最初に書いておくと, この歌の(わりと?)よく知られた邦題は「どうにもならない望み」で, それは元の意味から遠く離れてしまってるようなわるい邦題ではないし, だから歌詞の中に登場する "Helplessly hoping" は意地張って(時々その種の意地を張るのです, 筆者は)別の日本語表現にすることもないだろうと考え, そのまま援用することにしました。

この歌は Stephen Stills の作。同じアルバムの 1曲目 "Suite: Judy Blue Eyes" と同様に, 当時恋人だった(そして別れた)Judy Collins との別離というヘビーな経験に触発されて作った曲のようです。

ではでは, さっそく..

歌詞原詞 https://genius.com/Crosby-stills-and-nash-helplessly-hoping-lyrics (ただしコーラス部分については 本 note 前々章 及び 下記の訳注 *9 ご参照)

[ 和訳 ]
どうにもならない望みを抱きながら
彼女の道化役は 彼女のそばを彷徨いて (*1)
彼女が発する言葉を待っている
優しくて本物の妖精のような人を (*2)
ちらっと見て, ハッと息をのむ
彼は空を飛べたらと思いながら走り出すのだが
さよならの声につまずいてしまう (*3)

沈黙を守りながら見つめ
彼は窓の脇で待っている
そして不思議に思うのだ
空っぽの部屋の中を
無情にも彼女の悪夢を見てしまって (*4)
彼は心配になる
さよならを聞いただろうか? やぁって言葉さえ?

彼らは それぞれ一人
彼らは 二人で一人(彼らは 独りぼっちだ)
彼らは 三人一緒(彼らは 共に自由だ)
彼らは それぞれで 四人(彼らは お互いのために)

階段のそばに立っている
何かが見えるだろう
確かに 混乱や曖昧でいることには 代償が伴う (*5)
愛は もうそこにはないんだ (*6)
長居していた女の中で 最早それは崩れ始めてる (*7)
迷ってると言いながら (*8)
やぁと言うだけで声を詰まらせる

彼らは それぞれ一人
彼らは 二人で一人(彼らは 独りぼっちだ)
彼らは 三人一緒(彼らは 共に自由だ)
彼らは それぞれで 四人(彼らは お互いのために)

…………………………………

訳注
*1 「彼女の道化役」は「彼」なんだけど, 要するに Stephen Stills 本人のことなんでしょう。で, 彼は「彼女」つまり Judy Collins の「そばを彷徨いて(うろついて)」る。

*2 歌詞サイトでは "Gasping at glimpses" で改行して 次の行が "Of gentle true spirit" になっているわけで, できればこの順で日本語に置き換えていきたいんだけど, 残念ながらどうにもそれは無理っぽくて, 結局 上記のよう。

"gentle true spirit" を 適当な日本語にするのは容易じゃない。ほぼ無理(泣)。

因みに "spirit" には実にいろんな意味があって, オンライン辞書には名詞だと平気で 16個ほど意味が出ていたりする。「妖精」なんてのから, (形容詞を前に置いて)「〔ある特別な〕人、人物」なんてのまで。これの後者の意味合いがこの歌の歌詞の中の "spirit" に似合いそうなんだけど, 日本語にしてしまうとどうにもピンと来ない感じになる。で, 半ばシカタナク上記のような訳にした。

*3 "trip" は日本では(英語の本場の英米でも?)名詞として「旅」が直ぐ思い浮かぶけれど, 動詞で「踏み外す」「つまずく」といった意味で使われる場合があって(名詞でも「〔つまずいて〕転ぶこと」「つまずき」といった意味あり), この歌の歌詞の該当箇所のそれは, 文脈からして「つまずく」。

*4 "Heartlessly helping himself to her bad dreams", 直訳的に日本語にすれば「彼女の悪夢を手助けして」とか「彼女の悪夢に手を貸して」になるんだろうけれど, この歌の歌詞の中の意味としては「彼」Stephen Stills が「彼女」Judy Collins が見る悪夢を垣間見てしまったといった感じかなと。

*5 "confusion" は ここでの訳語として「混乱」がいいのか「曖昧」がいいのか迷ってしまって, 結局 掟破りの両論併記(笑)。そもそも外国語間の変換において, ピッタリと一語で完全もしくは完璧に等しい意味を伴って置き換えられるなどということは, そりゃもう有り得ません。それ言っちゃ身も蓋も無いけれど, でもまぁ当然の理, 真実です!

*6 "Love isn't lying", これの訳, 困るよなぁ(拙者のレベルには?)。"lying" は「嘘をつく」の "lie" の変化なのか「横たわる」「存在する」の "lie" の変化なのか。つまり「愛は嘘をつかない」のか「愛は(そこに)ない」のか。歌詞の文脈からしたら, 後者の方だろうと。

*7 "It's loose in a lady who lingers", これも正直, 困った。"linger" は「長居する」「居残る」「ぐずぐずする」といった意味のある言葉だけど, これをこの歌の歌詞の中で 綺麗な日本語に置き換えることができない。"loose" については, オンラインの辞書からそのまま書き写すと「〔結び付いた物が〕はがれた[外れた]」「〔結合・一体化されていた物が〕ばらばらになった」とか, 「〔締めていた物・接合していた物などが〕緩んだ」「グラグラした」「ガタガタした」「ガタが来た」など。で, "It's loose in a lady who lingers" の主語 "It" は その前のライン "Love isn't lying" の "Love" なんだろうなと推測した結果が, 上記の日本語訳。

