岡崎武志『ふくらむ読書』をいつものことながら面白く読了。本の読み方のポイントをとらえていることは当然として、その表現のテクニックがもう円熟の境地に達している。
買うものが見当たらないときはともかくとして、《あるいは少し買いすぎたとき、そこに詩集を一冊でいいから混ぜることをよくする》はその道の達人の名言だ。どのくらい達人かというと、こんなことも書かれている。
私も一度、まだそこまで本に埋もれていないときに岡崎邸を訪れたことがある(というか泊まらせてもらいました)。書斎は地下室なのでどんなに本を詰め込んでも床が抜ける心配だけはない。その代わり上の階には本を置かないようにと奥方に厳命されていたようだ・・・この話は岡崎氏自身がどこかで書いているはず。
このように森林浴ならぬ古本浴(あるいは古本欲)で書物ライターの世界を生き抜いてきた岡崎氏の現在の心境はこういうものだそうだ。
読書エッセンスをどっさり注ぎ込んだアイスティーのような一冊。おすすめ。