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初めて聴いたブルーズ 〜 ジュニア・ウェルズ & バディ・ガイ LIVE in Japan 1975

前説

クラプトンが奏でるブルーズなら既に聴いていた。クリームのロック化されたブルーズ・カヴァーだけでなく、ヤードバーズやジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ時代の完コピ的ブルーズ・ナンバーも。日本のブルーズについては、今日のこの note 投稿で取り上げる "ジュニア・ウェルズ & バディ・ガイ LIVE in Japan 1975" のレコードを買って聴いた時よりは、若干後の話になると思う。日本が誇る(まぁ別に日本という国に「誇られる」必要などないのだが)ブルーズ・バンド, 憂歌団のデビュー・アルバム「憂歌団」, あれって 1975年11月1日リリースってことだから。

1970年、9~10歳にかけての時期、小4辺りで「洋楽」なるものを聴き始めたのだが(本 note 投稿の締めにそれについて書いた前々回の投稿文を付録)(その前と言えば1968年, 小2の頃, 当時グループサウンズと呼ばれる日本の音楽を聴いていた, オックスとか懐かしいなぁ歌謡曲っぽいんだけど)、取っ掛かりの時期に聴いたジェリー・ウォレス(の, というより「チャールズ・ブロンソンの, 笑」,「男の世界」)、ショッキング・ブルー(「悲しき鉄道員」, については付録, 今日のこれの直前の note 投稿x2)、そしてサイモンとガーファンクルのうち、歌詞を含めてサイモンとガーファンクルに嵌り、この辺, 3歳年上でその後ミュージシャンになった兄貴の影響が大きいんだけど、サイモンとガーファンクルだけでなくソロになってからのポール・サイモン、イギリスに渡ってクリーム、クラプトンと共に再びアメリカに移ってデレク・アンド・ザ・ドミノス、ソロとしてのエリック・クラプトン、ベック・ボガート・アンド・アピス、そこからジェフ・ベック、時系列的にごちゃごちゃになるかもだけど懐かしのロリー・ギャラガー(惜しくも既に前世紀に, 50歳手前で亡くなってるからなぁ, 中1か中2のころ聴いたあの "Tattoo'd Lady" のカッコよさ!)、リッチーさんのディープ・パープル、毛色がやや変わって CSNY, さらにプログレではピンク・フロイド ... といろいろ聴くようになって、まぁとにかく「洋楽」なるものを聴くようになってからはや半世紀余り、もうだいぶ以前, 遥か昔から(と言っても半世紀以上昔ってわけじゃないけれど!)英米系の大衆音楽だけでなくロック, ブルーズの他にソウル, R&B, ファンク, ジャズ, レゲエ, こうやってミュージシャンなりジャンルなり挙げ出すとキリないな、日本のミュージシャンの音楽も当然のように聴くし、いわゆるクラシック音楽も聴くし、中南米の音楽も聴くし、他にも例えば東欧の音楽, アラブの音楽, インドの音楽, もちろんお隣り韓国の音楽なども .. とにかく早い話、「これ, いいな」と思えば, 感じれば, どんな音楽も聴くわけだけど、しかしまぁこの半世紀余り、一番聴いてきたのはやっぱ ロックとブルーズ かなと。

で、ブルーズ。「ブルース」と表記するのか「ブルーズ」と表記するのか、ここはやや悩ましいところがあって昔は「ブルース」と書いていたのだが近年はたいていの場合「ブルーズ」と末尾を濁らせて書くようになって、しかしごく最近になってその拘りってどうなのかなと若干疑問を持ったりもし、てなわけだけど、でも別にこれは今日の本題ではないので、この程度に触れるだけに留め、とりあえず引き続き「ブルーズ」と表記することにする(固有名詞に含まれているもの以外は)。

アメリカの黒人以外がやるブルーズ(認めない向きがいるとすれば「ブルーズっぽい」とか「ブルーズらしき」音楽ということになるんだろうけど)を「ブルーズ」と呼ばないなどという偏狭な立場に立たない筆者ではあるが、ここでは、ある意味, 便宜的に, アメリカの黒人が演奏する, 歌うブルーズを初めて聴いたのは、ジュニア・ウェルズとバディ・ガイの 1975年3月の日本公演のライヴ盤 LP 2枚組を買って聴いた, 中学3年の時だった、という話。

少なくともあの時期、ピュアな意味でのブルーズはやはり彼らアメリカの黒人による「ブルーズ」だけだという観念を持っていたような気がする。彼らがやるブルーズは特別だという感覚を持っていた(それはそれで正しいとも言えるんだろうけれど)。で、バディ・ガイのギターの音色も、ジュニア・ウェルズのブルーズ・ハープの音色も、二人のそれぞれのヴォーカルの声も、何というか、神々しい音、神々しい声にさえ感じられたほどだった。何だろう、とにかく何か「特別な」音楽を聴いているという感覚だったと思う。今もブルーズは大好きだし、近頃もちょくちょく(いろんな)ブルーズを聴いているが、後年の感覚と比べると、初めてブルーズを聴いた頃の感覚、リスナーの構えみたいなものはだいぶ違っていたように思う。

First Time I Met the Blues 〜 Buddy Guy

これが自分が初めて聴いたブルーズ、というのではない。つまり、1975年3月のジュニア・ウェルズとの来日公演の時のものではない。観ての通り ♫(と言ってもその日本公演の際にもやってる曲なんだけど!)