*8 "Saying she is lost", これは誰が言ってるってことなんだろう。英語的には「彼女」が, とも言えるし, もちろん「彼」が, でも有り得るし, 場合によっては前のラインから受けての "Love" つまり「愛」という抽象的なものと言えなくもないし。というわけで, まさしく "lost", 「迷って」しまい, 上の訳詞のようにそこは 曖昧 なままにした。

曖昧, そう, "Certain to tell you confusion has its cost", 「確かに 混乱や曖昧でいることには代償が伴う」けれどなぁ!  … ってなわけで *5 もご参照(笑)

*9 おまけの注釈, コーラス部分 及び その中の「三人」「四人」について

They are one person
They are two alone
They are three together
They are four each other

彼らは それぞれ一人
彼らは 二人で一人
彼らは 三人一緒
彼らは それぞれで 四人

They are one person
They are too alone
They are free together
They are for each other

彼らは それぞれ一人
彼らは 独りぼっちだ
彼らは 共に自由だ
彼らは お互いのために

因みに前章 "この歌の歌詞は 「ちょっと見」「ちょっと聴き」「ちょっと読み」 シンプルに「見えて」「聴けて」「読めて」, しかしその実, 解釈は難解 〜 というわけで 参考に … しようとして, 結局しなかったサイト" (長ったらしい見出しだ!)において リンクを貼ったその一番上のリンクのサイトに, 以下のような記載がある。そこはちょっと参考になった("Steven" はもちろん Stephen Stills, "Judy" は Judy Collins のこと)。

Anyways, they did start a relationship, and she already had a son who Steven adored. I believe thats where the "3 together" line comes in. So, as this goes on, Judy meets actor Stacy Keach, who also gets along extremely well her son. She drops Steven, and goes with Stacy. And that's that. I'm sure there are more sordid details of the relationship, but I don't know them. He also wrote Suite: Judy Blue Eyes about her, and I'm sure some other songs.

Stephen Stills は要するに, Judy Collins にフラれたのです, 簡単に言ってしまえば, だけど。

♫ … ♫ … ♫

英語原詞 について

外国語の歌の歌詞の和訳を試みてそれを掲載するのだったら(note にしろその他のサイトにしろ), できることなら 原詞を併載した方がよい。明らかにその方が分かりやすい。しかし, それは(歌詞原詞の全編掲載は)残念ながら不可能。

英語歌詞, つまりここでは, 英語で歌われる曲の原詞。その(全編)掲載に関するその辺りの事情については, 以下の note の「前説」の次の次の章「英語原詞 について」にて。

さて さて 🎶

このカヴァーも素晴らしい

おそらく有名な人たちではないんだろうけれど(でもたぶん知る人ぞ知るかな), この人たちのカヴァーが素晴らしくて, もう何年も前から愛聴してる。

ちょっとアップテンポだけど, とにかく美しいハーモニー。

恋人同士もしくは かつては恋人同士だった二人のすれ違い, 「宙ぶらりんの」状態を歌った歌といえば 〜 "The Dangling Conversation" by S&G, 歌詞和訳

そういう意味では, 今日のこの note で取り上げた CSN の "Helplessly Hoping" と共通するところがあるように思う, この歌のタイトルは敢えて日本語にするなら「宙ぶらりんの会話」。

さて, 次はやはり 🎶 

どうにもならない望み 〜 青い眼のジュディ

なんてったって Judy CollinsJudy が 歌のタイトルになってんだから。それに何より, このハーモニーの美しさ, 素晴らしさと言ったら!

"Suite: Judy Blue Eyes" from Crosby, Stills & Nash's 1969 self-titled album

It's getting to the point where I'm no fun anymore
I am sorry
Sometimes it hurts so badly, I must cry out loud
"I am lonely"

I am yours, you are mine
You are what you are
You make it hard .. 🎶

ではでは, 最後は

最後に Stephen Stills の名曲たちに歌われた Judy Collins の歌を 〜 "Both Sides, Now" written by Joni Mitchell

"Both Sides, Now" written by Joni Mitchell 〜 from Judy Collins' 1967 album Wildflowers

因みに Judy Collins は Stephen Stills より 6歳年上の女性です(全く意味ないのに書くと「日本の学年」的には 5年上)。

もひとつ因みに, この曲を書いた Joni Mitchell は CSN のうち 今は亡き David Crosby や 幸い今も健在の Graham Nash と交際していた時期があって, 後者の方は彼女との同棲の時期を歌にしている(CSNY 1970年のアルバム "Déjà Vu" に収められた "Our House")。Stephen Stills とはどうだったっけかな?

何はともあれ, 人生いろいろ, 色恋沙汰もまさしく色々なり。それと, 世間って やっぱ 狭いのか。

というわけで, 本日の「歌は世につれ世は歌につれ」, いや違う, 「歌は恋につれ恋は歌につれ」「歌は愛につれ愛は歌につれ」でありました!

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