今日のこの note 投稿のタイトルからの連想で、まずはこれを聴きたくなった。

これ、映像もいいなぁ。

ジュニア・ウェルズ & バディ・ガイ LIVE in Japan 1975

どうして、何が切っ掛けで、中3の時にあのブルーズ 2枚組 LP を買ったのか、全く思い出せない。ただ、とにかく、聴いたらめっちゃくちゃカッコよくて、その前にクラプトンがやるブルーズとか他にも例えばウィッシュボーン・アッシュなど含めてイギリスのロック・ミュージシャンたちがやるブルーズの曲などけっこうな数, 聴いていたと思うんだけど、あのアルバムを聴いてあらためて、ああブルーズってこれなんだぁ、と感慨に耽ったりしたわけで。

あの 2枚組 LP, 今でも田舎の実家の居間のレコード・プレイヤーのところに置いてあると思うけど(今住んでる我が家では随分と昔にレコードから録音したカセットを持っていると思うけど, 何しろカセット, カセットレコーダーはあるんだけど既に壊れてて, もう聴けない)、収録されていた様々な曲の他に印象に残っていることがあって、それは、ライナーノーツに詩人の白石かずこの文章が掲載されていたこと。

うろ覚えではあるけれど、おおよその記憶は正確だと思う。白石かずこという人は今も健在、今年 90歳になる人、カナダ生まれでアメリカでの詩人としての活動もある。いま想えばそういう経験があってということなのか、その文章の中で彼女は、スーツに身を包んでピシッとキメこみ, ブルーズを歌い, 演奏するステージ上のバディ・ガイやジュニア・ウェルズに触れつつ、その「神々しい姿」(と書いてあったわけではないが、そんなふうに彼らを見ているかのような読後感があったのだ)を、ブルーズに酔いしれる日本人の聴衆や、あるいは確か日本でブルーズを演奏する日本人ミュージシャンなどの「ジーンズ」姿と対比させ(確かに「ジーンズ」もしくは「ジーパン」といった表記があったと思う)、後者は実は前者のことをよくは分かってないのだ、ブルーズのなんたるかを理解してないのだ、といった趣旨のことを書いていた。何しろうろ覚えなのでこの記憶が何処まで正しいのか、やや怪しいところもあるのだが、少なくとも当時, 中学3年生だった自分の頭の中には、彼女がそういう趣旨の文章を書いていたことが記憶として残っている。

14歳から15歳だったその時の自分はライナーノーツのその白石かずこの文章を読んで、少なくとも反発は感じなかった。「ふーん。そういうもんかなぁ」というくらいの感想だったのだと思う。いま残っている記憶通りの文章だったとして、いま現在も、当時の白石の文章に反発のようなものは感じない。ただ、当時の論評としてはそれはそれでよかったのかもしれないが、後年とか, まして, いま書くなら、書く内容はだいぶ違うものになるんじゃないかなと思う。

もちろんスーツだのジーンズだのということはある意味「象徴的」な事象として取り上げたのだと思うが、実際のところ、たとえばバディ・ガイ、その頃の彼はステージではスーツをキメてる場合が多かったのではと想像するのだが、後年はジーンズ履いてギター弾きまくったりもしてるよねぇ(笑)。

さて、音楽そのものからやや離れた話はそのくらいにして、バディ・ガイについて。バディ・ガイは生まれも育ちもルイジアナ州、1936年7月生まれだから、1975年3月来日の時は 39歳, この人は 1958年, 22歳の頃にイリノイ州シカゴに移住、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフらとセッションなどしつつシカゴ・ブルーズを代表するギタリストの一人となった人(ロックの世界との関連で言えば、エリック・クラプトンとも親交が深く、レコーディングやライヴでの共演もかなりある)。30年以上前、1989年から、シカゴでブルーズのライヴをやる Buddy Guy's Legends という名の自らのクラブを持っている。行ったことないけど、息子が数年前そのクラブを見物してきた、えへん!(イバることないか、笑)。とにかく、シカゴ・ブルーズという修飾を超えて、押しも押されもせぬ, ブルーズの世界を代表するギタリスト。ギターだけでなく、ヴォーカルも素晴らしい。

中3 の時にバディ・ガイのギターとヴォーカルを(レコードで)初めて聴いたわけだけど、大人になってから、実際に彼のライヴを何度も観聴きした。1986年から 20年以上にわたって日比谷野音で開催されていたジャパン・ブルース・カーニバルに繰り返し登場していて、そこで(残念ながら 1987年の第2回の時のジュニア・ウェルズとの共演は見逃しているのだが)1990年の第5回の時を皮切りに、1995年、1997年、2000年、2002年、2005年、その他、何年だったか忘れたが渋谷(だったと思うが)のライヴハウスでのライヴも観ていて、なんでそんなに何度もバディのライヴに足を運んだのかというと、とにかく、と、に、か、く、バディ・ガイのライヴは, 最高に楽しめるブルーズのライヴ だから!

2002年5月25日に日比谷野音で妻子と共に観聴きした時なんか、ステージの真下辺りでエキサイトして聴いていた当時10歳、小4だった我が息子を見つけたステージ上で演奏真っ最中のバディが演奏を突然止め、直前まで使っていたギターのピックをニヤッと笑いながら息子に手渡してくれるという(我が家的には!)「事件」まで発生した。とにかく、思い出が尽きないバディ・ガイ ♫

さて、歳取ってからも素晴らしいバディ, これは 73歳か 74歳の頃(今年の 7月30日には 85歳になるわけだけど、いま現在だってこんな感じで、ステージにも立つ, このヴィデオでは座ってるけど、晩年の BBキングと違って、バディ・ガイ、今も文字通りステージに「立って」、つまりステージで立って弾きまくりもする!)。

一方、ジュニア・ウェルズは 1934年12月にテネシー州メンフィスに生まれた人で、10代でシカゴに移住、1950年代からシカゴで活躍したブルーズ・シンガー、ハーモニカ奏者。かなりファンキーなブルーズをやる人で、バディ・ガイとはギターとハーモニカ、そしてヴォーカリスト同士のデュオを組んで度々レコーディングを共にしたり、ステージで共演したりした。

バディ・ガイは 84歳の今現在もバリバリ健在ながら、ジュニア・ウェルズは惜しくも 1998年1月に亡くなっている。

筆者は幸い一度、上述の日比谷野音でのブルース・カーニバルに登場したジュニア・ウェルズのライヴを観聴きすることができた(1992年)。何しろ 中3の時に人生で初めて聴いたブルーズがバディ・ガイとジュニア・ウェルズのブルーズ。バディの時も勿論そうだったが、ファンキーなブルーズをシャウトしハーモニカを奏でる彼のライヴを体験できたことは大きな喜びだったし、期待通りのライヴだった。

人生で初めて聴いたブルーズ、それは上述のブルース・カーニバルとはまた別物だと思うが、1970年代半ばに開催された「ブルース・フェスティバル」という催し、1975年3月のその第2回に出演したバディ・ガイとジュニア・ウェルズのライヴを収録した 2枚組のアルバム(因みに「第1回ブルース・フェスティバル」の際のロバート・ジュニア・ロックウッドのライヴもレコード化されていて、それが自分が買った 2枚目のブルーズのアルバムで且つ最も好きなブルーズ・アルバム)。

何が切っ掛けだったのかなぁ、そこが思い出せなんだけど、とにかくあの 2枚組 LP を買って聴いたのが、「ブルーズ」初体験だった。

以下のクリップ、イントロ部分などやや雑音混じりで、且つ 47:27 の箇所, 残念ながら「とんで」しまっているけれど、中身の素晴らしさは十分伝わると思う。

Side one
1. Let Me Love You Baby
2. How Blue Can You Get
3. High-Heel Sneakers
4. One Room Country Shack

Side two
1. First Time I Met The Blues
2. Stone Crazy
3. Fever/Work Song
4. Come On Home To Me Baby
5. Rock Me Baby

Side three
1. Little By Little
2. Stop Breakin' Down
3. Don't Go No Further
4. Look Over Yonder's Wall
5. Snatch It Back And Hold It

Side four
1. Help Me Darling
2. Hoochie Coohie Man
3. Someday Baby
4. Waterman Blues
5. Messin' With The Kid

音はこっちの方がいいかもだけど、CD ヴァージョンからのものらしく、レコードのものより 6曲少ない(上のクリップと比べテンポが遅めに聞こえるのだが..)。

1. Let Me Love You Baby
2. How Blue Can You Get
3. High-Heel Sneakers
4. First Time I Met The Blues
5. Stone Crazy
6. Fever (Work Song)
7. Come On Home To Me Baby
8. Little By Little
9. Don't Go No Further
10. Snatch It Back And Hold It
11. Help Me Darling
12. Hoochie Coochie Man (Someday Baby)
13. Waterman Blues

付録: 「洋楽」 なるものを 聴き始めた頃の話 ♫

そのおまけ ♫

おまけ! 〜 妻のピアノと息子のハーモニカ・タンバリン・コーラスは, イケてたと思うぞ ♫


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